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12章

お気にいり登録してくださった方、ありがとうございます!!

非常に嬉しいです。

ここから、恋愛モードに徐々に入っていきます~。


「……え?」


 メデュウサはマリウスを一瞬見て、すぐ目をそらし、赤らめた顔を両手で覆った。

 その反応に、マリウスは自分が何を言ったのかを反芻し……。


「あ。いや、その、妻に迎えるためというのではなく、こちらの民として、その……」

「あ……。ごめんなさい。そういうことでしたのね……」


 メデュウサは小さく笑った。


「そういえば、その……お見合いの話は聞いてましたけど、こんな事になっているとは存知ないまま、ここまでお越しになられたのですか?」

「まあ、確かにそうですが、何かが起こっているという程度のことは耳に入れた上で、館まで来ました」

「そうですか……。でも、私は沢山の人の命を奪ってしまいました。それなのに、この国を捨てて自分だけ生きていくのは……できません!」


 メデュウサそういい捨て、マリウスの腰の短剣を抜いた。


「馬鹿な!」


 マリウスは咄嗟にその手をつかんだ。


「生きている資格はありません! このまま、貴方が刺してください」

 とマリウスの手ごと、自分の胸に持っていこうとする。

「駄目だ!」

 マリウスは、手を振り払って、短剣を投げた。それを、アトンが拾い上げた。

「いやぁ、刺して! 死なせて……」

 メデュウサは未練がましく、それを見ながら拾いに行こうとする。

「そなたは……」

 マリウスは、メデュウサの肩を強くつかんだ。

「そなたは、命を絶ってはいけないのだ。ここで起きたことを忘れずに生きていくことで、

本当に許されるのではないのか? 神がそなたを生かしていることに、必ず意味があるはずだ」

「意味なんて……」


 咄嗟に言ったマリウスのことばを、メデュウサはすぐに納得してくれたわけではないようだが、とりあえず剣を取りにいくのはあきらめてくれたようだ。それをみて、マリウスはモルスたちを呼んだ。


「この方を、国へ連れていく。お前たちの馬と……すまないが、私の馬もここへ連れてきてもらえないか?」

「あ、私まだ行くとは……」

「ここに居ても、どうしようもない。今は私の国で休め。それからここを建て直すことをゆっくり考えよう……」

「そんな……」


 とメデュウサはつぶやいて、唇を噛んでしばらく目を伏せていた。


「本当に、それしか方法がないですか……?」


 自分で最良の方法が思いつかなかったのか、マリウスに質問してきた。


「新しい人生だと思えばいい。何なら、私の遠い親戚の娘で、縁組をして妹になったということにしてもいいだろうし」

「そんなこと、勝手に決めて……」

「妻になるのは、嫌だろう?」

 

口に出してから、マリウスは後悔した。もっと上手い言い方ができないのか、自分は。


「い、いえ。嫌とかではなくて、その心構えが……」


 メデュウサが驚いたように目を見開いてから、笑顔で否定してくれた。


「もちろん、冗談だ。私だって、いきなり申し込むほど、あせってはないからな……」

「まあ……」


 メデュウサはくすくすと笑い声をたてた。その顔がとても愛らしかったので、マリウスは慌てて目をそらした。

 こんな時に、するりと適切な言葉がでればと思った。

 同時に、言葉に悩むこと自体はじめてなのに気づいた。


「……でも、私が生きてゆくには、本当にマリウス様の国でお世話になるしかありません。ですが、アイカスで私の名を知ってる方がいないとは限りません。ザウスのこの周辺が私のせいで崩壊したと知れば、皆さんは私を殺しにくるかも知れません。そうなれば、私は殺されてもかまいませんが……」

「そんなことはさせません。私が絶対守りますから」

「そうですか……」

「顔があまり知られてないのなら、先ほど言ったように、親戚として過ごせばいい」

「でも、どうかしら。私、アイカスへ何度かお伺いして、外交の方に挨拶したことありますのよ」

「それなら、そういう者が来るときだけ姿を見せないようにすればいい。あとは、名前を変えてしまえば難はないだろう」

「それなら、何とか……。でも、本当にお世話になっていいのかしら……」

「もちろんです。心配しないでください」


「そう……。なら、マリウス様。私の新しい名前を決めてくださいませ」


「私が?」


「ええ、言い出したのはマリウス様ですし、それにとても博学だとお伺いしております。無難な名前をつけていただいて、これからは粗相のないように勉強もさせていただきたいと思います。それに、ただ置いていただくのでは申し訳ありませんから、小間使いとしてもお役に立てるようにしたいと思います」

「そんなことまでは……」

「いえ。本当に置いていただくなんて、嫌ですから」

「そうですか。そこまで言うなら……」

「ありがとうございます」 


 もっとわがままに育ってきたのかと思えば、この言動。

 小間使いに乗せられてとは言っていたが、本当に神に冒涜を働いたのかと疑うほどの思慮深さだ。

 メデュウサは深々と頭を下げた。

 そちらに目をやって、マリウスは見てはいけないものをうっかり視線と記憶に入れてしまった。


「あ……」


 メデュウサは、マリウスが赤面する様子で気づいたようだ。


「……見えました?」

「いや……」

「見えたのですね?」

「いや、見てない」


 とは言うものの。マリウスの表情からメデュウサが気づいたのだから、言い訳している

のがまるわかりだ。

 メデュウサは胸元を引き上げつつも、なぜか笑顔でマリウスを見上げてきた。


「兄と妹の仲ですから、いいとしましょう。ね、マリウス兄さま」

「あ、あぁ……いや……」

「そのかわり、そちらのお城に着くまでに、名前を決めてもらいますからね」

「えっ……」


 マリウスはその順応さに舌を巻くしかなかった。

 


    ◇


区切りいい終わりのように見えるかもしれませんが、これではまだ恋愛ではありません(笑)続きます。

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