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醜悪な始まり


 変わりたくないと思うのは、私の勝手、私のわがまま。

 抗う力など持っていないのなら、大人しく従うのが筋というものであり、道というものである。そういうものなのである。

 時代が変わるときには、いつだってつまらない”正論”をまき散らすテロリストがいて、そうなりたいわけではない私としては、何を望んでいるのかすら明らかにできなかった。

 罰せられても主張を曲げず、つまらない信念のために死ぬ。そこまでするつもりはないのだから、なんて愚かしいのだろう。


 手遅れになる前に気付ける人間であったのに、一般人でも敏い人なら気が付くだろう今まで来て、やっと何か動く理由があろうか。

 もし動くつもりがあったのなら、ずっと前にしている。

 それをしなかったのは、思うだけ、行って口だけ、それ以上にまで行くつもりは少しだってないということだ。

 悪いこと、戦争はしたらいけない、そう教わったから言っているだけで、本当は私もその残虐性をわかっていないからというのもあるだろう。

 恐怖も不安も現実味も、少しだって感じていなかった。


 もう違和感が拭えなくなっていて、それでもただ見ていたうちに、遂に始まってしまった。だれにも止められないところまで来てしまっている。



 やはりと思う中に、驚きがあった。

 襲撃を受けたのは、精霊たちが暮らしている領域なのだという。

 襲撃をしたのは、人間ではなくて動物たちなのだという。

 狂ったように突撃して、ガスのようなものを放ち、どちらも死んでいった。

 私はそこまでの情報を聞き出したが、多くの人はそんなことが起こっているだなんて夢にも思っていなそうだ。


 つまり、そういうことなのだ。

 それはかなり選択を誤っているように思えるのだけれど、そういうものでもないのだろうか。何か他に思惑があるのだろうか。

 争いごとなど経験のない精霊は恐れるに足らないと判断して、実験代わりにしたのではないかと私は思ったのだけれど、まさか……ね?

 反撃をされたときの対策として、人間は手を下さなかった、そういうことではないんだよね?

 そこまで馬鹿だとは思いたくなかった。


 私なら正しく国を導けた、世界を導けた、そんな大それたことは思わない。

 私は私の選択を間違っていたとは思わないし、誇りを持っているけれど、持っていた力を手放してしまったという惜しさが湧いただとか、そんなはずはない。

 だけど、だけど! 私の想定が事実なら、いかにひどいことか!

 それなのに、今でも私には何を感じることはできなかった。

「苦しむ人がいなくなるように、科学は必要なんだよね」

 呟いたあなたに、何も答えられなかった。



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