これからの責任
結論から言うと、人間は勝利した。
ストップを知らなかったから。心を持っていなかったから。
私が生きている間に経験するとは思わなかった大戦争は、思い出したくもないほどの惨事は、およそ八年間も続いた。
もしかしたら、運よく隠れとおせたのがだれもいないわけではないのかもしれないけれど、逃がした子どもが復讐に来るのだから甘い考えではいけないと、全てが殺し尽くされた。
見つかった妖は全て殺された。精霊も全てが殺された。
前と後とで、随分と変わったものだと思う。
だって妖と精霊が、歴史の中の存在に変わったのだからね。そして動物たちが人間に従わなくなった。
この言い方だと少し違うのだろうか。
従わなかったというよりも、人間に従った動物は全て死ぬことになったと言った方が、厳密には正しいのだろう。
これだけのことをしているのだから、もちろん、人間だって被害が出なかったというわけにもいかないだろう。
明らかな加害者でありながら、被害と言うのも違う気はするが、決定権を持たず抗う選択肢が与えられないままに死んでいった市民たちなら、被害者の部類にしても構わないだろう。
私もあなたも、直接、戦争に赴くようなことはあろうはずもなかった。
私の友人たちも家族も、みんなそうだった。
貴族だから。学者だから。
貴族の中でも戦争消極派、学者の中でも多くは文系の学者たちは、どうやら戦地に送られたようであるけれど。
私は生きている。
何もなくなった世界で、だれもいなくなった世界で、広さが寂しさを感じさせる、哀しく腐った世界で。
それでも私は生きなければいけない。
生き残ってしまったから、犠牲の上に救われてしまったから。
こんなことなら、私も一緒に死んでしまえていたら……
言えるはずがなかった。生きる責任があった。