第一話
皆様初めまして!以前から様々な媒体を使いIF戦記というものを読み続け、最近になって自分でも作りたいと考えるようになった始末でございます。ですのでこれからこのシリーズをつづけ、書かせていただきます。これからどうぞよろしくお願いいたします!
<1941年12月7日>
今、世界は再び世界大戦の渦中へとあった。
アドルフ・ヒトラー率いるナチスドイツは暴走し、東のポーランドから西のフランスまでをも落とし、ユーラシア大陸の覇権をソビエト連邦と二分しており、現在は独ソ戦と言われる超大規模な戦争が起きていた。
ソビエト連邦はドイツ軍の猛攻により戦線を押し上げられ、米英もまた大陸への糸口を掴みかねていた。
そんな時、極東の帝国である大日本帝国が動き出した。
極東と呼ばれる地域で唯一の列強入りを果たし、その実力は世界でも無視できないものとなっていた日本、この国は海軍では米英の次に戦力を保持している海軍国家でもあったが、まだ日本軍の上層部でしか認知されていない超機密事項があった。
<旧大本営>
ここはかつて大本営と呼ばれた、陸海軍統帥機関がおかれていた場所である。
ここは現在は最高軍司令部と呼ばれ、陸海軍における作戦行動や兵站などの業務を一手に率いる、言ってしまえば海軍省や陸軍省の存在意義を失いかねない機関(当然行われない業務も多くあるが)となっていた。
そしてここがそうなる原因を作ったのが、とある人物であった。
その人物は突如として現れ、一気に日本の軍部の権力を掌握するまでになっていた。
1938年、まだ第二次世界大戦すら始まっていなかったとき、大本営のすぐ近くに出現した謎の建物の中にて意識不明の状態で発見された。
その人物は自身を和泉泰示と名乗り、自身を21世紀からの原因不明の転生者と説明し、周囲からは異端の目を向けられていた。
だが突如として現れた建物(家)と、本人の部屋に置かれた物などから徐々に疑いの目が晴れ始め、最終的にはともに転生してきたパーソナルコンピューターと呼ばれる機械を操る、未来をあてる(本人にとっては歴史ではあるが)などの行為をすることによって、超機密人物として最初は海軍の管轄下におかれることとなった。
和泉は自身をただ歴史に興味があったサラリーマンであったというが、それらの知識は完全に歴史学者に近いか、超越したものであった。
それらを駆使し、第二次世界大戦の勃発から、更にはドイツの電撃戦の内容、仕組みなどを事細かく説明したことにより、完全に軍部から主要人物として扱われることとなったのである。
当然和泉は当時の日本が進行ていた日中戦争の全貌を事細かく告げ、さらに日本は日中戦争に想像以上に苦戦し、1945年の8月15日に中国どころか世界相手に敗戦するということまで告げたのである。
最初は反逆者だのなんだと言われたが、日中戦争に苦戦していることなどはすべて事実であるため反論の余地がなく、「和泉の助言」を受け実行した結果中国を降伏させることに成功したため1939年に入るころには完全に和泉の権力は肥大化したのであった。
そしてその権力に物を言わせ、「陸海軍の分裂が軍を弱体化させた」という事実をもみ消すため無理やりに陸海軍の最高司令部を一つの建物に集め、扱いやすくしたのである。
少将以上か、特定の関係者にしか真実は伝わっておらず、ほかの人物に対しては日本一の知能を持つ天才ということで通っていた。
和泉が出現したことは完全に日本という国そのものを強化させた、大陸においては中国を降伏させたことにより北方にさえ気を付ければ安泰となり、莫大な資源を手に入れた挙句、国内においても政策は成功をおさめ、工業力はアメリカやイギリスでさえももはや放置しては危ないと判断し禁輸処置などを史実よりも早期に行い始めるに至ったのであった。
そして今日、ついに和泉は海軍最高司令官である山本五十六をはじめとした陸海軍最高幹部らとともに会議を重ね、真珠湾を攻撃する作戦を開始したのであった。
「和泉さん・・・最早あんたの言うことを疑う人物は軍部にはいない。だが一つだけ聞かせてほしいことがある。」
司令部のなか、和泉の自室では山本五十六と参謀の宇垣纒を招きいれていた。
茶を嗜みながら山本が尋ねる。
「なんですか?」
「・・・この戦争、あなたが来てから日本という国が大きく変わったのは事実だが、勝てると思われているのか?あなたがもともといた世界では負けたという。」
その質問は山本が以前からずっと秘めていた思いであった。
山本はもともと対米戦争は何としても避けたいという意思表示をしていたためあまりこれからの戦争をよく思っていないのであろう。
だが和泉は若干にやけながらこう言った。
「よく私がいた世界では・・・今の私のような立ち位置を主人公に置いた小説がよく書かれてたんですよ。その主人公たちはね、口をそろえて言うんです。「過去を改変すると未来が壊れる」ってね。」
「・・・あなたの世界があったからこそ、今の我々の世界があるともいえるのですか。」
宇垣がそういうと和泉は頷いた。
「やっぱ海軍のトップとまでくれば話の理解が早くて助かりますね。ただ違うんです、僕は違うと思う。」
「・・・と言われると?」
「僕が未来から転生してる時点で、僕がもともといた世界の過去ではないんですよ。そんな人が僕のいた世界の過去にいたら間違いなく僕がいた世界の当時にも未来からの転生者がいたか、過去にそう言った人物がいたって文献があるはずです。だけど、ない。それはつまりこの世界は実際は僕のいた世界の過去ではないということであり、僕がいくら歴史を改変しようと僕のいた未来は変わりようがないんです。・・・それにね。」
「・・・それに?」
「やっぱり僕は日本人だ。第二次世界大戦という、最後の世界大戦に参加する機会があったのであれば僕は勝たせたい。それに過去を知ってる分アメリカが将来日本に対しどんなことをするか・・・知っている。それは日本としても同じだ。虐殺とかは戦争のつきものだけど、それこそなくさなければ未来において国家間の仲は深い溝で断裂されるんですよ。そして勝者こそが正義となる。たいていの場合その正義は自国にのみ利用され、敗者は圧政の元置かれることとなる。だからこそこの戦争に勝って、敗者にもまた手を差し伸べなければ平和なんて呼べないんですよ。我々がなんとか勝者となって、最善の選択肢を選んでいかなければいけないんです。この戦争だって、まず僕の目標としているのはあなた方が「表向きの」理由としていた東南アジアの解放戦争ではなく、「本物の」解放戦争です。フィリピンやインドネシア、マレーシアやインドなどと言った国家を開放することが目標なので当然アメリカの占領など考えてもいません。中国と満州には戦争の勝利のため傀儡国家となってもらっていますが、世界大戦が終結次第当然独立を認めます。」
その言葉を聞き、宇垣と山本は出す言葉がなかった。
言わんとすることは理解できた、だがそれに対し不可能や、無茶といった類の言葉を出すことが出来なかったのである。
実はこの男、28歳という若さであり、ほかの幹部から見下されていた節があったのだが、実際に対面してみた者たちは次々と意見を改め、この男を「義理堅く人情深い大和男子」と認め始める程に性格もまた受け入れられるものであったため、そんな男が夢見る世界に意見すること自体が間違っているのではないかと二人は思っていたからこそ何も言うことが出来なかったのだ。
「兵器もまた零式艦上戦闘機を筆頭に開発しましたが、あれ自体もう僕の知っている現実世界の零式艦上戦闘機とはかけ離れているし、大和型戦艦の完成した姿は最初っから僕の知る限りの最終形態となっている。空母は大陸の工業力を利用して翔鶴型を四隻まで完成させられた。僕の世界ではどれも違ったんです。そもそも中国が傀儡国家として成立した時点で歴史とはかけ離れてますけどね。」
和泉はパーソナルコンピューターを、インターネットがない世界では計算機としてしか機能しないと判断し、兵器開発に充てるよう贈呈したのであった。
共にこの世界に持ち込まれたPCは転生前の当時としてハイエンドモデルが一台と、数世代前のモデルが一台で、ハイエンドモデルが海軍航空技術廠へ、古いモデルが陸軍技術本部へと贈呈された。
結果として航空機用エンジンは栄二一型としつつも馬力はアメリカにも引けを取らない1300馬力にまで増加し、武装などにおいても既に史実の52型を超えるレベルに達していた。
戦車に関しては土台となる産業が現在構築中であることもあり、まずは歩兵装備及び野砲関連が優先され、火砲において強化が施されていた。
「・・・我々は大陸においても莫大な工業力を得た、もしかしたら勝てるのではないかという考え、以前の俺ならみじんも考えられないことすら浮かび始めた。」
「長官・・・」
山本はおそらくまだ確信は持ててないだろうが、勝てるかもしれないという考えが出ていた。
その変化は参謀としてついていた宇垣からしてもとても驚くことだったらしい。
「山本さん・・・。これは戦争です。常に我々はベストを尽くさなければいけないし、一つのミスでさえあのアメリカという大国は見逃しません。気を緩めないで行きましょう。」
そういうと山本は頷き、茶を飲みほした。
ちょうどその時、ハワイ沖に展開していた、小沢治三郎中将率いる艦隊から航空部隊が発ち始めていた・・・。