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11.

どうしよう。


身体が重くて動かない。

でも金縛りとかじゃなくてこれは…

全身筋肉痛だ。


窓枠に掴まりながらなんとか身体を起こす。

昨日は疲れていつ眠りについたのかも分からないけど、ちゃんとベッドで寝付いたようだ。


壁伝いになんとか階段を降りてリビングへ行く。


いつもの様にお母さんはお仕着せ姿で慌ただしく朝食を作っていた。


「あらサクラ、おはよう」

いつも通りの笑顔だ。


「おはよう…」


「どうしたの?なんだかいつもと様子が違うわ。具合悪い?」


「…ううん…全身筋肉痛になってしまったみたい…」


「あらぁ…昨日オニゴッコ頑張りすぎちゃったのねぇ…。1人で王宮に歩いて行ける?それとも…お休みする?」


「休むなんて私の選択肢にないわ」


「うーん…でも困ったわねぇ…」


「大丈夫よ、時間をかけてゆっくり歩いて行くから」


「でも心配だわ」


「大丈夫だから、絶対に王妃様に余計なこと言わないでね!」


「…分かった。でも今日は無理しちゃだめよ」


「はいはい」


もう正直しんどいけど2日目で欠席したらそれだけで負けた気分になる。


今日は早く支度を済ませて家を出た。


幸いな事に、今日はサッシャーさんの歴史の授業の後は絵画の観賞会で、あまり身体を動かさない。

だけど、最後の30分はグロヴァーさんの稽古がある。

グロヴァーさんは1日ずつ交代でレオン殿下と私の指導をしてくれることになっている。

今日は早速私の番だ。


ちゃんと動けるかは分からないけど、頑張るしかなさそうね。


痛い足を労りながら王宮の離れまで向かった。


昨日と同じ部屋に着いた時にはもうレオン殿下が到着していた。

レオン殿下の隣には昨日私をここまで案内してくれた、黒い服を着た背の高い男性が立っていた。


男性は私が部屋に入って来たのを確認するとこちらへ向かって来た。


「昨日は名乗らず申し訳ありません。私はレオン殿下の侍従のルカ・グレイスと申します。以後お見知りおきを。では私は失礼いたします」


「グレイス様、こちらこそどうぞよろしくお願いします」

丁寧に一礼をした。

うっ

一礼するだけで身体が痛い…!!


ルカさんは前髪が長くて昨日はあまり気が付かなかったけど、グリーンの瞳の色をしていた。

レオン殿下よりも深いグリーン…。

髪の色は深みがかった茶色で襟足が少し長い。

なんともミステリアスな雰囲気を醸し出す不思議な人だ。


ルカさんが部屋を去ってから、レオン殿下は悪態をつき始めた。


「期間限定の学友とやらにわざわざ名乗らなくて良いと言ったんだが…ルカは律儀な男でね」


「あら、レオン殿下ご機嫌よう。

とても素晴らしい侍従で羨ましいわ。

だって、これからも私が殿下の学友であり続ける事をよく分かっていらっしゃるもの」

今日もレオン殿下は昨日と変わらない表情だ。

ところで殿下は筋肉痛は大丈夫なのだろうか。

何事もなさそうにしてるけど、裏腿を思いっきり親指で押したら悲鳴を上げたりするのだろうか…


さすがに出来ないけど。


「…だから、どうして君は…そんなに自信に満ちあふれているんだ…」


レオン殿下は頭を手で押さえながら溜息をついていた。

このレオン殿下の様子を見ていると王妃様が言っていた“完璧な王太子”とは少し違うように見えてくる。

王妃様が心配しなくても十分人間味があるのでは…?

なんて思ってしまうけど、私はこれから彼の事を存分に罵りたいので王妃様にはまだ暫くこのことは黙っておこう。


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