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19.グレーウルフの意志

 リマロンの先導で南口に入る。

 そこでもモンスターたちの戦闘は行われていた。

 

 【グレーウルフ】 【グレーラット】

 【ランクD】    【ランクE】


 【サイズミンク】

 【ランクD+】


 1匹のイタチが狼たちを蹂躙していた。

 体格は狼が上。数も狼が上。それでもイタチ相手に手も足も出せてない。

 イタチの尻尾は鎌のように鋭い。

 狼たちの間を縫って動き回る度に血しぶきが舞う。

 目で追うのも大変な程素早い。イタチは風を纏っていた。

 風魔法の一種だろう。間違いなく今日見たモンスターで一番強い。

 

 今のリマロンは本来の姿で熊並みの巨体だ。

 彼女の動きは決して鈍重ではないが、こういう小回りの利く素早いモンスターとは相性が悪いはずだ。

 イタチが宙返りをするとこちらへ風の刃が飛んできた。

 リマロンがハンマーでガードする。

 遠距離の攻撃も可能とは。相性は最悪のようだ。

 時間を与えていけないと感じた。咄嗟の判断だった。

 俺は【マンドラゴラ】と【コッコ】を使い、マンドラゴラを無理やり叫ばせる。 

 少し寒気がする。ちょっとソウルを使いすぎたかもしれない。


 サイズミンクはなんと風の障壁を作り、さらに南に続く出口に退却していった。

 かなり賢いモンスターのようだ。とは言えノーダメージではないはずだ。

 イタチのいた場所には血痕が残っていた。

 一方で、このダンジョンの主の召喚獣は全滅しているようだ。

 俺は力を振り絞り、容赦なく支配領域を広げる。

 モンスターのいないダンジョンに抵抗する手段はない。

 部屋が広いため、多少の時間はかかったがまた1つ意志を攻略することに成功した。

 これで攻略したダンジョンは3つ。総数の4分の1を落したことになる。


 【迷宮スキルを獲得しました。】

 【チビキビ】

 【ランクE】

 【雑穀の一種。一般的なキビの仲間の半分程の大きさ。劣悪な環境でも育つが栄養価は低め。】

 

 正直にいって外れスキルだ。

 チビキビは既にダンジョンに自生していて、スキルを使って増やすほどではない。

 毎回有益なスキルが手に入るわけないとはわかっていても、この結果には心底がっかりだ。

 改めて部屋を見渡すと床は草がぎっしりと生えている。


 【チビキビ】

 【ランクE】


 【ハイドラット】

 【ランクE】


 ん、ネズミが生きているのか。

 そんな風には見えない。そもそもネズミのモンスターはグレーラットだったはず。

 いや、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 この先の相手は強敵だ。

 大二波が始まってそれなりに時間が経過している。

 恐らくは既に他の意志を攻略した複数の部屋を持つダンジョン。

 無策に突っ込むのは危険すぎる。退却しよう。

 俺はリマロンを連れて元の部屋に戻った。


 オークの部屋に戻るとまず、集めてあったモンスターの死体をソウルに分解した。

 ああ、生き返る。ソウルが体に染み渡る。

 全部吸ってはもったいない。死体の一部は肥料用に取っておこう。

 オークの部屋は大部屋故に守りが弱い。

 ポイズンスライムの部屋のような防衛陣はソウルと時間が掛かりすぎる。

 どうせ作戦が整い次第、こっちから攻めるのだ。

 防御は捨てて、攻略チームを再編を急ごう。

 オリジンルームのラビブリンたちをこっちに呼ぼう。


 現在、リマロンは獣人の姿に戻り、負傷したラビブリンに治癒魔法を施してくれている。

 撤退してすぐは納得できないという態度を取っていたリマロンだったが、やはり本人もサイズミンクと正面からやり合うのには不安があったようだ。敵モンスターとの相性を指摘すると押し黙ってしまった。

 このまま戦意を落されても困るのでマンドラゴラを2本渡す。

 すぐに笑顔に戻る。うちのボスモンスターは非常にわかりやすくて助かる。

 

 相手の戦力を振り返る。

 ランクD+の風魔法を操るイタチだった。

 風の刃も厄介だが、対策すべきは障壁の方だ。

 うちの主力であるマンドラゴラの声の威力を軽減してしまうのはかなりまずい。

 他の遠距離攻撃は石弾の魔法くらいだが、おそらく障壁を破れない。

 こちらの有効打が接近戦しかないのだ。

 それでいて、素早さはラビブリン以上である。

 無策で交戦したならば、こちらは大きな被害を被ってしまうだろう。

 

 今回得た得たスキルを確認する。

 【針砂利】【アイアンシャベル】【チビキビ】の3つだ。

 この中に何か対抗策になりゆるものはないだろうか。

 風使い相手に針砂利を使用すると、逆に利用されかねない。

 チビキビは論外。唯一役に立ちそうなのはアイアンシャベルか。

 これはラビブリンでも十分に扱えるサイズだ。

 本来の穴掘りに加えて、斬る、突く、叩くの一通りの物理攻撃ができるのは便利なのかもしれない。基本武装としては癖の少なく扱いやすい、優秀な部類だろう。

 ただ、サイズミンクを相手にするにはもう少しリーチがほしいところだ。

 これを持たせてラビブリンに突っ込ませても勝率は大きく上がらない。

 

 スキル外でピッケルも落ちていたが、これも大きな勝率アップに繋がらない。

 ただリマロンの獣人形態でも扱える武器としてはよさそうだ。

 ただその程度、あのイタチへの対策とまではいかない。


 南口に動く影がある。

 まさかもう攻めてきたのか。


 【グレーラット】

 【ランクE】


 ネズミが数匹こちら目掛けて駆けてきた。

 一体、どこに潜んでいたのだろうか。

 普通に考えればウルフ部屋の生き残りだろうが、どうやってマンドラゴラの攻撃をかわしたのだろうか。

 黒い塊を纏っていないので、意志の支配から抜けていることは間違いない。

 それ故に俺自身の脅威にはなり得ない。

 しかし、オリジンルームには奴らに齧られたくない作物がある。

 通すわけにはいかない。ソウルの足しにしてやろう。

 動けるラビブリンに戦闘指示を出す。

 こんなのに魔力を使うのはもったいない。

 シャベルを使って撃退してもらおう。


 ゆるい指示で自由に戦わせていると、あるラビブリンの動きが目に留まる。

 なるほど、そういう遠距離攻撃もありか。

 これは攻略の糸口になるか。

 あの時のサイズミンクは確かにダメージはあった。

 あれがそういうことならば……。

 俺は試してみたい作戦を思いつき、リマロンに聞かせてみる。


 「ひひっ、それ面白そうじゃん。直接殴れないのはつまんないけど、勝つ方が大事だもんね」


 勝つと言うより生き残ることが大事なのだが、ノリノリの彼女にそれを突っ込むのも野暮だろう。

 俺は【忌土】【マンドラゴラ】【池】を使った。

 仕込みはラビブリンたちに任せることにしよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 準備を終えた俺たちは今ウルフの部屋の南口に陣取っている。

 あれから結局ラットしか攻めてこなかった。

 再編した攻略チームはリマロンとラビブリン4匹に加えて俺だ。

 さらに支援チームのうち5匹が後方に控えて作戦をサポートしてくれる。

 俺は攻略チームとともに強敵の待つ部屋へ突撃した。


 入ってすぐ俺は目を疑った。

 空がある。ダンジョンの中なのに天井があるべき場所に青空が広がっている。


 【青空】

 【ランクB】


 これもスキルなのか?

 空に悠々と飛行する影がある。いつもの白い人影だった。

 しかし、その後ろから他の影が飛び出す。

 それは巨大な鷲だった。


 【スカイイーグル(BOSS)】

 【ランクC+】


  警戒を促す鳴き声を放つと鳥が次々集まってくる。

 4羽の鷹は影を守るように周りを旋回している。


 【スカイホーク】

 【ランクD+】


 地上にはあのイタチもいる。草陰に隠れているものもいて正確な数は分からない。

 少なくとも3匹はいる。


 【サイズミンク】

 【ランクD+】


 冷や汗が流れる。

 サイズミンクは主力でなくて斥候だったか。

 対策を練ったモンスターより強力なモンスターが群れを成している。

 それにボスモンスターがいる。ダンジョンの遺志をベースに召喚される強力なモンスターだ。

 完全に敵戦力の見積もりを誤った。

 でもここまで来てしまったのだ。やるしかない。

 俺は作戦の続行を仲間たちに宣言した。


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