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残酷な時代の変化


 話を聞いてみれば、工場で使うものらしいとしか、あなたは詳細を知らないらしかった。

「人力ではどうにも大変だからと言って、困っている様子らしかったから作ったのだけれど、いけなかったろうか。できるだけ条件も満たして、注文に寄せたつもりなんだけど」

 そう言うくせに、あなたは何を頼まれたのか、その条件をよく憶えていないのだという。

 嘘を吐いているだろうとは思えないので、本気であなたはそう思っていて、本気であなたは忘れてしまっていて、それ以外のなんでもないことがわかる。


 理由は大いに尤もだ。

 こじつけて、戦争をしようとしているなどと、言い掛かりをつけて責めようことなどできるはずもない。そうしたら、過激派は私だ。

 どう考えてもおかしいというようなところはなく、そのはずなのにもやもやした、違和感のようなものはなくなりそうもなかった。

 一体私は何が気に入らないというのだろう。



 一旦、その違和感を忘れて三年が経った。

 いつの間にか馴染んでしまっていたのか、すっかり私も違和感なんてものは感じなくなってしまっていたのだが、それを再び感じることがあった。

 それを感じたら、三年も前の違和感というものが、また蘇ってくるのであった。すっかり忘れていたくせして、思い出したら忘れられなくなるのだ。


 これはさすがにおかしいと、そう言えるくらいに、理由が無理矢理になって来ていた。

 それらしい理由を今でもつけて、研究をさせるために偽っているようだけれど、よっぽどの世間知らずでもなければ容易に気付く。

「僕が学生として習っていた頃には、完全に毒だと思われていたんだけど、今では食事に用いられるようになったんだって。でも美味しくないから、美味しいものになるよう科学技術で誤魔化すだなんて、なんとも変わった話だよね。時代は変わるってことか」

 これほどの人じゃなければ、笑って協力などしていられない。


 注文をしているのは、だれか、あなたがどのような人か知っている人かもしれないね。

 心から言葉を信じられるあなたには、そのように言えようはずもなかった。

「うん、時代は変わるからね。あなたも気を付けるのよ」

 私には、精々こう言うことくらいしかできなかった。


 嫌な予感がしてならない。根拠があるわけではないけれど、確信があって、この嫌な予感というものが真実に思えてならなかった。

 時代は変わる、なんて残酷で、この嫌な予感をよく表した言葉なのだろう。

 時代は変わる、あなたが持っている言葉と、私が持っている言葉は全く違うのだろう。

 変わる時代に着いて行かなければいけないのだろうか……?



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