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8.ロックゴーレム

 ロックゴーレムとモストータス。

 いままでのモンスターとは違い非常に頑強なモンスター。

 今からこれらを相手に戦わなければならない。

 

 こちらの残存戦力はこん棒を持ったゴブリン一匹。

 確実にこれだけでは戦いにならない。

 だが、俺には迷宮スキルがある。

 召喚の度に自分の大事な何かが削られているよう感じるし、回復手段もあの人影を打ち取った時のみ。だが、まだ使える。

 勝ち目を得るために召喚先はしっかりと選ばなくては。

 幸いにして敵は鈍足であちらからは攻めてくる様子はない。

 焦らなくても時間はある。じっくり作戦を練ろう。


 最初の部屋から見て南の部屋、忌土が敷かれた部屋に戻ってくる。

 ああ、あった。ロングハンマー。 

 ゴブリンに持たせてみる。

 やはりと言うべきか重すぎて槌の頭が上がらない。

 ただ、考えとしては悪くない。

 俺はいままで戦闘に夢中でモンスター以外のものにあまり注目をしてなかった。

 攻略済みの部屋を再探索をしてみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 先に結果を言おう。

 ゴーレムたちの攻略に有用なものは見つからなかった。

 発見したのは2つ。いずれも野草だった。


 【チビキビ】

 【ランクE】


 雑穀の類のようだ。

 背が低すぎてスキル名を見るまでキビだとは思わなかった。

 見る限りに食用として重宝される種には見えない。

 せいぜい鳥のエサだ。


 【ポテージョ】

 【ランクE】


 最近、帝国から輸入される芋の生える植物だ。

 葉は少しマンドラゴラに似ている。

 芋は食用だが、皮や芽に毒があるらしい。

 輸入当初に毒に当たって死人が出たため、王国では食用というよりは観賞用植物として浸透している。


 ああ。現実は非情である。

 都合のいいアイテムなんぞ、そうそう落ちていない。


 そうなるといよいよ戦力の追加か。召喚先を考えねば。

 今回は頼りのマンドラゴラで一発解決とはいかない。

 モストータスは池へ逃げるし、ゴーレムには耳がない。

 いつもの叫びで一網打尽とはいかないだろう。

 俺はいままでの戦闘を1つ1つ振り返ってみる。

 何かのヒントが落ちているかもしれない。


 最初がコッコ。

 次にホーンラビット。

 この2つはマンドラゴラの叫びで勝っている。

 その次はスケルトン。

 迎撃時にはホーンラビットで倒し、最後は相手の自爆を誘った。

 4番目のゴブリンの勝因はマンドラゴラ。

 そして最後は白いスライムはゴブリンで力任せに打ち倒した。


 各戦闘を振り返ってみると、1戦だけおかしなことに気付く。

 あれ。そういえば、あの時どうして…。

 ああ、そうか。よく考えてみればそうだ。

 事の本質が見えてなかった。

 この戦い方なら今の手札で勝ちの目はある。

 ただし、この戦法を取るには、検証なしで本番に臨む必要がある。

 そこは不安だが、真正面からロックゴーレムとぶつかるよりましだ。

 俺は意を決してモンスターを召喚する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺は再びロックゴーレムと対峙していた。

 傍らにはゴブリン1匹。

 部屋内は黒く透明な塊で満たされて、ゴブリンのまわりだけがそれを弾いている。

 前回の退却時と同じメンバー構成だ。

 俺はゴブリンに指示を出す。

 ロックゴーレムと一定距離を保て。

 さぁ、持久戦を始めよう。


 ロックゴーレムとゴブリンの戦局に動きはない。

 それなりの時間が経ったが、相手も馬鹿じゃない。

 こちらに狙いが誘われていると理解しているようだ。

 指示を出していると思われる白い人影もロックゴーレムにぴったりと付いている。


 この状況は予想出来ていた。

 俺はゴブリンに合図を送る。ただし、戦闘をしているゴブリンではない。

 向かいの部屋に待機させていたゴブリンにだ。

 俺が追加で召喚したモンスター1匹だ。

 ゴーレムの部屋はスライムの部屋とモストータスの部屋の間にある。

 モストータスを撃破した今、挟撃が可能なのだ。

 

 指示を受けたゴブリンは部屋の入口から室内へコッコを投げ込む。

 3羽のコッコを部屋を歩き回る。

 黒い塊を割いてその白い羽毛がまぶしく見える。

 ロックゴーレムはコッコには目もくれず、室内のゴブリンと俺の方を向いている。

 ゴブリン、攻撃。

 俺は指示を出す。

 迎撃態勢に移るゴーレム。

 すかさず指示を出す。

 ゴブリン、攻撃やめ。コッコ、敵に突撃。


 コッコは羽ばたきながらゴーレムへ向かう。

 もちろんそんな攻撃ゴーレムに効きはしない。

 しかし、敵は大きくよろめいた。

 それはゴーレムの傍にいた白い人影。

 突撃したコッコが闇の塊を弾いたために、コッコを掠めた人影の一部が黒い塊の外に出てしまったのだ。

 はみ出た部分が煙を煙を上げて溶けだしている。


 思いついた作戦。

 それは先に人影を倒してしまうことだった。

 スライム戦では影の消滅後もモンスターが残っていた。

 つまり、この戦いで必ずしもモンスターを倒す必要はないのだ。


 人影の動きから動揺が感じられた。

 次の瞬間、地面が揺れる。

 一気に2体のロックゴーレムが召喚された。

 計3体の岩の巨人。

 追加の2体は元の個体より腕が大きい。

 防衛用に何らかの手段で形を変えたようだ。

 色も鈍色が混じっている。鉱石が含まれているようだ。

 俺たちの危険域が一気に広がる。

 さらにゴーレムは人影を囲んでいる。

 もうコッコでの突撃も届かないだろう。


 ゴーレムの一体が腕を振るう。

 腕が外れ、そのまま放り出される。

 コッコを入れたゴブリンとコッコ1羽が下敷きになってしまった。


 戦況は最悪のように見える。

 先にロックゴーレムに挑んでいたなら、ここで焦って突っ込み負けてしまったかもしれない。

 モストータス戦で先に検証できたことが幸運だった。

 こうなった時点で俺の勝ちだ。

 

 ゴブリンもコッコも壁を背に部屋中央のゴーレムたちから離れる。

 攻撃対象がばらけたためか、先ほどの腕を飛ばす攻撃は行ってこない。

 ダメージが怖いのか、人影は守りを固めてゴーレムを動かさない。

 再びにらみ合いが始まる。

 溶けた腕を押さえながらこちらを注視する人影は部屋の変化に鈍感になっていた。

 自身を守っていた黒い塊が自分とゴーレムが陣取る部屋中央にしかない事に気付いたときには遅かった。

 慌ててゴーレムに指示を出したようだが、黒い塊はもはやゴーレムが纏うのみ。

 ゴーレムが動き出したことにより人影は塊の外へはみ出し、全身が溶け出し煙となって消えた。

 ゴーレムの纏う塊も同時に消え失せた。


 【迷宮スキルを獲得しました。】

 【鉄鉱岩】

 【ランクD】

 【鉄鉱石を含む岩。配置した部屋の土のマナを高める。採掘すると鉄鉱石が取れる。】


 ヒールスライムとの戦いで俺は2つのことに気付いた。

 1つは敵モンスターが残っていても黒い塊から出してしまえば、人影は倒せること。

 もう1つは主を失ってもモンスターが消えることはないことだ。

 司令塔はいなくなったが、それでも関係が友好的になるわけもない。

 スライムは問題なく処理できたし、モストータスは池へ逃げ込んだ。

 では、ロックゴーレムではどうか。


 眼前に迫るゴーレムの片腕が俺とゴブリンに向けて振り上げられる。

 岩の拳が勢いよく床に叩きつけられて、攻撃対象ごと粉微塵に砕け散った。

 触れないとは検証で知っていても俺は思わず痛みに備え構えてしまっていた。

 生身であれば耐えられるはずもない攻撃だが透明な俺にダメージはない。


 今回、人影との戦いには勝利した。

 しかし、ダンジョンで最も大事なことは生き残ることである。

 ゴーレムたちの交戦の意志はまだ生きている。

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