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運のない人生と運のある後生

・基本設定

名前:ユウキ・キリシマ

種族:ハイエルフ

職業:未設定

年齢:16


・ステータス


レベル:1

体力(HP):1

魔素量(MP):27

筋力(STR):1

耐久力(VIT):1

器用さ(DEX):3

素早さ(AGI):3

魔力(INT):10

魔法防御(MGR):10

運(LUCK):0

スキル(ステータス)ポイント(SP):100


[スキル]

不明

[称号]

・転生者

初期設定値にボーナスが生じる。


 うん、なにこれ。


「ゲームのやりすぎで頭おかしくなったのかなぁ、俺」


 そう言って、ユウキ・キリシマ、霧島優輝はこうなる前の出来事を振り返ってみた。




 そう、今日は平日で確か普通に学校に通っていたはずだ。


 高校指定の冬服を着込んで、いつも通り普通に授業を聞いて、放課後は友達と駄弁ってから、学校を後にした。

 

「授業ってどうしてあんなに面倒なんだろうな、ほんと」


 普通の高校生が誰しも一度は思ってしまうかもしれない小言を一人呟きながら、自宅へと向かっていた。


「さて、ちょっとコンビニで立ち読みでもして帰りますかね」


 道端にあったコンビニでざっと雑誌の棚に一通り目を向け、気になった者を手に取って立ち読みする。


 ―――新型ゲーム機体験レポート 没入感の高さに感動した!


 そう大きな見出しで書かれたその表紙には頭をずっぽり覆えるような大きさをしたゲーム機の写真が載せられていた。


 一昔前に世間を騒がせたHMDの後続として現れた新感覚のゲームデバイス。意識そのものをゲームの中に送り込んでプレイすると言うスタイルのそれはHMDの比ではない高い没入感を生み、まさに現実と間違えてしまうほどの出来栄えだった。

 

 親戚がそのゲームの開発関係者だった為、懇願してβテストプレイヤーとして何十時間もやらせてもらったことがあるが、あれはやばかった。


 ゲーム好きとして、こういう情報誌は見逃せないよね、やっぱ。


「やっぱり、最初に剣持って、魔物と戦うのって怖いよな」


 くすくすと少し笑いながら、俺は記事を読み進めていく。



 熱中して読んでいたから反応が遅れた。


 アクセルを全力で踏み込んだのであろう車がコンビニに突っ込んできたのだ。


 馬鹿、嘘だろおい。 


 時速百キロはありそうな勢いで突っ込んできたそれは、運悪く俺を中心に捉えていた。気づいた時には既に手遅れ。


「マジかよ」


 逃げようと動いた頃には体に衝撃が走っていた。


 大質量の物体に高速で衝突され、商品棚との間に挟まれ潰される。


 想像を絶する痛みが俺を襲う。


「ぐはっ」


 車のフロントガラスが真っ赤に染まる。


 あれ、やばい量の血が口から出てね? 


 素人目にも、はっきりと危険な状態だと分かる量の吐血。そして、これまで生きてきて経験したどの痛みよりも鋭く突き刺さる激痛。


 いてえ……、痛すぎる……。


 目がかすむ。

 意識が徐々にぼんやりとしてきて、俺の意識はぷつりと途切れた。



 こうして、俺、霧島優輝は死んだ……はずだった。



 そう、そのはずだった。


 そして、目覚めてみれば、何もないただただ見回す限りに広がる真っ白な空間とご対面というわけだ。しかも、コンビニでの出来事はどこへやら怪我の一つもない。


 おかしいだろ、おい。



 その上、容姿も変わっていやがる。


 背中に少しかかるくらいの男性にしては長いその髪は雪のように白く、髪の隙間から生えた耳は細長く先が尖った形をしている。


 エルフ。

 そんなファンタジーの言葉がすっと出てしまうあたり、俺は大部分の知識をゲームに占められているらしい。


「いやいや、ちょっと待てよ、ほんと」


 自分でも驚きを隠しきれず、思わず叫んだ声に答える者はいない。

 周りには誰もいないのか。


 さて、状況を整理しよう。

 俺は見覚えのない天井を見て、目覚め、周りを見回してみれば何もない空間、見知らぬ自分の姿。しかも、その姿は普通の人間じゃないと来た。


 これ、あれじゃね?

 よくよく小説とかアニメで見かける、転生ってやつじゃないの?


「よく気づいたな、霧島優輝」


 よし、状況説明できそうな人物が現れた。早く、この状況がいったいどういった状態のものなのか問い詰めねば。


 そう思い、振り返った先にはそこには先ほどまでの光景と同じ何もない空間があるだけだった。


「空耳か……?」


「いや、空耳ではない。おぬしには姿が見えぬだけじゃ」


 何もないはずの空間から声が聞こえる。幽霊は信じないようにしてきたが、こう実体験をしてしまうと、なんだか認めざるを得ない気がしてくる。


 しかも、心の声読んでこられたら、尚更だ。


 俺、幽霊は科学的に証明できていないってことから、信じないようにしてきたのにな……。


「幽霊ではない。通りすがりの神様だ」


「俺、神様とかあんまり信じていないんですけど……」


「事実いるのだから、信じろ。まぁ、そんなことは良い。おぬしは儂の気まぐれで転生させることにした」


 マジ?


「マジじゃよ。転生するにあたって、自分のことを決めい。基本設定はある程度入力しておる。未記入のものとSPをきちんと振れ。転生まで時間は1時間やる。余ったら、転生させてくれと叫べば、剣と魔法のファンタジー世界アースガルドへと転生する。質問はめんどくさいからなしで。じゃあの」


「おい、ちょっと待て」


 口早に済ませて、俺のことを放って行こうとする見えない何かに叫び、声を掛けるが、返事はない。


「ふざけるな、もうちょっと説明しろよ」


 返事はない。


「マジで行ってしまったの? おーい」


 返事は……ない。


「……。マジ?」



 返事はなかった。



 そして、冒頭に至る。



「もういいや、どうにでもなれ」


 そう言って、俺は設定の入力に入る。死んでしまったのに、転生させてくれるって言うなら、もう乗っかってしまえっていう諦め。


 駄目かな。

 と言うか、うわぁ……、本当にゲームみたい。名前は既に決まっているのか。


「ユウキ・キリシマ……」


 俺の前世の名前をただ単にカタカナにしただけ。何の捻りもない。

 けどまぁ、自分の名前が変わるっていうのも何だかむず痒いものがあるし、いっかこれでも。


 種族はハイエルフ。


 あれだろ、おそらく。ファンタジー世界で魔法適正がかなり高い種族のエルフの上位種族。

 なんか、恵まれてね?



 次は、職業選択か。


 そう意識を向けると、目の前に職業の一覧表が広がった。


 剣士、騎士、双拳士、双剣士、盗賊、獣使い、魔法使い、魔法剣士、召喚師、治癒術師、破魔師、呪術師、釣師、鍛冶師、漂流師、……etc。


 ふむふむ。

 よし、決めた。


「職業は魔法剣士だ」


 魔法も使えて、剣もある程度使える。そうすれば、少なくとも、ファンタジー世界でも職に困りはしないだろう。


・基本設定

名前:ユウキ・キリシマ

種族:ハイエルフ

職業:魔法剣士

年齢:16


・ステータス

レベル:1

体力(HP):8

魔素量(MP):40

筋力(STR):12

耐久力(VIT):10

器用さ(DEX):6

素早さ(AGI):6

魔力(INT):23

魔法防御(MGR):17

運(LUCK):0

スキル(ステータス)ポイント(SP):100


[スキル]

不明

[称号]

転生者

初期設定値にボーナスが生じる


「ほうほう」


 魔法剣士を選択した瞬間、ステータスが一変した。職業ボーナスといったところだろうか。


 まぁ、こんな感じでいいや。やっぱり、魔法と剣を兼ねているから、多少体力とかが心もとないけど、それは上手いことやれば何とかなるだろ。

 

 あとはSPの振り分けか。

 今度はSPの設定をしようと意識を向けると、SPの説明が出てきた。


「あの神様投げやりな振りして、実は面倒見がいいのか?」


 ―――SPはスキルに割り振る場合は、そのままの数字の量振ることができ、ステータスに割り振る場合はSP×10の分だけ割り振ることが可能です。ただし、スキルはレベル1の段階ではほとんど発現していない為、割り振るとしてもステータスになる場合が多いです。このステータスは生前のものを参考に初期値が割り振られている為、生前にはなかった割り振りも可能です。ただし、このSPは今後のことを考え、残しておくことが出来ます。


 どうしようか。

 そう思って、ステータス欄を見ていると、俺は一つのことに気付いた。


「運0とかふざけるな。地味に前世のステータス参考にしたとか書かれてたけど、俺には運がなかったと言いたいのか」


 つい、かっとなってしまったが、心当たりがないわけではない。


 一日三度は何かしら不幸に見舞われる。


 普通に通学していたら、植木鉢が上から落ちてきたことだってあるし、野球ボールが後頭部にぶつかったことだってある。


 自販機にお金を突っ込めば、大概お釣りは帰ってこない。見計らったかのように、俺の時だけ機能しない。


 磁気定期は急いでいる時に限って、エラーになって改札を通ってくれない。


 折り畳み傘を忘れた日に限って、帰っている最中にゲリラ豪雨にあう。


 ほんの些細なことばかりだが、それが毎日積み重なると思うことがないわけではない。


 挙句の果てに、立ち読みしていたら俺を真ん中にめがけて車が突っ込んでくる始末だ。


 不幸自慢がしたいわけではないが、やはりどう考えてもろくなことがない。

 

「もういい。運に極振りしてやる。運に1000全て割り振る」


 いやさ、前世考えてみようよ。


 彼女いない歴=年齢。特にしたいことがあったり、夢があるわけでもなく、グータラと過ごす帰宅部。別に今の環境を自分から変えようとは思わないけど、変わる機会が強制的に与えられるなら変わりたいじゃない?


 そして、振り返って見れば、不幸なことばかり。


 幸運が降って湧いてくるような俺であれば、こんなことにはならなかったはずだ。暴論だとは分かっているがな。


 だけど、こんな転生で自由にステ振り出来るなら、運と言う自分ではどうにもならない能力値を最大に振ってやりたい。他は努力で何とかしてやれる。けど、運だけはどうしようもない。


 それで、次の生でこそ、幸せになってみせる。



 後悔はない。



・基本設定

名前:ユウキ・キリシマ

種族:ハイエルフ

職業:魔法剣士

年齢:16


・ステータス

レベル:1

体力(HP):8

魔素量(MP):40

筋力(STR):12

耐久力(VIT):10

器用さ(DEX):6

素早さ(AGI):6

魔力(INT):23

魔法防御(MGR):17

運(LUCK):1000

スキル(ステータス)ポイント(SP):0


[スキル]

不明

[称号]

・転生者

初期設定値にボーナスが生じる

・神運の持ち主

???


 運に極振りしたおかげで称号を得たようだ。

 具体的効果についてはなんでか知らないけど、???という表示、要は不明だと書かれている。まぁ、そこらへんはお楽しみってことか。

 

 少なくとも、悪いものではないだろ。

 神運と書いてるぐらいだし、凄まじい運なんだろ……、たぶん。


 まぁ、ステータスとかはこれぐらいでいっか。


「転生させてくれ!」


 俺が叫ぶとほどなくして、意識が遠のいていくのを感じた。


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