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13.

翌日には筋肉痛も大分和らいだ。

お母さんは若いからよ、なんて言って笑ってた。


それからというものグロヴァーさんの訓練の時には必ずお互い偵察に通うようになっていた。

レオン殿下は剣の腕前もなかなかで隙がない。

どうやって懐に入り込むかレオン殿下の練習風景を見て考える。

恐らく剣を振り下ろす一瞬で入り込まなくてはならないだろう。

何度も何度も頭の中でイメージする。


私はと言うと、カタナの扱いにも慣れてきた。

朝と夜に素振りをして特訓してきた。

特訓が終わってからも演習場で走り込みをしていつガンリキが発動しても良いように鍛えて来た。

大分自信もある。

だけど、あれから1度もガンリキが発動していない。

試験は明明後日で明日がグロヴァーさんに指導してもらえる最後の日なのに。


ガンリキが発動しなくても速さなら私の方が上。

大丈夫、きっと勝てる。


考え事をしていたらいつの間にかレオン殿下の練習が終わっていた。

汗を拭いながら満面の笑顔でこちらへと向かって来た。

汗を拭ってるだけで絵になるその顔が今は憎らしい。


「随分怖い顔で練習を見ていたけど、今なら試験をやらず辞退してもいいんだよ?」


「レオン殿下…か弱い私を想って言ってくださっているのでしょうけど、大丈夫です。必ずレオン殿下の心の臓にカタナを突き立ててみせますわ」


「誰がか弱いんだか。か弱いレディはタックルなどしないだろう。怖じ気づいて自分から辞退を申し出れないであろう君に変わって私が選択肢を与えてやったまでだ。勘違いするな」


「本当は私の心配をしてくださっているんでしょう?あぁ慈悲深い」


「だ、か、ら!それヤメロ!!」


前よりレオン殿下との会話が増えた気がする。

と言ってもレオン殿下の幼稚な発言を私が上手く宥める感じで。

これを言ったらレオン殿下は勘違いするな、なんて言って大きな声で否定するだろうけど。

この関係が今は堪らなく面白い。



夜ベッドに潜り込むとレオン殿下の練習での動きを頭に思い浮かべる。

どのような作戦でいくか…

この数ヶ月、毎日が新鮮であっという間だった。

毎日全力で学び、鍛練し、時々おちょくって…


考える事は山ほどあるのにベッドに転がった瞬間すぐ落ちてしまう。

まだ作戦を考えたいのに…。



また気が付くと朝になっていた。

試験はとても楽しみだけど、やけに今日1日は時間が過ぎるのが早かった。

午前中の数式や天体の授業もあっという間に終わってしまって、グロヴァーさんとの特訓の時間がやって来た。


「サクラ、試験までの特訓は今日が最後だ。サクラもレオン殿下の特訓を見ているから分かると思うが、正直どちらが勝つか分からない。

レオン殿下の強みはパワーだ。剣の使い方で言えばレオン殿下の方が上だと思う。

逆にサクラの強みは素早さだ。

今日はこの素早さを生かした戦いが出来るように最終調整していこう」


「はい、よろしくお願いします」


「いいか、サクラ。相手が疲れて油断したその瞬間だけを狙うんだ」


「はい」


今日はなかなかグロヴァーさんの懐に入れないし、背後にも回れない。

本気だ。

これが大人の…騎士団長の本気なんだ…。

グロヴァーさんの剣を交わしつつ、隙を見つけようと試みるが全く隙を見せてくれない。

背後に回らなくては仕留められない。

行くなら今だ。


スッ



後ろに回ろうとした瞬間だった。

グロヴァーさんが持っていた剣が胸の前に振り下ろされた。


「あっ…」


「サクラ、後ろに回り込もうとした所まではよかったが、動きが読めたぞ。相手に悟られないように動かなければ。」


「はい」

少し息が上がってしまった。


「大きな声では言えないが、俺ぁサクラに勝って欲しいと思ってる。この先レオン殿下の学友としてサクラには殿下の傍にいて欲しいと思ってるんだ。だから…これだけでくたばるんじゃないぞ。もう1本」


「はい」

息を整えて再びグロヴァーさんに挑む。


結局ガンリキも発動しないし、今日は1度も懐に入り込めなかったけど、明後日、私は勝たなくてはならない。


私自身もこの日常がこれからも続いて欲しいと願ってしまったから。


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