「プロローグ・魔王は倒された!」
青き衣を纏った勇者の前で、魔王は狂気に踊り狂う。
「この世界は悪夢だ! 終わりのない永遠の理想郷! 私を倒してもこの幻想は終わらない! この世界、この物語は夢幻! 我々魔族から見た悪夢は! この世界そのもの!! 現実と空想が入り乱れた永遠に続く無間にして夢現の時の狭間、永劫という呪いの中で踊り続ける虚構の住民よ! ――世界が見た悪夢、人間よ! 貴様らこの世界にいる限り、決してこの呪いは解けない! ふふふふふふふぐくくくくくくハハハハハハ、はははははははっ!」
それは奇々怪々に、闇に覆われた全身で壊れたように叫びながらの咆哮の最中だ。
何を言っているのか、そこにいる勇者たちは理解できない。
しかし、まるで本人もそうであるかのように。
「我らは全て、夢から生まれた無間の住民……全てが咎人……」
意味不明に、慙愧の念を零して、
「我らは……我らは……」
赤い鉄錆を口から吐き出し、魔王は天を仰いだ。
命が尽きようとしている。そこで何を見たのか、突如として微笑み、魔王は幽鬼のよう歩き始める。
そして、
「……あぁ、ようやく、我も……」
無垢のガラス玉のような、瞳に灯った最後の光が消えた。
そして魔王は穏やかに、その玉座に腰掛け眠りについた。