鍵を握る者
レオンはある男にハッキングできる機械を所持金すべてを支払う約束で手配させた。
「そいつは信用できる男か?」
クリスはその人物を疑った。
「俺は運送で色んな町に行って噂しか聞いてないが、皆そいつの名前を出したんだ」
「そんな知らない奴・・・」
「今はこれしか方法がないだろ?」
クリスはレオンの勝手な行動に怒った。
「そんな勝手なことしてもしも計画が失敗したら、いやそもそもその男が裏切ったらどうする?」
「これしか方法がないだろ?兄貴には何か良い方法があったのかよ?」
クリスは口を閉ざした。
「とりあえず今はそいつからの連絡を待とう!なぁ兄貴?」
「もし手に入らなければこの計画はすぐに止めにするからな!」
クリスはため息を吐き、鍵をどう手に入れるかの話しをした。
過去の情報番組の録画を見るとレオナルドと記者が銀行設立について対談している映像があった。
それには鉄格子を開けるために必要な金の鍵の話題があった。
二人の話はどうでもいい、大事なのは鍵を取り出した場所。
その時の映像でレオナルドは上着の右内ポケットから取り出した。
過去と言っても人間のいつもの動作や癖は簡単には変わらない。
もし今も変わらないのであればおそらく鍵はまだ右内ポケットに入っているはず。
人は盗まれたくない物を家または自分の傍に置いておきたいものだ。
これは大きな賭けだが、すべて賭けるしか道はない。
そこでクリスはカツラや髭、眉毛、眼鏡などの変装道具を使い老人に変装してレオナルドと直接会って鍵の型を取ろうという作戦を実行することにした。
二日後、街の中心にあるカフェテリアに現れるという情報が祖父さんのメモ帳に書かれていた。
それを参考にその日クリスは変装して向かい、レオンは少し離れた場所から会話できる小型機をクリスの耳に付けて周りの状況を教えることにした。
「兄貴聞こえるか?」
「あぁ・・・」
「兄貴はどこからどう見ても本が好きそうな爺さんだぜ」
「周りに溶け込んでるってことだな。レオナルドは現れたか?」
「いや、まだだ」
二人の作戦はやって来たレオナルドにクリスは帰ろうとしてその場を立ち上がった時にわざとぶつかり、その隙に手に持っている粘土らしきもので鍵の型を取り去ろうという。
スパイでも泥棒でもないクリスに一瞬ですべてを出来るのか不安のままレオナルドが来るのを待った。
しばらくするとレオンが慌ててクリスに伝えた。
「兄貴!来たぞ」
背を向けて座っているクリスにレオナルドが近づいてくる。
クリスはじっとレオンの合図を待った。
カツン、カツンと足音が徐々に大きく聞こえる。
鼓動は早くなり、汗も噴き出る。
「今だ!!」
合図が聞こえた瞬間、クリスは立ち上がりレオナルドの方に体を傾けた。
その時レオンの「あっ」という驚きの声が耳元で聞こえる。
クリスは何故レオンが驚いたのか分からないままレオナルドにぶつかろうとした時、体を大きな手で動きを止められた。
クリスがレオナルドの方をゆっくりと見てみると、体を支えているのが体格が大きい男だというのが分かる。
「気を付けて・・・」とその男が言うとレオナルドの方から近寄ってきて言った。
「大丈夫ですか?」
クリスは渇いた喉で「ほほっ・・・すまないね」と必死に演技した。
レオナルドに護衛が付いているのは当然の事。
しかし、まさか護衛がクリス側に居るとはまさか護衛の方が早く反応するとは思わなかった。
クリスの頭の中は真っ白になり、レオンは失敗を決心した。