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情報収集と商人ガチャの成果

 それからも観光がてら、行き交う人々に話を聞いてきた。

 それらをまとめると、こんな感じだ。



 この街ユーデンブルクは比較的平和な街で、ここから西へ行きサイナン砂漠を越えた先にあるアルスタシア公国とそのまた向こうのワイリアーモン帝国は戦争中で、拮抗状態にあること。



 東には魔法の都、マギアルカ魔法連合の首都ユグドラシルがあること。

 そこは魔法の都であると同時に学問の都としても名を馳せており、今現在の資料は勿論のことながら数千年前の古い文献なども保管しているという。



 北にある極寒の地、クシャルベーカー大国は獣人族が多く住まう国で、転生者の存在をいたく嫌っており、国が力をあげて抹殺に動いている過激な国であること。どうも、昔現れた転生者が獣人を魔物だなんだと言って狩りをしていたことに起因するらしい。


 アホなことして無関係な俺にまでその影響与えやがって、迷惑考えろってんだよ、全く。



 そして、南には南国のリゾート地として名高いフェンリッセルという街があり、観光のピークを迎えていると言うこと。エメラルドグリーンに輝くその海は他の地域の海とは透明度が段違いらしい。


 俺の中では日本で言う沖縄みたいなものだろうかと勝手に想像しているけど、もしそうだったら一度は行ってみたいな。



 最近は魔物の動きが活発で、物流にも影響が出ていること。


 時間単位は日本と同じ24時間、ただ1年については異なって区切りよく400日。春夏秋冬は地域によっては存在していない地域もあるが、今は春だということ。


 言語については今話している言葉が大陸共通の言語になるらしい。俺としては普通に日本語を話しているだけのつもりで相手に話が通じていたから、まぁいいかと思っていたけど、そこらへんは転生時に上手いこと神様が変換してくれたのだろう、たぶん。 


 あと、貨幣についてだが、すごく後悔した。

 貨幣価値についてよく知らないままあのルイとかいう商人のところで買い物をしたわけだが、すごく後悔した。


 この世界の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の四種があり、これらは話を聞く限りそれぞれ日本円になおすと、十円、千円、五万円、百万円となるらしい。

 すなわち、あの姑息な商人が要求してきた額は文字通り百万円だ。


 今回当たりしか引かなかったから結果的には良かったものの、普通に考えて引くことはない額だ。

 ガチャガチャに百万円使う人がいるか?ってことだ。


 けど、もうお金を使って商品ももらってしまった。

 アストレアもプレゼントには喜んでいるし、それを奪ってまでしてお金を返してもらうのはなんだか違うと思う。


 言うて、あと白金貨九枚は残っているわけだから良しとしよう。


 と言うか、後金の一部として渡す額ではないような……。 

 流石は侯爵と言うのか、何と言うのか……。


 俺、千万円も持って街をぶらぶらしていたんだな。普通こういう金額ってジュラルミンケースとかそういうのに入れて大層大事そうにして持ち歩くべき額だろ……。

 それをただの小袋に持ち歩いていたなんて……。


 すられていないからいいものを……。

 けど、これは知らなかった俺が悪い。反省しよう。



 まぁ、街を回って分かってきたのはこんなところだ。

 あとは与太話とか、人によって言ってることが違うような確実性に欠ける情報等々。



 そうして、屋敷に戻ってきたわけだが、


「貴方たち、こんなに希少なものをどこで手に入れてきたの……」


 サラに呆れられていた。


「そんなにすごいものなのか?」


「ええ、すごいなんてものじゃないわよ」


 それから、説教にも似た説明が続いた。


 これはこうで、こういう効果を持っていて、けれど、実在は危ぶまれている存在だとかそんな感じで詳しく説明を受けた。



 要約するとこんな感じだ。


・精霊龍の卵

 精霊という魔力の塊のような生命体と龍と言う無尽蔵の力を持つ存在のハーフ、精霊龍の卵。だが、精霊と龍その性質の相反する者たちがの間で成り立つ子供などありえないということで伝承の類とされており、その実在は信じられていない。過去に勇者が引き連れた眷属の一人に言葉を話す精霊龍がいたと言い伝えられている。正直孵化してみないことには分からない。


・海底の宝珠

 深海に棲むと言われる人魚族、彼らと対話するために人族に贈与された宝珠。この宝珠は海に近づけば光を増し、ある魔法をかければ人魚族から使者が現れ、海底都市アトランティスへと向かうことが出来る。


・グロウリング

 育成が加速する。この指輪は装備した者のパーティ最大十名までの成長を促す。魔物等を倒した時に得られる経験値が三倍になる。


・虹海鱗の首飾り

 幻海龍リヴァイアサンの虹色に輝く鱗で造られた首飾り。リヴァイアサンは海の守り神とされ、その力を宿した首飾りは海の真実を見せる。


・天仁の羽衣

 天族が着用したとされる羽衣。その羽衣には天族の長ユリウスが加護を施しており、それに守られた者は幾度もの変遷を見守ることが出来る。


・ユリウスの弓

 天族の長ユリウスが使ったとされる弓。その弓で放たれた矢は千里先をも射抜くと言われる。だが、それを使いこなすだけの目を持った者がユリウスしかおらず、ユリウス亡き後では使いこなせる者がいなくなったと言う。


・ハマの封書

 魔物狩りのハマと呼ばれ、幾千、幾万もの魔物を屠ってきたハマが残したとされる封書。そこにはハマが編み出した戦闘技術と魔物を狩る為の知識、その神髄が記されている。


・ロイヤルハニー

 数十年に一度生まれる全蜂種の長クイーンビーの巣から取られた蜂蜜。その蜜は絶品で、食べるだけでステータスを向上させると言う特上品。ただし、クイーンビーの巣の警備は厳重で、正規軍の一個大隊が討伐に動いてようやく突破できるほど。


・魔法のポーチ

 腰にベルトのように巻きつけて吊り下げるポーチ。その中には無尽蔵に物を詰め込むことが出来る。物の保管状態についてはポーチが自動で判断し最適な状態で保管する。ポーチの口より大きな物を入れるときはポーチを近づけて、収納せよと呟くと一瞬で飲み込む。物を取り出したいときはその物の名前と解放せよと呟くといい。ちなみに中身を忘れてしまったと時は中身を表示せよと呟くだけで閲覧できるという。


・タマノミコシ

煎じて飲めば不死になると言う、ブラックが探していた薬草。どのような傷であろうと、たちまち治してしまうことが不死の象徴とされる由来。実際、不死になるかは不明。


・剣聖の血“レイズフォンブレード

 伝説になった名もなき英雄、剣聖と呼ばれた彼の血が溶かし込まれた剣。その剣は彼の魔物を狩るその魂を受け継いでおり、魔を祓えば祓うほど成長する力があると伝えられる。


「どれもこれも、とんでもない逸品ですね」


「そう、その伝承が果たして嘘か真か、それにこれらが本物かなんてわからないけれど、本物であるとす

るなら、相当な代物よ」


 一体あの商人何者だ?

 あそこまで落ち込むってことはそれなりにこの商品に自信を持っていたのだろう。あの表情が嘘だとは思えないし。


「その商人、顔と名前分かる?」


「顔は蜥蜴のような緑色の皮膚をしていたとしか……、ああ、右頬に十字の傷があった。それと名前はルイ・フェルナンドって言ってた」


「アルフレッド、その商人すぐに追って。今日を逃すとそのまま夜逃げされる可能性がある」


「はいよ、何としてでも捕まえて見せますわ」


 アルフレッドは物々しい表情をして、部下を数名連れて走って部屋を出て行った。


 こりゃあ、大ごとになってきたな。


「そんなにまずい感じ?」


「まずい感じね。君たちが手に入れた物は神器と呼ばれる逸品よ。これは私の勘だけど、どれも本物。こんなもの一介の商人が一つの店舗に揃えられる品じゃあない。嫌な予感がするわ」


 正直実感がわかない。


 確かに、これらが何かすごい力を秘めているというのは直感的に俺も感じる。けど、それがそこまですごいものなのか、それはこの世界をよく知らないから分からない。


 ―――少なくとも、ユリウスの弓とハマの封書、剣聖の血“レイズフォンブレード”は本物じゃろうな。奴らの匂いがする。


 不意に話しかけられたことに驚きながら、俺は聞いてみることにした。


 奴ら?


 ―――我も昔、ユリウスの頭でっかちと剣聖の小童とは殺りあったことがあるのじゃよ。面倒な奴らじゃっただけに良く覚えとる。ハマのがきんちょも昔はかわいげがあったが、そうかそうか魔物狩りのハマなんて呼ばれるようになったのか。


 どうも、アプサラスは彼らと知り合いだったらしい。


 というか、殺りあったって何!?

 肩書き的に二人ともどっちかっていうと、正義側の人間っぽいんだけど、もしかしてアプサラスって……。


―――主が考えるような、我が悪さをしたとかそういうわけではない。ユリウスは自分が正義と認めたことに対してそれが絶対正しいと思っておったからの、ちょいと見解の違いで揉めたのじゃよ。剣聖には何故かよく付き纏われての、あまりにしつこかったんで懲らしめるために相手をしてやったのじゃ。そしたら、次に会いに来たときには自分を鍛えてきての、それを我が軽くあしらう、その繰り返しの過程で最終的に本気で殺りあってただけじゃ。まぁ、この話題についてはもういいじゃろ。


 なんというか、壮絶な過去だ。

 もう少し聞いてみたいところではあったけど、どうもあんまり話したくないみたいだし、とりあえず聞けただけよしとしておこう。 


 とりあえず、それらは本物ということか。

 なんかこの調子でいくと、やっぱりなんだかんだで全部本物っぽい気もするな。


「とはいえ、それは今となっては君たちの物よ。どうするかは任せるわ」


 さっきまでの張りつめた表情はどこへ行ったのやら、にかっと安心させようとこちらに笑ってくれるサラ。


 なんだか、その優しさにほっとしながらも、俺は考える。


 俺の持った運。

 これは相当なものなのではなかろうか。普通はこんなにも童童拍子に何かを引き寄せたりはしないだろう。


 たぶん、どれも相当貴重なものだ。

 武器は正直使ってみないことには……という感じではあるけれど、魔法のポーチとかは非常に便利そうな気がする。


 とりあえず無尽蔵に詰めることが出来るっていうのがいい。

 更には物の保管状態については自動的に最適な状態での保管を行ってくれるという。ということはこのポーチに食料を詰めておけば、食材の長期保管も出来るということだ。


 これはいいものをもらった。

 あとで試してみよう。


「ああ、大切にするよ。じゃあ俺、今日はそろそろ寝るよ」


「おやすみ」


「おやすみ」


 俺はそう言って、サラの部屋を後にした。


明日から平日になるので、次の更新は週末を予定しています。

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