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ABSOLUTEYE  作者: 703
魔神
9/12

思考

-AM7:55 倫間りんま テラスタワー-


レクトが向かっている目的地。

この国の都心〈倫間〉。更に、その

中心部にそそり立つ全長530mの電波塔

テラスタワー。普段は昼夜問わず

空に近いこの名所からの景色を見に

人々がごった返すのだが、今日に限り

タワー内・その周囲に人の気配は無い

まるで、他の国に移ったかの様である。

しかし、人ではない者はタワーに数人

物々しく蔓延はびこっていた。



「…まだ、時間が掛かるか」


テラスタワーの最上部。そこから

眼に見える程の邪気を放出する魔神。

約10分前から到着し、たたずんでいるが

何かする気配は今の所無く、ただ静かに

下界の様子を伺っている。その姿は

本社に保護されていた時とはかけ離れており

声色も若干、幼かった声から深く老獪ろうかい

ものに変化しており、まるで何かに

取り憑かれた様な風貌である。



-数日前-


「ぎゃぁぁ…!ぎゃぁぁ…!」


「…もう少しだ」


病院の様な白く無機質な城。その中を

追っ手から逃れる為、上等な黒い生地の布を

掛けられた赤子を抱えた女性が駆けている。

力のある鋭い眼を持ち若々しい白い肌に

紫に近い長い黒髪を躍らせた

ABSLUTEYEの副社長である。



「ぎゃぁぁ!」


「く…ッ」


赤子が泣く度に、抱える副社長の両腕は

火を付けられた様に赤くただれる。

しかし、外を目指す副社長は歯を食い縛り

決して脚を止めない。

…すると



『他人の子を奪い去るとは

馬鹿げた事をするな…』


朧げな闇が副社長の前に現れ

我が子を奪い返そうと迫り来る。

…しかし


「くだらない夢に子供を付き合わせて

束縛する様な親に返す義理は無い!」


『ほざけ、化物がッ!!』


闇に一歩も怯まず副社長は左眼を紫に輝かせ

赤子を右手で抱えると眼力を左手に伝わせ

城の床に向かい思い切り振り下ろす。


『グウウウ…!』


床の瓦礫が巻き上がり、思わず後退する闇。

その隙に、副社長は床を通り抜け

追っ手をなんとか躱す。



『…だが、何をしようが無駄だ』


闇は逃げ落ちた邪魔者と自身の赤子を見つめ

予言じみた言葉を口にする。




-合仙岳-


「はぁ…はぁ…ッ」


赤子を大樹の近くに寝かせると

流れる山川の水で爛れた両腕を洗う。


「あぅ…」


赤子はそれに気付くと自ら近寄り

不思議そうに川の水を見る。


「ここの山は、気が強い…

お前が本気で泣いても抑えてくれる」


母性のある優しい眼差しで赤子を見ると

懐からハンカチを取り出し、川の水で

濡らすと赤子の顔や手足を拭く。


「ねぅね…」


「私の事か…?大丈夫だ

これくらいの事で倒れはしない」


抱き寄せると、赤子は副社長の顔に

小さな手を当て呟く。その手が

当たることによって顔がまた傷付くが

そんな事は厭わず副社長は微笑を崩さない。

…そして



「さぁ…、少し寂しいと思うが

お前は少しここにいろ」


しばらく赤子を抱きながら合仙岳を歩き

人に荒らされた気配の無い大樹の側に

赤子を置き頭を優しく撫でる。


「…うっ」


「大丈夫。お前の邪気が緩和されたら

必ず私が迎えに来る。少しの辛抱だ」


気配を察し愚図り出す赤子に屈んで

眼を合わせると、少し困った様に言う。

…すると



「…ん」


「よし…いい子だ」


安心したのか、赤子は静かに眠る。

それを確認し呟くと、副社長は

静かにその場を去り本社へ歩を進める。




-それから数日後 合仙岳-


「ジィーーー」



(DOLL、既に完成していたか…

それに、もう居場所まで嗅ぎ付けるとは…)


魔神の毒気が合仙岳の気により

弱まった事を察知し、副社長は魔神の

回収に現れた。しかし、既に追っ手がおり

木陰に身を隠すと、眼を細める。

…すると



「よし…」


丁度近くで今まさに、レクトが教祖を打倒し

焦りつつも安堵した様子が見える。


(レクト…。ヤツまでこんな所に)


更なる遭遇に息を吐く。そう何人も

魔神の事を知られては困るのだ。

…しかし



「ジィ…」


「ッ!!」


偶然にもDOLLはレクトと眼が合うと

興味をそちらに移した様で、探索を止め

レクトと対峙する。



(よし…)


副社長はそれを見計らうと

気配を消しながら、その場を抜け

魔神の元へ走る。


(まだ支社長ではDOLLには敵わないだろう

あの子を連れて、早く戻って来なくては…)


内心では面倒事を押し付けてしまった

罪悪感を抱きながら、風の如く加速する。



-AM9:21 合仙岳 魔神の居場所-


「久しぶりだな」


「あ…」


数日前から急成長を遂げた魔神に

微笑んで声を掛ける。


「え…と、こんにちは…」


魔神の方も前に会った事を覚えている様で

照れながらも副社長に挨拶する。


「お前とは、また話をしたいのだが

今は急ぎでな…すまない」


「え…?」


副社長の眼が紫に輝くと、魔神は

急な眠気に襲われ、その場に倒れ込む。


「やはり、ヤツも元から魔神に邪心を

入れてたわけでは無い様だな」


簡単に意識を失った魔神を持参した

黒い布を掛け左肩に担ぐ。


(次はあのレクトの方だ

私が来るまで、何とか耐えてくれ…)


レクトのいる方を見やると、再び

風の様に山中を駆ける。



-AM9:30 合仙岳-



「やっと…終わりだな…」


「ジ…!」


レクトが息も絶え絶えで呟くと

緑光が輝く左脚が、最後まで凝視する

黒包帯の頭を薙ぎ、遂に決着。



(まさか、自力でDOLLにあそこまで…)


最初に隠れていた木陰まで戻って来ると

直後にDOLLの頭が蹴り取られ

流血してはいるがレクトが勝利していた、

…しかし



「はぁ…はぁ…ッ」


レクトはDOLLの首が取れると

疲労が頂点に来たようで地面に倒れ

眠気に気を失ってしまう。

…すると


-ガガガガガガ…ッ-


首が無いDOLLが起き上がり

火花を散らした両手をレクトに伸ばす。

…が



-ピシュン…ッ-


突如、背後から紫の光がDOLLを貫通し

気の抜けた機械音が出ると、今度こそ

完全に機能停止する。



「やはりまだまだ、荷が重かったか」


血だらけのレクトを見ると

一旦、魔神を下ろし懐から包帯や消毒液を

取り出し、治療を行う。



「だが、大した力だ。カムイが

気に掛けるのも納得だな」


応急処置が一通り終わると、魔神とDOLLを

両肩に担ぎ、レクトを一瞥いちべつし呟くと

本社に向かい歩き出す。




-AM8:00 テラスタワー-


「そうか…あの女はそこまで…」


魔神に取り憑いた闇は記憶を読み取り呟く。

徐々に自分と魔神を同調させ

完全に支配しようとしているのだ。


「純粋過ぎるが故に

余計な感情を入れられてしまったな…」


未だに邪気を放とうとしても

魔神の残り少ない心が邪魔し

身体が強張る。


「まぁ、時間の問題だ…それよりも」


タワーから下界を眺め

こちらに近付く緑の光を見やる。


「残りの守衛DOLLは二体

時間稼ぎには十分だろう…」


迫り来る緑の光を見ながらも

冷徹な表情は崩さない。そして、タワーの

入口に立つ二体のDOLLも

近付いている侵入者を感知していた。



-テラスタワー入口-


「緑ノ眼力ヲ感知…到着マデ残リ2分」


「排除命令受信…侵入者到着次第、排除」


機械音に近い言葉を放つ二体は

間違い無く、最初に遭遇した

一度レクトを死に追いやったDOLL。




-テラスタワーへの道-


「ヤツ等は…!」


レクトも異眼で入口に立つDOLLを

確認するとその姿に凄惨な記憶が蘇り

生唾を飲む。


「やはり最後はお前達か…ッ!」


同時に闘争本能が燃え上がり

それにTRICK・SHOT-Lが反応

更にスピードが増し、レクトを

戦いに近付けさせる。

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