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私は呆れすぎて絶句しました

国王のお城では舞踏会が行われていました。


私の名はエレーヌ、ハバロッティ伯爵家の長女です。

そして、この国の王位継承者、エドワード王子の婚約者でもあります。


城の大広間、美しい女性達に囲まれたエドワードを私は部屋の隅から見ていました。

国一番の美女との誉れ高いビオレッタ嬢に耳元で何かを囁かれたエドワードはデレデレとして頷いています。もしこれが夜の誘いだったとしても私には止める事が出来ません。


第一王子のエドワードには、立派なお世継ぎを残す義務があります。

私が正妻になったとしてもお世継ぎにふさわしい子供が生まれる保証はありません。王家の者として第二夫人、第三夫人を持つのは必然だったのです。


人付き合いが苦手で家にこもりがちの私。世間からは『笑わずの令嬢』と呼ばれている事も知っています。両親は嫁の貰い手がいないのではないかと悲嘆していました。


そんな私に結婚してほしいと言ってくれたエドワード、断る理由などあろう筈がありません。

私は幸せ、伯爵家一族も幸せ、とにかくみんな幸せです、これ以上何を望む事があるでしょうか。


それでも、他の女性と楽し気に語り合うエドワードを見て何も感じないかと言えば、全然そんな事はないのです。

私は舞踏会を抜け出して、私の為に用意された部屋に下がりました。



窓から夜空に浮かぶ三日月を眺めている時、ふと人の気配を感じて振り返りました。

いつの間に部屋に入ったのか、そこには一人の少年が立っていました。


「エレーヌ、迎えに来たよ」


そう言った少年を見た私の気持ちを素直に書くなら(何だコイツ?)でした。


「あの…どちら様でしたでしょう?」


「婚約破棄したいんでしょう?もう我慢しなくていいよ」


(何を言っておるのだコイツは?)私は呆れすぎて絶句しました。


「嬉しすぎて声も出ないんだね。おいで僕が連れ出してあげる」


少年は自分に酔っている様でした。


「どなたか存じませんが…私はいま何も不満はないんです…婚約破棄なんかしません…」


言い争いは苦手です。私は絞り出すように言いました。


「可哀そうに…アイツに呪縛を掛けられているんだね」


会話にならない…私は恐怖を感じ始めました。


「で、出て行かないと、人を呼びますよ…」


「大丈夫、僕に任せて。呪縛を解いてあげる」


少年が視線で合図すると、私の背後から手が伸びてきました。何者かが気配を消して近づいていたようです。(コイツらはスパイ組織か何かか?)そう思ったのも束の間、手に握られた布を口に当てられると、染み込んだ薬品の臭いで私は意識を失いました…


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