第15話:忍耐
「主人公ぉ……?意味不明なことぐだぐだ抜かしてんじゃねぇぞ!!」
立ち上がり、構えるカササギを見てツバメは笑った。
侮蔑、嘲笑、歓喜。何故湧いてくるのか本人でさえ分からない、様々な感情が、ツバメの中でぐるぐると渦を巻いて大きくなっていく。
その力を足に込め、カササギ目掛けて打ち付けた。
「避けられるもんなら避けてみろってんだよぉ!!」
カササギは、その足を、逃げも隠れもせず、真正面から受け止める。
「ぐっ……!!」
再び、カササギの身体が城壁にめり込んだ。
腕は裂け、口元からは血が溢れる。
だが、カササギの目は、しっかりとツバメを捉えて離さなかった。
「マジで正面から全部受け止める気かよ?オイオイ、威勢だけ良くてもニンゲンってのはそんなに頑丈じゃねぇだろぉ?」
ツバメが肩を竦めて首を振るも、カササギは黙りこくったままだ。
彼は、振り絞るように全身を動かし、再び構えの姿勢を取った。
「……その態度が気に入らねぇなあっ!!!!」
苛立ちをぶつけるように、先程よりも力を込め、ツバメは右足を振った。
カササギの身体がゴム毬のように弾む。
壁に叩きつけられ、無様に血を流すカササギには、とても策があるようには見えない。
それなのに、真剣な表情でツバメを睨み続ける彼には、どこか底知れぬ力を感じた。
その表情に、より一層ツバメの腸が煮えくり返る。
「お前は弱い!!それなのに、なんで弱さを認めねぇ!?ニンゲン風情が、俺たちと肩を並べるってのがそもそも無理なんだよ!!なんで引き返さねぇ!?ばっかじゃね〜の!?!?」
ツバメは叫んだ。
カササギに恐怖など抱いてはいない。
自分よりも弱く、惨めな存在を怖がるはずがない。
ただ、このニンゲンは、今まで見たどんな人間、どんな勇者よりも……
「気持ち悪ぃんだよお前!!!!」
気味が悪く、得体が知れなく、本能的に理解出来なかった。
蹴った。
嫌なものを振り飛ばすように、右足を動かした。
宙を舞う男の視線から外れたくて、ひたすら力を込めた。
大気を揺るがすほどの、ありったけの殺意で、カササギを蹴り飛ばした。
だが、その男は、もう折れてはくれなかった。
「気持ち悪くて悪かったなぁ!!!!」
確かに壊しきった、もう動かせるわけがないカササギの腕がツバメに伸びる。
その手は、がっちりとツバメの太ももを掴んでいた。
足についた血液がぐちょりと音を立てる。
「ひっ……!?」
生理的嫌悪感に、ツバメは頬を引き攣らせた。
「今の2発はだいぶ効いたぜぇ、ツバメさんよぉ……?」
そう言いながら、カササギはツバメの右足に擦り寄り、全身を使って彼女の脚にがっちりとしがみついた。
「な、な、お前、キモッ!!うぇ!?!?マジで気持ち悪ぃ!!死ね!?!?事案だぞ!?!?」
全身に鳥肌が立つ。
生まれてこのかたセクハラを受けたことのないツバメは、軽くパニックになった。
涙目になりながら、自由な左足で、げしげしとカササギの頭を踏みつけた。
「死ぬ間際に事案もクソもあるかよ!!」
「だからって俺にセクハラして死ぬんじゃねぇよ!!真性のロリコンか!?キモイ!!死ね!!」
「ロリコンじゃねぇし死なねぇよクソガキ!!」
その場の緊迫感を忘れて、ぎゃあぎゃあと罵りあう。
激しい口論ののち、カササギはぜえぜえと肩で息をしながら、不敵に笑った。
「見切ってやったぜ、お前の攻撃。」
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