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王太子の愛妾枠で結婚したのに、気がついたら私しか妃がいない!  作者: チョコころね


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16/27

16.持参金


 まだ11だという隣国の姫(コンスタンス)の肖像画は愛らしく、見る者に将来性をうかがわせるものだったが…レアンドルにとっては、11の時のマルグリッドに思いを馳せるだけの代物(しろもの)だった。


 その後、ヴェルデ伯爵家が『ひとり娘の婿を探し始めた』、という噂を聞いた時には、分かっていても、谷底へ突き落された気分になった。

 生涯結婚せず、王宮に奉公する貴族女性もいるが、マルグリッドは伯爵家の跡取りだ。

 適齢期が来れば、必ず結婚するだろう。


 この先、マルグリッドが結婚し、その相手と共に自分の前に現れるまでに、この想いを完璧に隠せるようにしなければ。

 そして笑って祝福するのだ……そこまで考えて、レアンドルは(ほの)暗い思いに囚われた。


 もし相手が亡くなれば…

 その時までにレアンドルが王位についていたら…マルグリッドを愛妾に出来るのではないかと。


 国法は跡継ぎ問題を解決するため、国王にだけ、複数の妃を娶る権利を認めていた。

 伯爵令嬢を王太子妃には出来ずとも、未亡人となった後、側妃として王宮に招くことは可能だろう。


 だが、そんな思い付きは己の中ですぐに打ち消された。

 なぜなら、レアンドルはマルグリッドの全てが欲しかった。

 一時的であっても、他の男のものになるなど、考えたくもなかったのだ。


(時間がたてば…)


 この想いが消えることはないにしても、上手く誤魔化せるようになるだろう……そんな消極的思考で、悶々と毎日を過ごしていたレアンドルの元に、隣国から急ぎの使者がやって来た。




 婚約者であるコンスタンス姫に、ザミアから求婚があったという話だった。


 すでに婚約している姫に、図々しく求婚することからも分かるが、ザミアはあまり質の良くない国だった。

 姫の身柄が心配だということで、婚儀を早めたいとの要請だった。


「仕方ないのではないか…?」


 使者を待たせ、返事を渋っている宰相に呼ばれて、レアンドルが尋ねた。

 だが相手は、自分の家庭教師だった頃からは、信じられない程の煮え切らない態度だった。


 確かに、『王太子の婚儀』は、数十年に一度の、国を挙げての重要行事である。

 これまで、綿密に組み立てていた、それらに関するスケジュールが、一からやり直しになるのは、容易に受け入れがたいだろう。


 レアンドルとしても、結婚が早まって嬉しい訳では決してないが、避けられないならどんな厄介事でも受け入れるしかないと思っていた。


「…コンスタンス姫は、13になったところです」

「あぁ、3年早まるということだな」

「その事に関して、隣国(あちら)からは、持参金の上積みが提案されています」

「仕方ないだろうな」


 おそらく13では、王太子(じぶん)の手助けなどは出来まい。

 教育費と思って受け取ればいいと、レアンドルは思った。

 だが、それが貴重な『魔石の採れる鉱山の採掘権』を含む、と聞いて、さすがに驚いた。


「何でそこまで…!?」

「それがですね…」


 ようやくレアンドルは、隣国の王が彼に、『白い結婚』を要求していることを知らされた。


「13でも、嫁いで子を産んだ例は幾つもあります。幼いと言われましたが、前年、お(しるし)もあったと伺っています」


 将来の『王』を生む予定の女性だ。

 子を産めるという確証、初潮の有無は、国家間における『結婚という契約』の最低条件の一つとして、きちんとチェックされている。

 それより何より、花婿側(レアンドル)はもう19なのだ。

 新婚の妻に、『お預け』をくらっていい歳ではない。 


「もう充分、子を産める御方を、『まだ幼い』として(ねや)から遠ざけるのは如何なものかと…」


 おそらく大多数が、この意見だろう。

 だが王が親として、嫁ぐのが3年も早まった娘に、猶予を与えたいという気持ちも分からないでもない。


「私は、それでもかまわない」

「殿下…」

「我が国は16が成人なのだ。であれば、子供に手を出すのは忍びない」


 何と寛大な…と、感心する向きもいようが、レアンドルとしては、一度も会った事のない姫君に執着できる訳もない。

 いっそずっと『白い結婚』でいれば、いつかマルグリッドを…なーんて、妄想まで湧いてくる始末だった。


 宰相は、大きくため息を吐いた。


「分かりました。先方の条件を飲みましょう」

「そうしてくれ。今はまだ、私の跡継ぎより、魔石の方がよっぽど重要だ」


 レアンドルの父である、現在のこの国の王は至極壮健で、あと10年は玉座から引くことはないだろう。


 それに、マルグリッドが昔、『魔石はロマンです!』とキラキラした目で語っていたのをレアンドルは思い出した。

 

(この国でも魔石が採れるようになるなら、小さい物なら彼女に渡せるかもしれない…)


 結婚祝いとして…そこまで考えて、レアンドルはまた内心で落ち込んだ。


 そんなレアンドルの心が読める訳ではないが、宰相は苦々しい目で彼を見て


「貴方様の跡継ぎも大事ですよ…」


 と、つぶやいた。





…レアンドルさんの鬱屈した日々の記録になりました。

…表面上は、理想の王子様仮面をしっかり付けてます!

(だから余計に中身が病む…)

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