fire house
「それは俺達の装置!」
「いいえ、これは今は私のよ」
アシュリーはブロンドの髪をかきあげながら言った。
「あんたは誰なんだ?」
「だからさっきも言った通りレオナルド・コールドの娘よ!」
「そんなことを簡単に信じろって言うのか?」
「そうよ、私もあなたたちの計画に入れてもらうわ」
「計画?何のことだ?」
クリスは半笑いでごまかした。
「知ってるのよ、あなたたちがしようとしてること。レオナルドの金を盗むんでしょ」
「もし本当にレオナルドの娘なら、なぜ協力したがる?」
アシュリーは装置をクリスの方に差し出し言った。
「あの人は私のことを・・・いえ、家族のことを家族と思ってないからよ」
クリスは装置を受け取り、背を向けて言った。
「帰れ!これは遊びじゃねーんだ」
アシュリーは家の中に入り、ドアを閉めた。
「あなたが私を受け入れるまで帰らないわ」
レオンは二人の顔色を見ながら言った。
「今この子を帰して、もし警察やレオナルド自身に俺達の事を言われたらまずいぜ!兄貴、ここはこの子の言う事を信じて言う通りにしないか?」
クリスは椅子に座り、レオンに言った。
「俺達が自分の父親の金を奪おうとしていることを知っときながら、俺達の前に急に現れ、そして俺達と金を奪うのに協力したいなんて誰が信じる?」
アシュリーはクリスの目の前に立ちある事を知らせた。
「あなたが私を信じれる情報を一つ教えれば考えが変わるかしら?」
「その情報にもよるけどな・・・」
「その装置の中にGPS機能が入ってるわ」
「何でそんな事が分かる?」
「その装置ハッキングできる範囲がせいぜい1メートルくらいでしょ?それはGPS機能の電波が邪魔してるからよ。たぶんこれだと3メートル以内はハッキング出来たはずよ」
クリスはレオンを見た。
「あの商人騙しやがったな・・・」
「商人から買ったの?それじゃ尚更危険ね。GPSでレオナルドの自宅からここまでの道のりは調べられてるから・・・ギャングか何かが来て、もし私が拉致られてギャング達が私を人質にレオナルドにお金なんか要求でもしたらあなた達の計画にも影響が出るんじゃない?どう?これが私を受け入れなければならない理由よ」
クリスは立ち上がり、レオンに言った。
「必要な物だけ車に積めろ!アシュリーは灯油を持って来てくれ・・・この家を燃やすぞ」
「この家を燃やすだって?この家は祖父さんの家なんだぞ!」
「地下には計画のすべてがあるんだ。もし入り口がばれたらすべてがばれちまう。だから家を燃やしてこの入り口を塞ぐしかないだろう」
アシュリーは灯油を持って来てクリス達に伝えた。
「それに燃やしてしまえば、相手は証拠隠滅を図ったと思いこんでここを細かく探らないはずよ。私の隠れ家があるからとりあえずそこに行きましょう」
「レオン分かったか?すぐに仕度しろ」
「兄貴はこれでいいのかよ?」
クリスはレオンの肩にそっと手を置いた。
「祖父さんが死んだときからこうなるとうすうす感じていただろ?金が手に入ったら祖父さんのために新しい家を建てよう、なっ?」
レオンは頷き、地下から設計図や道具を車に詰め込んだ。
レオンとアシュリーは車に乗り、ガレージを開けて家の前で停めた。
家の中にはクリス一人だけ残っている。
「ここには長く居なかった。でも、これだけはいつも感じていた」
クリスはライターに火を点けた。
「ここは居心地がいい。またこんな風な家を建てるから待っててくれ・・・」
クリスは灯油が撒かれた叔父の部屋にライターを放り投げた。
クリスは車に乗り込み、この場を後にした。
家は見る見るうちに燃え崩れていく。
レオンとクリスはバックミラー越しでその光景を見続けた。