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デスゲームから始める絶対内定  作者: おでん信用金庫
プロローグ 説明会
1/4

#1 就活解禁

就活生必見!


 目を覚ますと、俺は薄気味の悪い小さな部屋にいた。見覚えのない空間だ。家具もなければ窓もない。部屋というよりはむしろ倉庫と呼ぶほうが適切だろうか。


 いかんせん何もない部屋だ。小さな部屋に、男が1人・・・状況を確認する術はなに1つなかった。しかし、状況はすぐに理解することになる。天井にあるスピーカーから聞こえてくるアナウンスによって



「おはようございます、就活生の皆様。これより、()()()()()()()()()()()を開始いたします」



 目覚ましというにはあまりにも小さく、あまりにも現実離れしたものだった・・・





-デスゲームから始める絶対内定-



プロローグ①


#1「就活解禁」




―――――


―――





数週間前 東京



 俺の名は「(あおい) 千春(ちはる)」、都内の大学に通う大学3年生だ。大学生と聞くと「あら、若いわねぇ。楽しいでしょう、大学生活?」と近所の人によく言われる。結論から言おう、全然楽しくない。



 大卒の人も大学生になる前の人も、1つだけ肝に銘じておいてほしい。大学なんて遊びたい奴が行く所だ。俺のように平凡を望む人間からしたら、ただの苦痛にすぎない。



 では、なぜお前は大学に通っているかといわれると、これからの人生を見据えてのことだ、としか言いようがない。今や社会は大卒を求める時代、高卒よりも大卒のほうが待遇がいい。それだけの理由だ。それ以外に大学に行く意味は無い。




 「葵 千春」・・・名前こそ青春を謳歌(おうか)していそうな雰囲気に満ちあふれているが、残念ながらそれは名前負けというものだ。現実は、友達もいなければサークルなんてものに所属したこともない面白みのない男だ。ただひたすらに単位を取るために日々勉強をしているにすぎない。



 別に大学生活を謳歌している人間を羨ましく思うこともしない。他人は他人、自分は自分だ。謳歌したい者だけ勝手に謳歌していればいい。俺は平凡に生きる。周りに迷惑をかけているわけではないのだから、他人からどうこう言われる筋合いはない。





 さて俺の(つたな)い自己紹介はそれくらいにしておこう。季節は春。月日はいつの間にか3月を迎えた。


 極めて憂鬱だ。何故かはおおよそ予想がしやすいと思われる。大学3年生は3月に突入すると、とある壁に直面する。そう就職活動、いわゆる「就活」が始まるからだ。



 3月1日より就活が解禁され、ここから本格的に就活がスタートするといっても過言ではない。この日より就活生は、やれエントリーだやれ説明会の予約だを強いられることになるのだ。



 そして3月第1週目の週末には、「合同企業説明会」なるイベントが開催される。1つの会場に多くの企業が出展し、就活生はそれぞれ企業のブースに出向き、企業のありがた~いお話を聞くのである。無論、俺も行った。入学式以来ほとんど着ていないスーツを身にまとって。3社くらい回った時点で肩が痛くなって帰った。



 説明会はしんどい。人が多くて気持ち悪いし、企業の話も長ったらしい。一応メモは取ったが、ありきたりな内容しか記録されていない。いずれも企業のホームページを見れば書いてある情報ばかりだった。





 3月上旬、これらの初動を終え、俺は極めて冷静な気持ちになり思った。




就活したくねぇ―――




 「就活したい!」などと胸を張って言える人間などごく稀なものだろう。ほとんどの就活生が就活をしたくないと思っているものだ。彼らは自分の将来に向けて、渋々行動しているにすぎない。



 だが俺は少し異例で、本当に就活をしたくないのだ。就活したくないと主張しながらもやるべきことはやっている就活生とは違って、やるべきことすらやらないという確固たる意思を持っているのだ。




 これまで自分の将来について真剣に考えることなんてなかった。就職のために大学に入ったとはいえ、就活のことなんて一切眼中になく、ただその日その日を生き延びることばかり考えて過ごしてきた。



 しかし今は現実と向き合う時だ。明日やればいい、なんて通用しない。その義務感や将来への不安が、俺から就活をする意欲を奪っていく。やがて俺は、就活はおろか、働きたくないとすら思い始めてしまった。



 そしてそれから1週間、何もせずオンラインゲームに興ずる日々が続いた・・・


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