番外編(晩餐会後のヤマガミ家)
「サクラ!!やっぱりそのドレスに髪飾り、とってもお似合いよ」
「この髪飾り、王妃様の手作りって…」
「そうそう。サクラには当日まで内緒って口止めされてて…あぁ、言いたくて堪らなかった!!」
「お母さんなのによく秘密に出来たわね」
「もっと褒めて」
お母さんも少しお酒が入っているな。
いつもより更に口数が多い。
「そうだわ!お母さん!!どうしてレオン殿下の乳母って事を黙っていたの?」
「え!?サクラ知らなかったの?てっきり知っているものだと…」
「教えて貰わないでいつ知るのよ!」
「あれ?言ったことなかったっけ?」
「ないわ!お父さんの思い出話は何度も何度も、耳にタコが出来る位に聞いたけれどね!!」
「そうかしら…」
「せめて学友の話が出た時に聞きたかったわ」
「あー…ごめんなさいね…。そう、レオン殿下とサクラが同じ誕生日だって事は知っている?」
「それはここに住んでいれば…情報が入ってくるから知っているわ」
「丁度アンバー様と私の妊娠が分かった時期が一緒でね…それで…アンバー様が私に乳母にならないかってお誘いしてくれたのよ」
「一介のメイドでしょう?それなのにどうして…」
「お父さんに対してローランド陛下とアンバー様の信頼が厚かったのね、だから妻の私に対しても目を掛けてくださっていて…それで声を掛けてくださったのよ」
「そうだったんだ…」
「産まれたら誕生日も一緒だったから…アンバー様がとても喜んでくれてね」
私の頭を撫でながらお母さんは微笑んだ。
「生まれてすぐのレオン殿下って少しの音でも敏感に感じて泣いてしまわれたの。サクラはよく眠る子でね。レオン殿下がどんなに泣いていてもサクラを隣に寝かせると泣き止んで不思議とぐっすり眠ったのよ。だから1歳までの間はレオン殿下とサクラは同じベッドでよく眠っていたのよ」
「そ…そうなの?」
「えぇ、まるで天使のようだった」
「知らなかった…。生まれてすぐ出会っていたなんて…」
「そうそう。だからかしら?
1歳まで毎日のようにレオン殿下にお会いしてたからサクラはきっと知ってるって思ってしまってて」
「お父さんの記憶もあまりないのに1歳の記憶があるわけないでしょう!!」
「サクラは賢いからつい、ね」
だから母よ。
舌をペロッとするんじゃない。
私は深い溜息をついた。
「サクラは生まれてすぐレオン殿下と仲良しだったからお父さんが寂しがって寂しがって大変だったのよ。
サクラがお嫁に行っちゃった!ってね」
「お嫁って…そもそも王太子殿下と結婚出来る訳ないでしょうに」
「あら!サクラはレオン殿下と結婚したいの?」
「何を言っているの?そんな訳ないでしょう!!結婚って…私まだ7歳よ」
「あと10年後には結婚しているかもしれないわ」
「話が飛躍しすぎよ」
「サクラがお嫁に行っちゃったら…お母さん寂しいなぁ」
「まだ先の話よ。そもそも結婚出来るのかも分からないわ」
「サクラは大丈夫よぉ…だって……」
「お母さん!?ちょっと!!」
やっぱり少し飲んだな…。
お母さんはお酒が入ると直ぐに眠ってしまう。
でも今日は頑張って起きてた方か…。
流石にお母さんを寝室まで運ぶ事は出来ないのでそのままソファーに寝かせとこう。
今日は色々な事があったなぁ…。
私も眠くなってきた。
やっぱり私はこの家が1番落ち着く。
次は本編に戻ります。