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第三話 真珠湾攻撃開始

第三話となります!

<1941年12月7日 真珠湾上空>

ここ真珠湾上空には淵田美津雄率いる第一次攻撃隊、すなわち世界大戦の惨禍を太平洋にまで伸ばす戦争の引き金が飛行していた。

淵田機は試験的に配備された通信装置が搭載されており、さすがに艦隊まで電話ができるわけはなく今まで通り通信にはなるが、電話可能半径が30kmまで拡大されたことにより第一次攻撃隊に対する連携強化がなされていた。

この新型通信機は二式一号隊内無線機の名称で開発され、今まで使用されていた一式空三号隊内無線機よりはるかに高性能な無線機となっていた(当然開発陣がPCを活用して設計が行われていた)。

今まではノイズで有効範囲内でもまともな連携が取れなかった無線機から改良が加えられたことにより作戦行動は当然のこと、一機ごとの連携が命運をにぎる戦闘機部隊においても大きな活躍が見込めるため早速和泉及び軍部は生産ラインの構築を三菱に命じていた。


淵田が無線機を使う。


「こちら淵田、すでに真珠湾が見え始めた。今の我々は完全に奇襲を行うため第一撃はまったく反撃を受けない可能性が高い。逆に言えばこの第一撃で我々がいかに真珠湾の反撃能力を奪うかが、後続部隊の被害軽減に重要なわけだ。先ほど作戦を伝えた際にも行ったが、我々が襲うのは雷撃、急降下爆撃隊が戦艦、水平爆撃隊及び戦闘機部隊が滑走路だ。第二次攻撃隊が攻撃し損ねた戦艦空母及び港湾設備を攻撃する。まずは反撃能力を奪うんだ。以上!」


そういうとマイクを戻し、次はト連送を送る。

トラ・トラ・トラ、すべての始まりだった。

淵田は第一次攻撃隊183機が一気に散開しそれぞれの目標に向かい始めるのを見て頷く。


「水木、松崎信じられるか。最初はすぐ高度を下げたらどこ行ったんですかとわめいてたやつらが今となっては一寸も離れることなく追従してくるようになっているんだ。」


操縦士と後部銃手の二人に淵田はそう問いかける。

淵田の顔にはうれしさか、それとも満足、あるいはその両方が含まれた笑みが浮かんでいた。


「あ、渡邊あいつ、笑ってますよ。」


当然部隊行動をしているのだから銃手の水木からは二番機の渡邊機が見えているのだろう。

だが、怖気て震えられるより、当然自信に満ちた操縦のほうが信頼できるのは明らかだった。


「こいつらも強くなったもんだ。頼もしい。」


そうしているときに無線が入る。

同じく試験的に通信機を配備されていた戦闘機隊長板谷茂少佐から入電が入った。


「こちら板谷、板谷。いないとは思いますが戦闘機が見えたらすぐ言ってください、我々が秒殺して見せますよ、はは。」


「案ずるな、第二次攻撃隊がつく頃には確実に反撃は始まる。君たちの護るべきは我々だけでなく第二次攻撃隊もだからな。信頼しているぞ、守護神。」


そう淵田がいうと通信機の奥から笑い声が漏れてくる。


「いやあ、守護神だなんて、はは。まあ、そうっすね、任せてください。敵には弾一つ淵田さんたちに触れさせませんぜ。では、ご武運を!」


そういうと板谷は通信を切る、どうやら戦闘機隊も士気旺盛、淵田もまたなにも案ずることはなかったようだ。


兎にも角にも攻撃隊は真珠湾上空へと到達し、それぞれが突入を始めていた。

水平爆撃隊戦闘の淵田機もまた爆弾照準器の中心に戦艦を捉えようとしていた。


「今!爆弾投下ーッ!」


淵田のその号令が、火蓋を切った。

刹那、機体を離れた800kg爆弾が戦艦に一直線に降下していく。

後続も次々と爆弾を投下し、しっかりと変針をしている。

そして、時間がたち、着弾。


「爆弾命中ー!本中隊から4発命中!!」


ものすごい爆発音が続いて聞こえてきた。

淵田は身を動かし下を見る。


「上出来だ・・・四発、800キロが四発だ。戦艦といえどもひとたまりもない・・・。」


それはもうものすごい爆発だったのは言うまでもない。

とくに三番機が投下した爆弾は主砲塔を貫通し弾薬庫に直撃していた。

恐らくなにもかもが吹き飛んだのだろう、爆発の中がどれだけの惨状なのか想像すらできなかった。

だが淵田は冷静を保ち、すぐに超低高度を進行中の雷撃隊に通信を飛ばした。


「淵田だ!今爆発した戦艦はおそらく誘爆し大破だ!」


淵田達が爆発させた戦艦はカリフォルニア、それを狙う雷撃隊は海軍一の腕前を持つ村田重治だった。


「わかってます淵田さん!いま狙いを隣の戦艦に変えています!我々から見たところ艦尾切断すでに沈没が始まっています!」


その言葉を聞き淵田は驚く、村田という男がいかに優れた軍人か改めて実感したのだ。

上からの命令を待たずして正しい判断がくだせる士官がこの極度の上下関係を築き上げている日本軍においてどれくらいいるだろうか。


「すまない、君はそうか。村田だったな。いやはやいらない心配だったようだ。」


そういうと淵田は無線を切り攻撃隊の行動を見守る。

訓練では動く標的を狙っていたのだ、止まって微動だにしない敵艦を狙うなど今の攻撃隊には造作もないことだと今になって気づく。

だがここで淵田は今日初めて冷や汗をかいた。


「空母は、空母はどこだ!?」


上から最重要目標とされていた空母がどこにも見当たらないのだ。


「まさか本当に今日に限っていないなんて・・・すぐに連絡せねば。」


そうして淵田はすぐさま艦隊に向かって通信を打つ。

目下では攻撃隊が蹂躙し、もはや健全な主力艦は一隻たりとも残っていなかった。


<同時刻 小沢機動艦隊>

ここ赤城では淵田からの通信を受け取っていた。

通信兵がすぐさま駆けつけ報告をする。


「第一次攻撃隊攻撃成功。第一目標完遂するも港湾設備健全につき、六航戦を除く第二次攻撃隊を送られたしとのこと!」


その言葉に艦橋内が一気にざわつく。


「長官・・・!」


草鹿の言葉に小沢も頷く。

六航戦を除く、すなわち航空母艦が真珠湾になかったことを意味する。


「第二次攻撃隊の準備は?」


「すでに済んでます。一時間で全機発艦可能です。」


草鹿の答えに若干小沢は悩む。

数秒だけ沈黙が流れ、小沢は命令した。


「よしわかった。淵田の要請通り第二次攻撃隊を六航戦抜きで発進させろ!六航戦には第一索敵行動を命令し命令次第瞬時に攻撃隊を発進できるよう準備させておけ!」


「はっ!」


赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴から第二次攻撃隊が発進した。

同時に第一索敵行動と呼ばれる部隊が黄鶴と槍鶴から発進する。


第一索敵行動は九七艦攻に増槽を取り付けた、すなわち最も長い距離を飛べる機体が12機一組となり12方面に展開し索敵を行う行動で、12機がさらに後発することで24機体制の索敵網が完成する仕組みだった。


「真珠湾が壊滅しても空母が健全ならすなわち基地が残っていることになる。取りこぼしはしたくないが・・・。」


小沢のいうことは本当で、空母というのは言ってしまえば移動することが出来る基地である。

小沢の考えではむしろハワイそのものを占領しないのであればハワイを狙うよりももっぱら空母を撃沈することのほうが重要であった。

真珠湾はもうすでに半壊しており、フォード飛行場は使用不可能、主力艦もまた攻撃隊の攻撃を受け8隻いた戦艦のうち既に5隻が沈没または着底、のこりの3隻もすでに大破に近く、大火災に包まれていた。

反撃能力は完全に紛失しており、唯一残っている港湾設備もまた第二次攻撃隊により機能を紛失させられると思われるため、本当に小沢にとっても唯一の危惧しているものが敵航空母艦からの反撃なのであった。

だがそんな小沢らの心配を知るわけもなく、第二次攻撃隊は士気を最大にまでしながら発艦していったのであった。



すでに二話ですが100ポイントを超える評価をいただきうれしい限りです。これからもよろしくお願いします!

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