第16話:決着
カササギは、ツバメの脚にへばりついたまま笑った。
「あぁ!?一丁前に見切ったとか抜かすなよっ!!」
ツバメが振りほどこうと脚を振るも、何処にそんな力が残っていたのか、カササギは決して離れようとしない。
「無駄だぜ、もうお前に『風』は使えねぇ!!」
カササギは言い切った。
風、という単語に、ツバメはピクリと眉を動かす。
「へ〜……?それくらいは分かったんだ、お前。」
「あぁ。……お前も『風圧』とか言って、散々ヒント出してたろ。」
カササギの答えに、ツバメが頭を掻いた。
風。ツバメの能力は、正確には『大気』を操るものだった。
普通の人間よりも元々の力が強いとはいえ、ツバメの力は精一杯出し切ってもプロのキックボクサー程度だ。
人間相手には十分以上に通用するとはいえ、身体を吹き飛ばす威力には至らない。
そこで、大気を右足に纏わせることで、その力を数倍、数十倍と高めている。
しかし、今のツバメの右足には、カササギが密着していた。
「今のお前は、風の力を使えねぇ!!お前は、右足でしか俺を蹴らなかった。その力がどういう原理で働いてんのかは全く分からねぇけど、おそらく右足にしか使えない……。違うか!?」
「だったらなんだよ。」
「お前は右足に風を纏わせられねぇ!俺の身体はボロボロだけど、お前の普通の蹴りくらいは何発かなら耐えきれる!つまり……」
カササギは思い切り笑った。
「俺の勝ちだ!!!!」
「うるせぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
直後、カササギの身体が吹っ飛んだ。
今までよりも高く、高く飛び、壁を壊して城内に突っ込む。
何が起こったのか分からないまま、カササギは意識を手放した。
「確信も持たねえのにイキってんじゃねぇぞ、雑魚がよぉ……。」
ツバメが眉を顰め、カササギが飛んでいった方向を目で追った。
左足。
ツバメは、左足を使えなかったのではなく、使わなかったのだ。
「……消費がキツすぎる……やっぱ利き足じゃねぇと上手くコントロール出来ねぇか……。」
ツバメの身体がゆらりと揺れ、その場に倒れ込む。
「試験前に一発、風圧でもう一発、まともに食らったのが三発、受け止められたのが一発、顔面に二発、左足でホームラン…………。」
うつ伏せに倒れ込んだ彼女の表情は見えないが、その声は満足気に笑っていた。
「一発足りねぇから、まぁ、生きてたら半人前ってことで良いか……。」
「ちょっと、こんなところで寝ないでください。ちっとも良くないですよ!左足は使わないって言ってたじゃないですか!」
ツバメの傍に、少女が舞い降りた。
「ツル……。」
「はぁ、もう、ツバメさんもカササギくんも世話が焼けますね……。結局私が回収しなきゃいけないんですから。壁壊したの、怒られても知りませんからね?」
ずっと上空から傍観していた鶴見が、やれやれと首を振る。
「うっせ……。お前も、一緒に怒られろ……。」
「はいはい。喋らないでじっとしてて下さいね〜。だいぶ消耗したんでしょう?」
今にも気を失いそうなツバメを肩で支えながら、鶴見は城の中へ向かう。
「カササギくん、生きてますかねぇ。」
その口元にも、笑みが浮かんでいた。
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