華琳の葛藤
「幸風さん、今日も素敵だったなぁ…。」
幸風が店を出て行った後、華琳は少しぼーっとしながら考えていた。
自分より遥かに年上の幸風。でも年なんて全く感じさせない爽やかな笑みやハリのある声、穏やかな振る舞い…。全てがかっこよくて、華琳は幸風が訪れるたびにドキドキしていた。
「でも、幸風さんは龍だから…。」
自分は人間、幸風は龍。種族が違う者同士の恋愛もカルレシアでは認められているが、それでもその恋が実ることは少ない。
偏見もある中で、幸風が自分の事を好きになってくれるのか…という心配も無いわけではない。
「でも…幸風さんのこと……って、な、ないない!仕事に戻らなきゃ!」
少し変な方向に走って沈んでしまった気持ちを誤魔化すように笑顔を作って、華琳は店に戻っていった。
「そういえばもう季節も夏になるんだよね、だんだん暑くなってきたし服とか色々考えなきゃ。」
華琳は長いメイド服をつまみ上げて呟いた。あと少しすれば暑い暑い夏がくる。さすがの華琳も夏まで長い丈のメイド服を着ていられるほど我慢強くはないから、去年着ていたものに変えようか、新しいものを買おうか迷っていた。
「…着てみて、入らなかったら買いに行こうかなぁ。…多分去年より太ったし。」
少しショックを受けながら華琳はどの店に買いに行こうかをずっと考えていた。