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85.いもほり

 ふぁー、昨日はバタバタだったなぁ。

 畑を封鎖したり、やられたコブンの手当てをしたり。


 でも、マポテージョ狂暴化事件はまだ終わってないのです。

 昨日は被害を広げないための対応をしただけで、畑はあのままなのです。

 作物は畑から出ないからね。

 というわけでボスに相談です。


 最近は瞑想してばっかりのボス。

 こういうお仕事の話しか聞いてくれないの。

 ホントはもっといっぱい話したいんだけどなぁ……。

 しょうがないね、しゅぎょーでパワーアップ中だからね。

 終わったらその分も構ってもらわないと。


 ボスが見たところ、マポテージョはジャガーゴーレムに変異していることがわかりました。

 ランクはD+だけど、集合体だからC-クラスの戦闘力があるはずってのがボスの予想です。


 ただ倒すだけなら簡単だけど、ここでボスからのミッション。

 

 「今後、育成したマポテージョがこの変異を起こす可能性は高い。収穫の度におまえに頼らなければならない状況は避けたい。ラビブリンたちだけで犠牲なく出来る収穫法を探ってみてくれ」


 だってさ。

 無理ならしょうがないって感じの頼み方だったけど、これ以上私の仕事が増えるのは避けたいじゃん。

 全力で頑張っちゃうよー。


 というわけで、ジャガーゴーレム討伐のメンバーを発表します。

 頼れるホブラビブリンのコップス。


 「ウゥ」


 うん、気合入ってるね。


 もう一匹のホブラビブリンのタンプラー。


 「……ウサッサ」


 不機嫌そうにみえるけど、やる時はやる子です。


 おしゃべりなアウラウネ、ジョロー。


 「ちょっとなんで私も入ってんのよ!」


 今日も美味しそうです。じゅるり。


 ここに私を含めた4匹で今回は事に当たりたいと思います。

 倒すだけなら私がワンパンだけど、今日はラビブリンでも倒せちゃう攻略法を見つけるのがお仕事。

 さらに言うと相手は作物で、倒した後はみんなのごはんです。

 余計な傷は付けず、弱点を見極めて、コブンでもマネできる技で倒す。

 いっぱい縛りがあるから戦力過剰なくらいがちょうどいいね。


 さらに戦闘の得意なのコブンたちも見学者として呼んどります。

 ケガしたファーマー種の子たちよりすばしっこいからまーダイジョブでしょ。

 コブン共、流れ弾に注意して私たちの技を盗むんだぞ。


 さ、芋掘りの時間だー!

 開戦じゃー!

 名付けてジャガーゴーレム収穫戦。

 戦闘の指揮と実況はリマロンでお送りします。


 まずは小手調べから。


 「エンチャントガイア! 守備力は上げたけど油断せず進め。コップス、タンプラー」


 私から防御力増強の補助魔法を受けて、二匹のホブが動き出しました。

 コップスは大型の長いシャベルを槍のように構え、タンプラーはラビブリンサイズのシャベルを両手にダガーのように構えて進んでおります。慎重な足取りです。


 おっと、畑にも動きがありました。

 何の変哲もないマポテージョのように見えていた作物が、一斉に緑の葉が振るわせ始めました。

 そう。これはマポテージョではありません。

 変異して狂暴化したジャガーゴーレムなのです。


 あ、敵の攻撃です。水鉄砲です。

 以前は山なりに水球を飛ばすだけでしたが、モンスターへと変異した今、ラビブリンの皮膚を突き破るほどの威力に強化されています。

 昨日はこの攻撃で多くのラビブリンファーマーたちが負傷しました。

 オーバーオールを着てなければ、死んでいたかもしれません。

 そんな凶悪な水の弾丸がジャガーゴーレムの葉先から次々と放たれています。

 名付けてバレイショットと言ったところでしょうか。


 ホブラビブリンたちはどうか?

 コップス、耐えております。

 持ち前のタフネスと私の補助魔法が合わさり、バレイショットをものともせず進んでおります。

 一方タンプラー、シャベルで弾いております。

 器用にシャベルを動かし全ての攻撃を捌いております。

 両者共に素晴らしい動きだ。

 故に……。


 「コブン共、後退!」


 そう、この戦いはコブンたちが真似できなければ意味がありません。

 まずはこのバレイショットの攻略。

 いきなり難関が待ち構えておりました。

 さて、我々はランクD・ラビブリンが再現できる戦法のみでランクD+・ジャガーゴーレムを攻略出来るのでしょうか。

 戦闘はまだ始まったばかり。

 さぁ、次の手はどうするのか、ラビブリンたち。


 ……おおっと。

 …………ああ。

 ………………いけるか。

 ……………………ああ。

 …………………………いったか。

 ………………これは条件を満たしません。

 ………………………………………………おしい。


 さぁ、次のチャレンジはうまくいくのでしょうか。

 様々な方法を模索しておりますがいまだに納得のいく攻略法は思いついていません。

 いままで一番いい方法はジョローの幻惑魔法を使ったやり方ですが、これはラビブリンたちには真似できない方法、今回のミッションの条件を満たしておりません。


 このジャガーゴーレム収穫戦、長期戦の様相を呈しております。

 ホブラビブリンの二匹には疲れが見え始めています。

 一方でジャガーゴーレムはポーカーフェイス。

 多少、葉が萎びたようにも見えますが……お、コップスが再突入です。

 

 おや、バレイショットが来ないぞ。

 いや違います。これは威力が足りずに届いていません!

 弱弱しい水鉄砲が虚しく地面を濡らしています。

 

 「全員、標的の葉に注目! あのシワシワ具合だ! よく見ろ。あれで残弾切れだ! しっかり覚えろ」


 やはりこの長期戦にジャガーゴーレム側も堪えていた。

 コップスがぐんぐんと距離を詰めております。

 これで決着がついてしまうのか!


 ああ!

 畑が、大地が揺れております。

 なんとジャガーゴーレムが動き出しました。

 柔土をかき分け、地上へと這い出し始めました。

 青々とした葉っぱ背中に背負い、岩の代わりに芋で構成された四つ足の獣型ゴーレム。

 これがジャガーゴーレムの隠された正体でした。


 ジャガーゴーレムはまるで肉食獣のような動きで近づいてくるコップスに対して迎撃態勢を整えています。


 「コップス、先制は譲れ。攻撃を受け止めろ」


 おっと、各所で動きが。

 なんとゴーレムは一体ではありませんでした。

 畝が途切れ、隣と合わさり、小型のゴーレムを形成していきます。

 ここにきて初めてゴーレム側が攻めてきました。

 攻守反転です。

 

 「ジョロー、幻惑の花粉! タンプラー、相手の手足を狙え! コブン共は身を守れ!」


 乱戦です。

 ジャガーゴーレムの決死の抵抗により戦場は畑周辺から部屋全体に広がりました。

 

 よし!

 花粉が決まった。

 先行していたゴーレムはあらぬ方向に突進していく。

 しかし、後続がラビブリンに迫ります。

 タンプラー!

 彼がやってくれました。

 芸術的なスコップ捌きでゴーレムの四肢を飛ばしていく。

 ああ、しかし最後の一体が間に合わない。


 ジャガーゴーレムの前足がスコップを盾にしたラビブリンの一匹に襲い掛かったー。

 直線上に舞う土埃。

 あぁ、ラビブリンは無事なのか……。

 土埃が晴れた中から現れたのは…………えぇ、ジャガーゴーレムの前足?


 「ウサ! ウサウサ」

 「何よこれ。魔力補強されてないじゃない。これじゃ、ただの芋こん棒だわ」


 襲われたラビブリンは無事。

 ジョローからの辛辣なコメント。

 急な反撃と予想外のスピードに一瞬肝を冷やしましたが、所詮は芋ボディー。

 その柔らかな前足はスコップの柄に激しくぶつかってしまったことで折れてしまったようです。

 各所でも続々とジャガーゴーレムが返り討ちに合っています。

 

 「コブン共、倒れた芋を回収しろ。いや、まず茎を切断だ! 水鉄砲を撃てなくさせろ」


 何はともあれ、このジャガーゴーレム収穫戦、我々の完勝という形で決着を迎えました。

 戦闘の指揮と実況はリマロンでお送りしました。

 

 てなわけで、この日は猫型の巨大芋を回収して終わりました。

 ミッションクリアのために少しやることはあるけどそれはまた今度ってことで、今はケガ人なく収穫できたことをお祝いだー!

 

 タンプラー、マンドラゴラ持ってこーい!

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