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私を呼ぶ声が聞こえました

「ありがとう!ありがとう…」


ダルトンは満面の笑顔に涙を浮かべながら何度も何度も言いました。

それから私の首にペンダントをかけると、力強く私を抱きしめました。


「私を幸せにしてください」


「はい、もちろんです…もちろんですとも!」


これで良かったのだ、きっとこれが私に用意されたハッピーエンドなのだ、そう思った時…


『エレーヌ!』


どこからか私を呼ぶ声が聞こえました。その声は、(エドワード?)いえ、それはただの幻聴でした。

しかし、私の頭の中で、あの日のエドワードの表情がフラッシュバックしました。

「君の笑顔に惹かれました」そう言ったエドワードの笑顔に、私もまた恋をしたのでした。


なんで忘れていたのだろう?私はエドワードへの愛を疑う自分を創造しました。そうする事で、もしエドワードの心が離れてしまった時でも自分の心が傷つかないように、自分自身への言い訳を用意していたのでした。

本当の私はこんなにも…


『エドワードを愛している!』


私はエドワードの腕を振りほどくと、ペンダントを首から外しました。

ダルトンは訳が分からず動揺しています。

私は後ずさりしながら、近くの机の上にペンダントを置きました。


「…あなたを幸せにできるのは、私ではないのですね」


ダルトンは優しく笑いました。でもその顔は泣いているようにも見えました。


「ごめんなさい」


私はダルトンに背を向けると、集会所を出て駈け出しました。

フローリアが私に向かって何か叫んでいるのが見えましたが、私はそれを無視して走り続けました。


村を飛び出した私は走り続けます。なんで走っているのか、どこに向かっているのか、理由も目的も分からないまま…



私は丁字路まで来ました。右に行けばコーディの屋敷が建つ丘、左に行けば町に着きます。私は左に曲がりました。


町に向かって歩み出した時、背中に迫る気配を感じて私は振り返りました。暗闇の中に光が浮かんでいます。

それは馬車の灯でした。

もう私はコーディを恐れてはいなかったので、馬車を見ても逃げたりすることはありません。


「エレーヌ様!」


御者台のジェーンが私を呼びました。


「何かあったの?」


「屋敷にエドワード様が訪ねてこられて…」


「エドワードが?」


(そんな、まさか)私は耳を疑いました。


その時、屋敷から炎が上がるのが見えました。


「火事?ジェーン、村に行って人手を集めてきて!」


そう言ってから私は屋敷に向かって駈け出しました。


あの夜はあんなに遠く感じた道のりが、今の私にはまるで苦になりません。

私は比べられないほど逞しくなっていたのです。


屋敷は激しく燃え上っていて近づく事ができません。


「エドワード!中にいるの?」


私が力の限り叫んだ時、炎の中からコーディを抱えたエドワードが現れました。


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