狂った記憶は、絶望を紡ぐ
2023年10/31日
通称、真逆のハロウィン
今から80年前のことだ
その当時、世界中が大混乱に陥った
って聞いたけど、本当かな
今では魔法は生活の一部までになっているからなぁ
そんなことを思っていると、校長先生の長ったらしい話が終わった
……ありがとうございました
卒業証書、授与
一組、合田智明
「はい!」
ーー ーー ーー
あの日から80年後のこの日までずっと研究が進められてきた
そして、多くの実験と発見がされた
魔法の属性は
基本属性…
火、水、土、風、無
中級属性…
氷、雷、光、闇
上級属性…
空間、回復、呪、毒、幻惑
超級属性…
時空、自然、精霊、音、聖、
無属性は、厳密に言えば、ただの魔力なので、属性は存在しないため、基本属性ではないのだが、適性が存在せず、誰でも使えるということで、基本属性におさまっている
これらは、威力や実用性ではなく、単純に習得の難しさ、習得者の多さによって決まっている
ちなみに、音属性は、ある限られた一族のみが使っていて、情報の秘匿をしている
そのため、音属性の魔法を使える者は、音の一族と呼ばれていて、その人数は限りなく少ない
また、それぞれの属性魔法の中でも、低級、中級、上級、超級、絶級と分類されている
どの属性にも当てはまらなければ、無属性になり、鑑定や念話などの、戦闘外の魔法が多い
戦闘用だと、探知などがある
そして無属性の中でも、特殊なのが、
精神魔法だ
属性を持たないが、ただの魔力な訳でもない
のだ
精神魔法は、個人、範囲攻撃のどちらもできる
ただ、精神魔法は、感情を操ったり、相手の記憶を好きなようにできるため、使うことは、厳しく禁止されている
まあ、精神魔法の使い手は、これまで、ただ一人しか確認されておらず、その人はもう死んでいるのが、確認されている
また、スキルというのもあるという説があり、憶測のパッシブスキル、アクティブスキルと分類しようとしているが、その存在は、確認されていない
その一部は、既存の魔法を使ってその状況を作り出すことができるため、その存在は否定されている
例えば、空を駆ける空歩という憶測スキルは、空間属性で、足がつく場所を固定し、不可侵領域にすることによって、足場を発現させ、そこを跳ぶ
それを繰り返すことによって、何もない空を駆ける、空歩という憶測スキルとなる
まぁ、風属性によって自分の体を持ち上げることも理論上可能だが、莫大な魔力が必要とされている
他の憶測スキルでも何回検証しても、魔法抜きで憶測スキルの状況を作り出せなかったため、結果、スキルはないということに公表された
ちなみにその当時に、黒い服を着て最強の双剣使いを自称していたある男は泣き叫んだとか何とか
ああ、今更ながらだが、異形の力と呼ばれていたのは、魔法に、階段の先は、ダンジョンと呼ばれるようになった
このへんは、2010年代の小説の名称を使っている
しかし、これらの小説は発売に規制がかかった
魔法やダンジョンがあるとわかった以上、世間にマイナスなイメージを与えやすいからだ
ダンジョンの中では、オークも出るんだから、女性が入りづらくなってしまうだろう
という見解もあるな
多分そんなに関係ないと思うけど
ちなみに、ステータスというのは、存在しているが、名前、レベル、体力、そして魔力
で表されている
力の強さ、動きの速さ、賢さ、物理に対する抵抗力、魔力に対する抵抗力なんてものは、
この世界じゃ存在していない
魔力の量は、ダンジョンの深層でたまに発見される水晶で測る
その水晶に手を触れると、光る
それが何秒続くかで測る
ちなみに俺は12分間だった
この記録は、日本新記録だったようで、
すごく騒がれた
世界記録は13分だが、
魔力は適性と違い、魔力を使えば使うほど上がるため、多分超えられると思う
世界記録保持者はもともと9分だったらしいからな
あ、そうそう
1秒でファイアボールが出せる程度の魔力だから、俺は720発撃てる
いや、撃てるはずだった
適性は、これまたダンジョン深層で、たまに発見される水晶で測る
その水晶は、適性が1以上あるものを数値化してリストのように表してくれる
発表されてない属性があるときは、それが新魔法属性となるため、研究のために誰でも子供の頃に一回は受けることを義務付けられる
俺はそのとき、絶望したよ
だって俺、属性が何も浮かばなかったから
全属性、今までも、これからも、適性は0だってことだ
適性は生まれた時から決まっていて、変動することがないからだ
でもまあ、その代わり、ジョブというものがあった
ジョブを持っていたこと、高い魔力を持っていたことが、適性0の理由なんじゃないかとあいつらに言われた
ジョブを持っていると、ジョブの名が示すことに、大補正がかかる
例えば錬金術士、これは、原子の概念をぶっ壊した
それはなぜか?
魔力と引き換えに、不変であるはずの原子を変換させたからだ
鉄から金へとかね
そのため、この世の中には存在しなかった、新たな金属、ミスリルや、アダマンタイトまで作った
ミスリルは、魔力の伝導率が高く、近接の魔法武器、魔法剣ができたり、
アダマンタイトはダイヤモンドよりも硬く、耐久性があるため、重要な建物などに使われた
例えば賢者、絶対記憶能力を持ちある程度のことならだいたい解決できる
そのため、魔法理論だけじゃなく、化学までも大幅に進歩させた
魔法には、詠唱が必要な理由をイメージと結びつけ、詠唱の簡略化、無詠唱を考案した
まあ、無詠唱では、イメージが落ちるため、威力、速さが落ちてしまうのだが、相手の虚をつくのには、十分すぎる魔法技術だ
例えば勇者、圧倒的なカリスマ性と正義、体力、魔力、魔物に対する特攻がついた
だいたい2.5〜4倍程度のな
その上、勇者のみが使える聖属性を持つ
そんなぶっ壊れ性能のジョブだが、俺のは新ジョブだったんだ
わくわくしたよ、正直
何ができるんだろうってな
俺のジョブは召喚魔法士、略して召喚士だった
でも、それは、俺にとって地獄の象徴となった
俺はそのとき5歳だった
そんなちっちゃいガキの頃に、国立魔法研究所、通称、国魔研に連れてかれた
親から無理やり引き離されてな
あれはもう誘拐だった
知らない間にどっかの施設へ連れて行かれてたのだから
あいつらは、自分らのことを魔法士連盟と名乗っていた
だが、それは嘘だと、ここは国魔研だとわかった
俺が寝たふりをしていた時に、魔法士連盟が子供の誘拐を疑ってきていると、政府から通達があったと話していたからだ
間抜けな奴らだ
ーー ーー ーー
国魔研は、もともと2024年から政府に組み込まれていた、魔法庁に所属していた
魔法庁は魔法に対する思惑と、魔法士、
(魔法を使える人のことなその当時は、誰もが使えるわけじゃなく、魔法士は、少数だった)
の非人道的扱いに耐えかねて、職員の数人らが、他の魔法士と共に、発足10年後に内乱を起こした
その結果、政府はその内乱のリーダーと和解
魔法庁は、魔法士の教育と魔法の秩序を定める魔法士連盟と、政府の下で働く国立魔法研究所に分かれた
ーー ーー ーー
国魔研には、頭のおかしい研究者どもがいて、俺の身体を実験道具扱いした
もちろんそんな非合法なことは60年前ぐらいには、魔法士連盟との間でもう禁止されている
きっとうるさい魔法士連盟に隠れてこそこそと、実験し続けたんだと思う
そこはまさに監獄で、脱走を防ぐため、どこにも逃げられなかった
俺は被験体No.108と呼ばれた
それからの俺の生活は地獄だった
変な機械をつけられ、またあるときは、召喚士だからって魔物、ダンジョンの中にいる異形の生物を連れてきてそばに無理やり行かされた
そんな実験がずっと続いていた
それから10年がたった
どうやら俺は何もできないらしい
その上、全魔法属性適性は0だ
そのため、俺は、期待外れの落ちこぼれと陰口を叩かれていた
俺は、国魔研が無理やり連れてきたくせに、またいきなり国魔研に俺の住んでた近くの準魔法学校に入れられることになった
国魔研のことについて、何の忠告もなかった
ばれてもいいとでも思ってるのだろうか
両親のことを考えながら、家の中へ入った
ちなみに、僕に血縁者は両親以外は全員死んでいる
だからこそ、両親が一番大切だ
ーーどんな顔をして会えばいいんだろうな
意を決して門を開けて入った
だが、そこには、両親はいなかった
洗濯物はなく、冷蔵庫の電源は入っていない
雑草は生い茂り、放置されていたみたいだ
ーー何だ、何かが引っかかる
何となく、胸騒ぎがした
俺は、家の中をくまなく探すことにした
ーーこの10年間、一度も両親のことを忘れたことはなかった
10年前だから、両親の顔はおぼろげだけど
探し始めてから10分、両親の名前が書いてある、紙があった
それは、埃だらけで汚く、ところどころが色あせていた
苦労しながら、読み進めてくと、
ーー息が乱れていく
まず、母さんが病気で倒れて他界した
ーー呼吸が難しいぐらいに
それから、2年前に親父が他界したことがわかった
頭が真っ白になる
まるで考えることをしてはいけないかのように
どこかで、何かがブチッと切れたような音が聞こえた気がした
それはきっと、糸の切れた操り人形
誰かが直してくれるのを待つかのように
それはきっと、糸の切れた釣りの浮き
ただ、運命に流されるだけ
大事な時に、何も知らなかった
何も支えてあげられなかった
それどころか、ずっと迷惑をかけていた
そのくせ、
俺は何もできない
俺には力がない
ーー俺にもっと力があれば、
こんな期待外れの落ちこぼれじゃなければ
自分自身に激しい自己嫌悪を覚えた
吐き気がする
読み進めた最後に
『ーー逃げたとしてもーーー、負けたとしてもーーー、絶対にーーー生きることをーーー諦めないでくれ』
そう書かれていた
「ぅうゔあ、ゔあぁああ、っぐぅあ、…ゔあぁあああぁあああぁあああぁあああ」
涙が出てきた
止まらない、止まらない
悲しみを哀しみを愛しみを追い出すように
悲しみの哀しみの愛しみの涙を流したんだ
不安を誤魔化すように、
今見たことを誤魔化すように
真実を誤魔化すように
現実から目を逸らして、涙で塞いだんだ
ーーもう僕は疲れタヨ
ーー勝てないノニ、抵抗するイミハ何?
ーー早ク、諦メタ方が、楽ダ
ーーだかラ、もう、眠ロウ
ーー後は、任セルね
いつの間にか外では雨が降っている
僕のカナしみを、表すかのように
いつの間にか、外の天気が変わっている
僕の生き方が変わっていったように
いつの間にか、太陽が隠れている
僕の気持ちを、生きる意味が隠れたように
その日、僕は逃げてしまった
その日、僕は負けてしまった
その日、僕は………壊れてしまった