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15.

「そろそろ来る頃だな、サクラー!!こっちへ来てくれ!!」


素振りをしていたらグロヴァーさんに呼ばれた。

急いで駆け寄って直ぐの事だった。



「お待たせしました」

小走りでゴールドの長髪を靡かせた美しい人がこちらへやって来た。


「サファー、すまなかった」


「いいえ、団長はお忙しいですし。

時間ギリギリになってしまってすみませんでした」


「いや、いいんだ。

ところでサクラはサファーと会うのは初めてか?」


「はい、初めてです」


長髪の麗しい人がにこやかにこちらを見ている。

騎士の服を着ていなかったら多分女性に間違えてしまうかもしれない。

でも近くで見ると鍛えあげられた身体のラインがよく分かる。

透き通ったブルーの瞳はまるで海のようだ。



「そうかそうか。こちらがサファーだ。騎士副団長をしている。山積みになった書類を処理してもらってたんだ。数字は私よりサファーが得意だからな。ガハハハハ」


「サファー・ノースアーロノアです。

私は現国王陛下の弟ですが、王位継承権はもうレオン殿下に譲っております。

どうしてもタクミに憧れて騎士の道を選びました。サクラ、会えて光栄です」


「お初にお目にかかります、サクラ・ヤマガミと申します。

えっ?父に憧れて…?」

思わず声が裏返りそうになる。


「はい、ゆくゆくはヤマガミを名乗ろうと考えている位ですよ」


「そ…そんな…」


「サファーは王族関係なく副団長にまで上がって来たんだ。私が引退したらサファーが団長になるだろう。」


グロヴァーさんは結構強い力でサファー様の背中を叩きながら豪快に笑っていた。


「と…そろそろ時間だな」


グロヴァーさんが持っていた懐中時計を確認して呟いた。


「レオン殿下ー!!」

大きな声でグロヴァーさんが殿下を呼ぶ。

レオン殿下は動きを止めてこちらへ歩いてきた。


「サファー、来ていたのか。今日はよろしく頼む」


「はい、レオン殿下。お二方とも検討を祈ります」


「あいつの分は祈らなくていい」


「私の憧れのタクミのお嬢さんですから。同じくらい祈らせてください」


「サファーまで…まぁいい」

レオン殿下はまた大きな溜息をついた。


「よしっ。

それではこれより試験を開始する。

2人とも承知の通り一騎打ちだ。

先に喉もしくは心臓に剣を突き立てた方が勝利だ。勝負は1回限り。

2人とも全力で挑んでくれ。

何か質問はあるか?」


「ない」

「ありません」


「よし、2人とも位置について。」


お互い向かい合うように位置についた。

いよいよなんだ。

いざ向かい合うと心臓がドクンと跳ねた気がした。


レオン殿下は剣を鞘から抜いて準備は万端のようだ。

すかさず私もカタナを抜く。

少し掌に汗をかいている。

二人の準備が整ったのを確かめるとグロヴァーさんが大きな声で言った。




「よーい、始め」





キィィィィィン


早速金属音が響く。

咄嗟に殿下の振り下ろした剣を防いだ。

重い。

ビリビリと腕に振動が伝わる。


ジャリッ


足も踏ん張っていないと後ろへと押される。

やはりパワーは殿下の方が上のようだ。

一撃で仕留めに来たか…。


直ぐに体勢を立て直す。

その隙を突いて今度は脇腹を狙って剣が横から来た。

それをしゃがんで交わす。

しかしこの動きが読まれていたようで直ぐに剣が頭上から振り下ろされる。


まずい。



横へと転がって回避していたその瞬間だった。


またあの時と同じ。

視界がグレーに染まる。

殿下の振り下ろす剣がやけに遅く見える。


ならば…


このまま後ろへ回り込んで背中から心臓に向けて突けば…。

不思議と自分がどう動けば正解なのか分かる。


ザンッ


殿下の剣が地面に振り下ろされたその瞬間だった。


スンッ


すでにレオン殿下の後ろに回り込んでいた私のカタナの先が殿下の心臓目掛けて突き立てられていた。

もちろん寸止めで。


「試合終了!」


「サファー」

「はい」

グロヴァーさんとサファー様がお互い目を合わせて頷く。


「サクラの勝ちだ」


勝った…。

しかもガンリキが発動して。


目を丸くして振り返ったレオン殿下に向けて満面の笑顔を見せつける。


「ほらね、私が勝つっていったでしょう?

これからも一緒に楽しく授業を受けましょう、学友のレオン殿下」


「なっ…」


あー、その悔しそうな顔いいな、最高。



ドサッ



??


次の瞬間膝の力が抜けてその場に座り込んでいた。


あ、ガンリキを発動したからまた燃料切れか?


あれだけ体力つけて対策もばっちりだと思ったのに。

なかなか格好よく決まらないなぁ。


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