第28話:カミングアウト
「……俺がお前に怯えるわけないだろう!!離れてくれないかな!?」
カラスはカササギを突き飛ばそうとするも、明らかに手に力が篭っていない。
「やっぱり、お前……」
「今はバレーの作戦を立てる時間だろう!?隊長にだってそう言われてる!!余計な話は止めよう!!」
追求しようとするカササギに、カラスは必死な形相で抗う。
カササギとカラスの間には、深い深い溝があった。
「……本格的に考えなくて良いって言ったのはお前だろ。」
「ああ言ったさ!!そういえば隊長はビーチバレーと言っていたな!!ビーチバレーなら確かにペア競技だ!!これはちゃんと作戦を練らないと」
「さっきから言ってること滅茶苦茶なの、自分でも気付いてんだろ。」
「……。」
カラスは、観念したように青い顔を俯かせた。
「……別に、お前が怖いわけじゃない。というか、お前も自分で言ってたけど、俺はお前より強い。怖がる理由が無い。」
(こいつ、弱ってても意外とボロクソに言うな……。)
カラスへの苛立ちを何とか抑え込み、カササギは続きを促す。
「じゃあ一体何が怖いってんだよ?」
カササギの問いに、カラスは小さい声で答えた。
「……りょう」
「あ?なんて?」
「不良がっ……怖いんだよ!!悪いか!!」
「お、おぅ……。」
何となく予想はついていたが、改めて大声で宣言され、カササギは目をぱちくりさせる。
一度声に出してスッキリしたのか、カラスは堰を切ったように喋りだした。
「……あぁ、そうだよ!僕は不良が嫌いだ!カササギ、お前も指摘していたが、僕は本当に真面目な奴だ。向こうじゃクソ真面目な高校生だったよ!真面目で何が悪い!!くそっ、今の僕には力があるんだ。頭では分かっているのに、いつまで経ってもアイツらの顔が脳裏に焼き付いて仕方がない!!どうして……!!」
軽く頭を抱えながら捲し立てるカラスに若干引きつつ、カササギは慎重に話しかける。
「あの〜、過去に何かあったのか……?あと、お前自分のこと僕って呼」
「うるさい!!!!」
「すまん……」
かなりの剣幕で怒られ、思わず素で謝るカササギ。
カラスもそんな様子のカササギを一瞥し、徐々に元の調子に戻っていった。
「……悪い。怒鳴りつけてしまって。」
「あー、トラウマとかあんなら、無理には聞かねぇぞ……?」
「……いや、ツバメ隊長が作戦会議に20分も取った意図や今後の事も考えると、ここで話しておいた方が良いだろう。」
カラスは一呼吸置くと、話し始めた。
「……俺は、現実世界で虐めを受けていたんだ。」
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