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4章

ここでまた新たなキャラ登場です。そろそろ人数増えてきたので、次回更新時に、登場人物表をつけます。


   3


 館は歩いてもそんなに距離がなかったが、その歩いている間が不気味だった。

 白いがれきが、随分と転がっていた。それも、やはり人の形をしているのだ。

 よく見ると兵士の格好をしている者もいる。

 あきらかに、異常だ。

 もはや、誰も生きていないのではなかいか。

 館に入るまで、四人はとうとう誰一人として、生きている人間には会わなかった。

 マリウスたちはそれを気にして、用心深く進もうとしているのに、ペルセウスが何の警戒もなくどんどん進んでいくので、擁護するようについてゆくしかなかった。


      ◇


 こういう広い造りの館というものは、どの土地でも似たものなのだろうか。

 マリウスたちは、館へ行ってから薄暗い廊下をやみくもに進んだつもりが、迷うことなく大広間へ着いていたのだった。

 途中、やはり誰にも会うことはなく、そればかりか残骸や死体もないのが不審を通り越して、不気味だった。

 明かりをつけているはずの通路の蝋立てに触るとほこりがたまっており、手の平のしわさえ確認するのが困難なくらいだ。


「もう、廃墟なのか……」


 アトンは、薄暗い大広間の真ん中でつぶやいた。


「そんな感じだな。そのうち、その怪物がひょっこり現れたりしてな」


 ホルスは言いながら、身構えた。他の三人も、用心深く方々を見ている。

 そうして、広間の奥まで進んでいたが、何かが現れる気配はない。

 マリウスは、視線をめぐらせているうちに、部屋の最奥、玉座の右側に、絵が掲げてあるのに気づいた。

 近づいてみると、それは随分大きく、人の背丈ほどもある。ようやく慣れてきた目でそれを見上げると、若い女性が、白くふっくらした衣装を着て立ち姿で描かれていた。

 その絵の人物と、視線が合った。

 美しい……いや、可愛らしいというほうがしっくりくるだろうか。

 春の陽気を浴びているような錯覚を感じさせる絵だ。


 これがメデュウサなのだろうか。確かめるためには、ここの住人に会うしかない。


「おい、そちらに誰かいるのか?」


 ペルセウスが声をかけてきた。


「いや、私だけだが?」

「そうか。一つ気配が多いな」

「何!」


 マリウスはすぐに視線を落とした。アトンとホルスも言われて辺りを見るが、気配を察知したのはマリウスとペルセウスだけだった。

 その二人だけは、玉座を見ている。

 直後、何かを踏む乾いた音がした。皆が、玉座を見る。

 そこから姿を現したのは、怪物ではなかった。


「……セレトン領主殿か?」


 マリウスは、気が抜けたようにつぶやいた。紺色の法衣は、薄汚れているし、茶色の髪も乱れてる。普段はこうではないだろうが。言われた相手は驚いているのか、目を見開いたまま、動かない。


「あ……アイカスの……?」


 セレトンが声を発するのに要した時間は、マリウスが五ほど呼吸するくらいあったかもしれない。


「そうです。アイカスのマリウスです。お久しぶりです。この様は、一体どうしたのですか?」

「あ……。あぁ、話せば長くなる。ここに居ては落ち着かないし、危ない。……あいつが知らない地下へ移動してからにしよう。……で、その者は、みな従者か?」


 セレトンは、落ち着かない目で、三人の素性を問うてきた。


「あぁ。こちらのアトンとモルスはそうですが……」


 マリウスは、ちらりともう一人をみた。


「呼んだのはそちらではないのか? 領主どの」

「お……。ひょっとして、ペルセウス殿か? あぁ、あの手紙が、よくぞ届いたものだ……。助かた。もう少し早ければ、残った者も多かっただろうが、まあ、仕方ない……。とりあえず今からでも化け物を退治してくれれば、それで片付くからな。さ、あれがやってこないうちに、こちらへ」


 ペルセウスを見て安堵したのか、やけに饒舌になったセレトンは、四人を手招いた。


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