表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/95

15.攻略計画

 環境作りは順調に進んでいる。

 ダンジョンの3分の2は整備済みで、そのほとんどは運用も始まっている。

 これもラビブリンたちの働きのおかげだ。

 まだ空き地なのは西、南東、南西の3つのエリアだ。

 さて、この場所はどうしようか。


 「ウサッ、ウサッ、ウサッー」


 そんなことを考えていると南のエリアからラビブリンが慌ててやってきた。

 戦闘用のマンドラゴラ畑の方からだ。その様子から緊急事態だとわかる。

 ラビブリンは住処に戻ったはいいもののリマロンが見つからず、あたふたしている。

 すかさず北へ向かうように指示を出す。

 ラビブリンはコッコの放牧地へ去っていった。

 本当に認識されていないというのは厄介だ。

 しかし改めて考えると認識できないのに命令は聞くとはどういうことなのだろうか。

 不思議な事この上ない。


 「ボスー、ついにきたって」


 報告を受けたであろうリマロンが飛ぶように戻ってくる。

 

 「扉ができたって。第二(ウェイブ)くる?」

 

 その扉はすぐには開かない事を俺は知っていた。

 しかし、次の戦いが始まる前触れであることも知っていた。

 いよいよ次の戦いが始まる時がきたのだ。


 俺は助言者から得た情報を思い出す。

 開戦は扉が現れた約1日後。

 扉と言っても取っ手はなく、押しても引いても開きはしない。

 時間になると扉が消失し、部屋同士が繋がり戦いが始まる。


 今回の戦いは俺と同じルーム期のダンジョン同士で争い合う。

 総勢12の部屋のダンジョンの意志が1つになるまで続く。

 流石に他の意志の情報はくれなかったが、相手は俺と同じく部屋の主を賭けた戦いで生き残った者たちばかり。

 最初の戦いより苛烈になることは必至だろう。

 しっかり作戦を練る必要がある。


 ダンジョンを見回った結果、扉は2か所出来ていることがわかった。

 ひとつは南側、もうひとつは東側だ。

 ひとまず2か所というのは悪くはない。

 それどころか、理想的な扉の数と言える。

 12組いるということは4面全て、他のダンジョンに囲まれる可能性もあったのだ。

 扉は4か所あった場合、全ての扉に十分な戦力を配備できない。

 また扉が1か所だった場合も、厳しい戦いになる予想出来ていた。


 その理由は初動の動きやすさだ。

 今回の戦いは初動で決まると俺は考えている。

 意志を攻略したときに手に入る迷宮スキルと大量のソウル。

 他のダンジョンを攻略すればするほど戦力が吸収し増強できるのが、ダンジョン同士の戦いだ。

 そう考えると扉が多い方が、多くのダンジョンを吸収できる機会に恵まれることとなる。

 逆に初動で躓くと、攻略対象が減る上に相手は強化されているという状況になりかねない。

 では、どのように動くべきか。

 一気に攻めるのが正解だろう。


 攻めるためのモンスターの選定をしよう。

 俺のオリジナルスキルである【マンドラゴラ】は攻めの要だ。

 その威力と攻撃範囲はいままで出会ったモンスターの中でも頭一つ抜けている。

 しかし扱いは兵というより兵器ようになるだろう。

 今回の戦場は単純計算で前回の12倍の広さ。

 それでもマンドラゴラの声は仕切りのない状態の部屋の中央から部屋全体に届く程に大きい。

 しかし、遮蔽物に弱く物陰に隠れると威力が激減する。

 また部屋や仕切りを超えた先にも効果は薄いだろう。

 そうでなくては第一波のとき最初のマンドラゴラの絶叫でゴブリンたちは全滅していたはずだ。

 マンドラゴラは叫び終わると死んでしまう。

 つまり、マンドラゴラを効果的に使うには運ぶ役が必要になるだろう。

 初手で全滅させられるかはわからない。現地で追加召喚する必要もあるはずだ。

 その時、引き抜く役も必要になってくる。


 その第一候補がラビブリンだ。

 こいつらはマンドラゴラの叫びに耐性を持っている。

 身体強化の土魔法でさらに耐性を上げれば、あの魔草の絶叫中でも問題なく活動できる。

 今回の戦いのメインは間違いなくこいつらになる。

 前回の戦いのMVPのコッコだが、活躍の機会はなさそうだ。

 攻める能力に欠ける。変異を期待しようにも時間は待ってくれない。残念だがしょうがない。

 今回は住処で防衛に徹してもらおう。

 一応、俺とラビブリンがはぐれた時の緊急措置で召喚するかもしれないが、あまり使いたくはない。

 前回の失敗でやらかした自爆技だからだ。頼る機会がないことを祈ろう。

 

 しかし、ラビブリンには致命的な欠点がある。

 それは俺とリマロンが揃わなければ召喚できない事だ。

 【ラビブリン】を使えるはリマロン。そして、【ラビブリン】の媒体であるマンドラゴラを出せるのが俺だ。

 今回部屋に現れた扉は2つ。ラビブリンを指揮して戦うと考えると、どうしても初動は俺とリマロンが分かれる必要がある。

 現在のラビブリン総数は5匹。今すぐにでも増やす必要がある。

 追加召喚はどのくらい必要だろうか。攻略に必要な役割で考えてみる。

 マンドラゴラを持って突撃するのが1匹。

 遠距離魔法で支援して進路を確保するのに2匹。

 絶叫が効かなかった敵を相手にするのにさらに2匹。

 最後にマンドラゴラの追加や補助魔法などの支援に1匹というところか。

 いや、後方支援は専門のチームを組んだ方がいいだろう。

 物資や負傷者の回収、戦線離脱者の交代要員なんかもほしい。


 とりあえず、攻略チームが1組5匹で2組必要。さらに後方支援を5匹で勘定して合計15匹。

 足りない10匹を召喚してみて、ソウルの余り具合で追加召喚をしよう。

 忌土を使った畑のマンドラゴラは育成がとても早く既に使えそうなものもある。

 それでも、間に合ったのが8本。

 今回必要なラビブリンの数を全ては賄えないし、投資コスト分をまだ回収するにはまだまだだが、育ったことに意味がある。

 早速リマロンに育ったマンドラゴラに【ラビブリン】を使ってもらおう。

 使えるソウルはマンドラゴラ召喚につぎ込んでしまうか。

 扉の前に生やしとけば攻めにも守りにも使いやすいはずだ。

 いや、大事なことを忘れていた。ソウルは保持することにも意味がある。

 召喚は最低限。必要に応じてだ。


 最後にダンジョンの攻略(ころ)し方を確認しておこう。

 俺が前の戦いでやっていた方法は、精神体(白い人影)を支配領域(黒い塊)から押し出す方法だ。

 ダンジョンの意志は基本的に自分の支配領域から出て活動ができない。

 自身の支配領域を見ることはできないが、他の意志の支配領域は黒ずんで見える。

 過去の戦いで俺が体験してきたことの真相はこういうことだった。

 そして、実はもう1つの攻略方法がある。

 それはそのダンジョンが生まれた部屋、オリジンルームの支配領域を無くすこと方法だ。

 今回の戦いに臨むはルーム期のダンジョンのみ。

 戦闘開始時点で全ダンジョンがオリジンルームしか持っていない状態なので、一見最初の方法と大きな差はないように思える。

 しかし、攻略される側の視点で考えるとこれが全く別の条件だと理解できる。

 例えば、オリジンルームに防衛戦力がない状態で敵ダンジョンの攻略に出かけるとする。

 その間に他のダンジョンの意志にオリジンルームを攻撃されたとすると、精神体がどこにいようが消滅してしまうのだ。


 ダンジョンの攻略(ころ)し方は以上だが、気を付けるポイントがある。

 それは俺がいるときにダンジョンの意志を攻略する必要があること。

 ダンジョンに支配されているモンスターの周りにはそのダンジョンの支配領域が展開しているため、敵ダンジョンのモンスターにぶつかればダンジョンの意志を倒すことはできる。そこに主であるダンジョンの意思が立ち会う必要はない。

 しかし、ダンジョンが消えた後のソウルや部屋の獲得にはダンジョンの意志が立ち会う必要がある。

 意思を先行して倒しても、他の意思がその部屋に先にたどり着くとせっかくの土地とソウルを横取りされてしまうのだ。リマロンにはよく言い聞かせないといけない。


 戦いに向けてはこんなところだろうか。

 召喚を終えたラビブリンが俺の指示を子分たちに伝えている。

 一段落着いたら早めに休んでもらおう。

 明日は長い1日になりそうだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ