1話 隠王
「こちら特殊駆逐迎撃班 現場へ到着。と同時に 鉄の隠王 を発見しました。A班 B班 C班とともに交戦を開始します。」
「やっと来たか…。待ち侘びたぞ、能力省の戦闘員。」
「どういうことだ。偶然見つかった訳でもなく自分から姿を晒すとは」
「何かおかしいか?私は幾度となく非隠醒者の前に姿を現してきたぞ。」
「まぁ、いい。話が通じるようなら聞こう。何の為にわざわざ我々が来るのを待った?」
「能力省の戦闘員は能力に関して詳しく、ある程度の力はある。だから私は貴殿らを相手に取り、これからの対策につなげようとしているのだよ。」
「戦う前から生還することが前提の話をするとは余裕だな。」
「あぁ、貴殿らと幾度かこのようなことをしてきているが、まるで何も変わりもしない。能力に関して少し知識を持っているだけではないのか?結局、貴殿らは能力を使いコソ泥や、小規模な傷害事件を起こすような隠醒者程度にしか対応できないのではないのか?所詮貴殿らは非隠醒者の中の高い地位を獲得しているだけの存在なのだろう。」
「なら、そんな雑魚も同然の人間を何故相手にするんだ?」
「私が姿を現せば貴殿らは確実に寄ってくるだろう?私は定期的に貴殿らの仲間を減らしに姿を現しているのだよ。」
「……そうか。もういい。目的はわかった。話は終わりだ、お前が楽しみに待っていた殺戮とやらを始めて見せろ。」
「貴殿には何か冷徹さのようなものを感じるが、どこまで冷静を保っていられるか楽しみだ。」
「A班 B班 C班 武器は構えろ。各班長に伝達、これより 鉄の隠王 との戦闘を開始する。この戦闘開始以降の指示は各班長に任せる。」
「了解」 「了解」 「了解」
ガンズ・ヴォルツによるこの戦闘開始の指示と同時に、今まで動かなかった、 鉄の覚王 は動き出した。
「では行くぞ。」
鉄の塊のような外見をしている鎧越しに微かに聞こえるその声は
今までの会話の時とは違う殺意の込もった声だった。
(来た。速いな、あの図体でこれほどの速度!やつは武器を持っていないのか?まさか…、この場で錬金を使う気か!)
突如として付近の建物の一部が削れていき、 鉄の覚王 の元に吸い込まれるようにして動くのが見えた
削れた建物の微粒子が鉄の覚王の手元で再び形を
「総員!離れろ!」
形成させ、横に腕を振るのと同時に瞬時に大きな剣ができたのだ
しかし、そのことに気がつけたのは戦闘中の班員のうち各班の人間とガンズ・ヴォルツを合わせた13人の内たった7人だけで、他の者はもう既に体を大きく切断され、息を引き取っていた。
「な!?C班全滅!!」
「A班の班員、B班の班員、各1名ずつ死亡!?」
「私の能力のことも出回っているだろうに1回目の攻撃だけでこうなってしまうとは、過去1番で弱いかもしれないな。」
(こいつの能力の錬金、近くの物を物質に瞬時に変換し、鉄へと変換する能力…)
「撃てぇ!」
ババババババッ
大きくできた隙を突いた発砲は無惨にも意味をなさず、ただ大きな鎧に弾かれるだけであった…
(何っ!?銃弾が通らないだと!?待て、こんな奴にどうやって銃で勝つんだ?不可能だ。
剣も持たされてはいるが実行しなくてもわかる、確実に剣は鎧に弾かれて終わりだ。)
「では、次で終わりにしようかな。」
鉄の覚王 は自身気にそう言った
(まずい、次は何が来るんだ!?勝ち目は無いが背を向けても死ぬのは見えてる。じゃあ、どうするか…?)
「もういい、最初っから隠す必要なんてなかったんだ、舐めていたのは俺の方だった…」
バァァァァン!!
「ん?」
「ヴォルツさん!大丈夫ですか!?」
ガンズ・ヴォルツに突如として雷が落ちたのだ。
「戦闘班に告ぐ…とっとと帰れ、能力省に帰って、勝ち目が無いから帰ってきたって言って来い…」
「なっ!?」
雷が落ちたのを付近の人間は全員見ていた、見間違えと思うほどにガンズ・ヴォルツはピンピンしていた
「聞こえなかったのか?とっとと走れ!!」
そう言い放つと、各班員は動揺を隠せずとも鉄の覚王との交戦を中断し、走って能力省に向かった。
「今、貴殿に雷が落ちたのは気のせいか?」
「気のせいじゃないか?俺を殺して見せてくれよ。」
「逃げられたのは性に合わないが、許してやろうあまりにも可哀想だったからな。」
「おい、無駄話はとっくの昔に終わってんだよ、とっとと錬金でもなんでもして俺を殺してみろって言ってんだろうがよ!」
ガンズ・ヴォルツはそう言うと 鉄の覚王 に向かい走った
「向かってくるか、そんなに死にたいなら、死なせてやろう。」
また付近の建物の一部が削れていき、形を形成する、
「さっきよりも、大きな錬金を見せてやろう。」
濃くはっきりと見えるほどに大きく形を形成し
「人生の最後にふさわしい大錬金術を此処に…」
形成していたものは瞬時に形となり、大きな針を四方八方に何発も伸ばしたのだ
しかし、 鉄の覚王 には見えていた。
大錬金術を完成させた瞬間に目の前でガンズ・ヴォルツが腕を前に突き出し、指で大きく音を鳴らしたのが。
「避けることなどできないはず。判断力が早く、全班全滅にはならなかったな。善戦したな…」
「勝手に殺すな、イカれた化け物が…!」
「!?」
「鉄は電気を通す。知ってるよな?」
「なんだこれは!?」
鉄の覚王 の周りには光の線が自由に移動しているのが見えた。
「どこだ!?」
「さっきまで冷静だったのに、今ではなんだ、動揺してるじゃないか。」
「貴殿、まさか…」
「電気は熱にも変わる。」
「姿を現せ」
「俺は、いや…」
「俺の…」
「!?」
2回目 大きな指で立てた音の瞬間に 鉄の覚王 の目の前に現れ
「俺の能力は雷電だ。」
「何だと!?」
光速で打ち込まれる素手での攻撃
しかし、その拳には常に光が帯びている
そう、彼もまた隠醒者であった。
あとがきです。
お久しぶりです。香風です。
完全にほったらかしてたので、続きです。
最近あまり時間がなくて失踪するところでした。
うp主 失踪シリーズ作品にならないようにゆっくりと進めていきたいので
数少ないであろう読者さんにはご迷惑をおかけします。




