私の知らない何か
もしかしたら、私が探しているものというのは、ずっとあなたが私にくれていた温もりなのかもしれなかった。
気付いていないふりをしていた、気付かないわけのなかった、あなたの温もりというものだったのかもしれない。
こうしてみると、何も知らないふりをして、私はいくつもの嘘を並べていたのだ。罪を背負っていたのだ。
それどころか、いくつもの罪を作っていたのだ。
だけどそれでも、私はあなたの温もりを求める。
私の体はそうしてしまうの。
今まではこんなことなかったのに、いなくなってしまってから、苦しくて苦しくて堪らなくなるんだから、不便な体よね。
それだって、体は何をしてもあなたの温もりを追い求める。
気が付くと、私はあなたの隣を望んでしまっていた。
いつの間にか、この手はあなたへと手を伸ばしていた。
あなたがいられなくなったこの世界に、私はまだいなければならないのだというのに。あなたの分も、いなければならないのだというのに。
求めないではいられなかった……。
あちらこちらにあなたのものが散らばっていたはずの部屋は、あなたが持ってしまったかのか、綺麗に片付けがされてしまっていた。
何も私には残すまいとしているようだった。
探しても、探しても、どんなに荒らしたって、私はあなたが残してくれた何かが見つからないの……!
”何か”ごと、あなたはいなくなってしまったのだろうか。
探したって最初から無駄な話で、あなたが残してくれたものなんて、どこにも存在しないのではないだろうか。隠されているのではなく、存在しないのではないだろうか。
考えて、不安になって、胸が痛くなった。
いつだって抱き締めてくれたあなたに、突き放されてしまったかのような気分だった。
それでも諦めきれなくて、痕も残さず泣き暮れた私は、時間の流れさえも知れない楽園に閉じ込められたまま、遂にその手掛かりを見付けた。
それは私の知らない何かだった。




