真逆のハロウィン
………ああ、この世界は、理不尽だ
平和、平等だなんて、嘘だらけだ
だってそうだろう?
この世界じゃ、才能は生まれながらにもう決まってる
いや、決まることになった
才能がたくさんあり、良ければ勝ち組、
反対に、少なく悪ければ、負け組だ
まぁ、努力で追いつくこともできる、が、
才能が良い者と悪い者だったら
努力する量はものすごく違う
1日と1ヶ月、とかな
だからこそ、
強者は優遇され、弱者を虐げる
でも、誰も止められない
弱者は惨めに泥をすすり、強者に媚びへつらうか、隅っこでおとなしくしている
それが当たり前で、誰も助けない
ここはそんな世界なんだ
それは、何の思惑もないただの真実だ
それが逆に僕を苦しめた
何度嘘であってくれと思っただろうか?
真実は厳しく、嘘は優しい
嘘は、自分の思い通りになるのだから
だから現実から目を背けた
だから何も変わらなかった
...夢の中では、僕はヒーローだった
色々な人に頼られ、信頼を得ていた
コミュ力が高くて、場を和ませていた
圧倒的な力で悪を倒していた
そして最後はハッピーエンド
完璧なまでのご都合主義
僕は充実した中学生活をしていた
だが、夢から覚めると、
そこにあるのは、いつもと変わらない日常
ーーああ、今日の僕は、何をされるんだろうか
僕は1年間、ずっとずっと、耐えて耐えてここまできた
何度あいつらの手が届かないところに行こうと思ったか
でも、この学園からは逃げられない
ちょっとやそっとじゃ
入れないし、出られない
だから、最初は抵抗したさ
でも、勝てなかった
とてもじゃないけど抗えない
僕はそうそうに諦めた
そして、結果、力が全てなんだと思い知らされた
力…それは何でもいい
全てを従わせる権力、
全てを思い通りにさせる財力、
全てを頼らさせる知力
全てを狂わせる美力
そして、
全てを恐れさせる理不尽なまでの暴力
力がなければ、何もできない
ただ、食い荒らされるのを待つだけ
いつのまにか涙が流れていた
「ははっ、もう慣れたと思ったんだがな。体は正直ってことか」
ーーでも、今日を過ぎれば、ここから外へ出られる そして、幸いなことに、あいつらと同じ高校じゃない
ーー高校では、いい友達をつくれるといいな
朝っぱらから憂鬱になりながらも、
僕は寮の部屋から外へ出て、卒業式の会場へと向かった
……第72回 卒業式を、始めます
ーー ーー ーー
それは突然の出来事だった
2023年10/31日
日本、いや、世界の各地に下へと続く階段が現れた
厳密に言えば下へと向かっているように見えて、他の異次元空間につながっているとされている
なぜなら、
階段の周りを掘っても、何もなかったからだ
それぞれの国の政府は、
すぐさまその場所を封鎖
調査員を集め階段の先へ派遣、
いや、無理やり送り込んだ
そのおかげで、幾つかの犠牲を代償に、
幾つかのことがわかった
1、階段の先には変な生き物がいる
2、それらに知性は見つからなかった
3、それらは、こちらを見ると襲いかかってくる
4、深さはまだ目星をつけられない
5、階段の先には地球には、存在しない物がある
6、なぜか手から炎が出た 少しすると、その人は頭の痛みを訴え、気絶した
(その本人は、手には熱さを感じなかった)
政府は頭を抱えた
なぜなら、調査内容が、あまりにも空想のファンタジーと酷似していたからだ
そのため、政府は、調査内容を隠したかった
しかし、国民は応じなかった
知らないことが怖いのだろう
純粋に興味もあるのだろうが
政府は他の国と、情報交換をした
そのどれもが、ほぼ同じ内容だったが
6、に限り、様々な報告があった
きっとこの情報を公開すれば、大変なことになる
そう思いながらまた、公開しなくても、暴動が起きるだろうと予測した
それにすでに、かなりの正確さで憶測が飛び交っている
これ以上情報操作をしても意味がない
そう政府は決意した
そして、情報を公開し、少しした後、
階段を封鎖するのではなく、事前申請の上で入ることを許可した
それには理由があった
他の国でやっているところがあり、そこへ流れてしまうこと、また、封鎖したままにしたら、暴動が起きた
そして一番の理由は、階段の先で使える6、の事例を解明するためでもあった
今の所、階段の先でしか、6、の異形の力は使えない
だが、もし外でも使えるようになったら?
異形の力は異形の力でしか止められないかもしれない
武器を持っていなくとも、たやすく誰でも人を殺せる
それの予防策が必要だ
そのうえ早ければ早いほど、他の国に対して大きなアドバンテージもできる
そんな思惑を抱えたまま、政府は階段の解明に動き出した