表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

私の知らない何か


 もしかしたら、私が探しているものというのは、ずっとあなたが私にくれていた温もりなのかもしれなかった。

 気付いていないふりをしていた、気付かないわけのなかった、あなたの温もりというものだったのかもしれない。

 こうしてみると、何も知らないふりをして、私はいくつもの嘘を並べていたのだ。罪を背負っていたのだ。

 それどころか、いくつもの罪を作っていたのだ。


 だけどそれでも、私はあなたの温もりを求める。

 私の体はそうしてしまうの。

 今まではこんなことなかったのに、いなくなってしまってから、苦しくて苦しくて堪らなくなるんだから、不便な体よね。

 それだって、体は何をしてもあなたの温もりを追い求める。


 気が付くと、私はあなたの隣を望んでしまっていた。

 いつの間にか、この手はあなたへと手を伸ばしていた。

 あなたがいられなくなったこの世界に、私はまだいなければならないのだというのに。あなたの分も、いなければならないのだというのに。

 求めないではいられなかった……。


 あちらこちらにあなたのものが散らばっていたはずの部屋は、あなたが持ってしまったかのか、綺麗に片付けがされてしまっていた。

 何も私には残すまいとしているようだった。

 探しても、探しても、どんなに荒らしたって、私はあなたが残してくれた何かが見つからないの……!



 ”何か”ごと、あなたはいなくなってしまったのだろうか。

 探したって最初から無駄な話で、あなたが残してくれたものなんて、どこにも存在しないのではないだろうか。隠されているのではなく、存在しないのではないだろうか。

 考えて、不安になって、胸が痛くなった。

 いつだって抱き締めてくれたあなたに、突き放されてしまったかのような気分だった。


 それでも諦めきれなくて、痕も残さず泣き暮れた私は、時間の流れさえも知れない楽園に閉じ込められたまま、遂にその手掛かりを見付けた。



  それは私の知らない何かだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ