散った薔薇
クリスは看守に頼み、セシルを面会室に呼び出した。
「俺は表には出れない人間なんだ、気安く呼ぶな。ここまで遠いんだぜ」
「金が欲しくないのか?これくらい我慢しろ」
「で、電話でも言ってたが・・・」
「アシュリー・コールドという女性を探してくれ。詳しい事はレオンが知ってる・・・」
「それだけのために呼んだのか?」
「もう一つ、あんたはギャングの世界でどのくらいの地位にいる?」
「あ?何言ってんだ?」
「いいから答えろ?」
「そうだな~まぁ上の方だな」
「そこまで来れたのは、何かチャンスはあったのか?」
「まぁ~な、一番はギャング共の抗争で生き残れたのが大きいな」
「なるほど、要は力があるかないかか?」
「そういうことだ。なんか意味でもあるのか?」
「いや別に・・・」
それからクリスの元に一通の手紙が届いた。
中身はアシュリー・コールドについてだった。
クリスは中身を確認すると火をつけ燃やした。
その後すぐにドミニクの所へ向かった。
「やぁ・・・」
「お前さんはよっぽど俺の事が好きなのかそれとも暇なのか?」
「囚人には時間がたっぷりあるだろ」
「ふっそうだな・・・で、話があって来たんだろ?」
「アシュリー・コールドという女性に聞き覚えは?」
「さぁ~知らんな」
「では、リアーナには覚えがないか?」
ドミニクの顔色が一瞬にして変わる。
「どこでその名前を・・・」
「少し調べさせてもらった。リアーナ・ドミニク・・・あんたの娘だな?」
「あぁ、確かに私の娘だ。それがどうした」
「・・・・・亡くなったよ」
「え?いまなんと?」
「俺達とレオナルドの金を狙って、死んだらしい」
ドミニクは立ち上がり、クリス肩を掴んだ。
「なぜ、なぜ!?お前たちと一緒に居たんだ?」
「アシュリー・コールドというレオナルドの娘を装い彼女から俺達に近づいてきた。そしてレオナルドと会った後、音信不通になっていたんだ。娘をレオナルドと会わせたことは?」
「数回会わせたことがあったが・・・・そんな・・・」
「だから、あんたの娘でも直接接触できたって訳か。つまりレオナルドは何もかも知っていながらもわざわざ会ってきたのか・・・すべてお見通しだったって事か」
「レオナルド・・・レオナルド・コールドがやったのか!?」
「それは分からないが、彼女はおそらくあんたのために協力してくれたんだ」
「頼む・・・俺をここから出してくれ!今すぐに!!この手で奴を殺してやる」
「殺すのは無しだ。目的は金だけ、もし殺しが目的ならあんたをここから出さない」
「復讐をするなというのか!?娘が殺されたんだぞ!」
「命を奪うのはよくない。でも、それを理由にまた他人の命を奪うのはもっとよくない。金さえ奪えば奴自身、死と同じくらい苦しむはずだ」
ドミニクはその場にしゃがみ涙を流した。
「約束しろ!殺さないと・・・」
「あぁ、約束する。だから、早く俺をここから出してくれ」
「安心しろ、俺も絶対にここから出ないといけないんだ。弟のために・・・」