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16.第二波

 開戦までの時間が刻一刻と近づいてくる。

 と言っても時計どころ日の光も見えないここでは体感で時間を計るしかない。

 モンスターたちには早めに交戦準備させて扉の前に控えさせた。


 開戦前の高揚でテンションの上がっていたリマロンだが、待機時間が長くなるにつれだんだんと気が緩んでくる。東の扉前にも届くほど大声で俺に話しかけ出した。最初は無視していたが、根負けして南の扉前のリマロンへ向かう。

 おかげで余計にマンドラゴラを振舞ったり、前回の戦いの話をする羽目になってしまった。

 長話より作戦の再確認をしたかったのだが、リマロンのテンションが戻ったのでよしとしよう。


 「さあコブンども、戦の時間だぁ! えいえいおー」


 ラビブリンたちもいつもより興奮気味にウサウサと騒ぎ立てている。

 士気が上がっている。

 俺には命令は出来ても士気高揚は出来ない。

 こういう時はリマロンは頼りになる。

 こっちとしてはこのまま開戦でもいいのだが、まだ扉は消えない。

 まだ時間がある。最後に攻略チームの最終確認をしよう。


 東扉攻略チームは俺が指揮し、構成はラビブリン5匹。

 初動は就寝前に考えたものと大きな変更はなし。

 その後の動きとしては、1つ目の部屋の攻略後に、防衛策を整え俺が離脱。

 そのまま南側の攻略に合流する手筈になっている。

 まずは俺のいる部屋であるオリジンルームが敵ダンジョンと隣接する状況を切り抜けたいためだ。

 また前回の戦いで回収した2本のこん棒はすべてこっちのチームに持たせてある。

 身体も小さく力も弱いラビブリンが前衛することに不安が残るが、頑張ってもらうしかない。

 亜人系モンスターの真価は武器や道具が使えることだが、生憎俺にはそんな迷宮スキルは持っていない。

 今回の戦いで獲得できればいいのだが。


 南側攻略チームはリマロンが指揮し、構成はリマロンに加えてラビブリン4匹。

 こちらの初動は敵ダンジョンで戦線を維持すること。

 俺が来るまでの時間稼ぎが仕事だ。

 俺と合流後は本格的にダンジョン攻略を開始する予定だ。

 獲得した部屋の扉の数や敵の扱うモンスターが未定なので、その後の動きは臨機応変に対応することになる。

 リマロンは怠け癖があり気分屋だが、ちゃんと動けるだろうか。

 今はやる気満々だが少し心配だ。


 後方支援チームは最初に召喚されたラビブリンが指揮し、構成はラビブリンが12匹。

 メンバーは思い切って増やした。

 おかげで初動で使えるマンドラゴラが心もとないが、戦闘が始まるとラビブリンの追加召喚は困難になることを考えるとこれでいいはず。

 マンドラゴラはソウルさえ回収できれば俺が追加できる。

 しかし、ラビブリンはリマロンの手が空いているときにしか召喚できない。

 最悪の場合、この戦闘中の追加召喚は出来ないだろう。

 しかし、ソウルをかなり使ってしまった。

 敵の意思をオリジンルームに絶対に入れないようにしないといけないな。

 

 扉が輝き始める。

 だんだんと透明になっていく。

 ついに来た。急いで東の扉に向かわないと。


 「ボス、ピンチになったら私を呼ぶんだよ。お礼にマンドラゴラお腹一杯もらうけど。ひひっ」

 「ぬかせ。そっちこそ作戦通りやれよ」


 ガラス程まで透明になった扉は砕け散った。

 こうして、2回目の生き残りをかけた戦いは始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 東の扉を潜ると、懐かしい石造りの小部屋が広がっていた。

 敵の影は見えない。

 床は砂利に置き換えられていて、その中をまっすぐ石材の道が通っている。

 出口も正面。

 採りたてのマンドラゴラを掴んだラビブリンの1匹が道なりに駆けていく。

 小部屋中央付近でカチリと言う音とともにどこからともなく矢が飛んでくる。


 【毒矢スイッチ】

 【ランクD】


 お構いなしに走り抜けたラビブリンには当たらなかった。

 なるほど、罠は駆け抜ければ問題ない。

 しかしそれは単騎の話だ。

 足並みを揃ないといけない集団戦では大きな影響がある。

 後続の4匹に砂利を進むように指示を出すが進行が遅い。


 【針砂利】

 【ランクE】


 砂利をよく観察すると、礫の1つ1つが鋭くとがっている。

 ラビブリンたちは当然素足。

 足の裏は毛で守られているので歩くには問題ないが、走ったり踏ん張ったりすると刺さってしまうだろう。しかしこのままだと先行したラビブリンと距離が開きすぎてしまう。

 マンドラゴラの寿命もあるので、先行の兎小鬼は全力疾走だ。

 既に次の小部屋へ進んでいる。


 敵ダンジョンはなかなかいやらしい戦略を取ってくる。

 先ほどの罠の手前まで進んだところで先行したラビブリンが戻ってきた。

 帰還が早すぎる。


 【スケルトン】

 【ランクE】


 【ポイズンダガー】

 【ランクD】


 後ろには短剣を持ったスケルトンを引き連れていいた。

 10匹は超えている。


 いきなりマンドラゴラが効かない敵に当たったか。

 いや、前進を続けないということはマンドラゴラが効かない敵しかいないのか。

 この砂利の上では近接戦闘は不能。

 こんな場所でこん棒を振れば、足の裏がズタズタになってしまう。

 スケルトンはお構いなしに砂利に入り横へ広がる。

 たとえ石の道の上で戦ったとしても数で負けている。

 この場所では前衛が機能しない。


 スケルトンの後に白い人影が入ってくる。

 この部屋のダンジョンの意志だ。

 人影が手を上げると砂利の中から紫色のスライムが次々と湧いてくる。


 【ポイズンスライム】

 【ランクD-】


 スライムとスケルトンによる包囲網があっと言う間に完成してしまった。


 正直に言おう。

 俺は慢心していた。

 低ランクモンスターに負けないだろうと高を括り、俺が勝てることを前提で攻略計画を立てていた。

 その前提の上で、効率よくソウルを回収だの、たくさん迷宮スキルを集めるだのに気を取られていたのだ。

 助言者から情報を得たことやリマロンのような強いモンスターがいることでどこか強者側の気分に浸っていた。

 前回の戦いだって運よく生き残れたに過ぎない。

 思い出せ。迷宮を潜る冒険者の俺はいつも弱者側だった。

 

 気を引き締めろ。

 このピンチを醜くてもいいから生き残れ。

 勝つのではなく生き残るんだ。

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