死者のナミダ
クリスとレオンは発する言葉に詰まった。
そんな二人を余所にアシュリーはゆっくりと話し始めた。
「私の母・・・リサ・コールドは元々体が弱く、いつも家にはいなかった。病室で一人悲しく重い病気と闘ってた。もちろん私は毎日、母の所へ行ってたわ・・・あの人もね」
「君のお母さんは病気で死んだのか?」
「えぇ、いつものように病院に行って、私が帰った後しばらくして病室で静かに眠るように死んだそうよ」
「その時、レオナルドは?」
「あの男は自分の仕事が上手くいけばいくほど、金に目が眩み家族の事なんか後回しだった」
「なんてヒドイ奴だ・・・」
アシュリーの顔は一変した。
「私から大切で身近な者を奪ったのなら、私もあいつから一番大切なモノ物を奪ってやりたいの」
口を閉ざしていたクリスは「わかった。やろう」と言った。
三人はミゼルシ市から車で約2時間かかるサンガモン塔へと向かった。
ここサンガモン塔は天に一番近い墓地と言われており、ここで眠る者達は皆天国へ行ける言い伝えがある。
クリスとレオンは来る途中で買ったスコップを持ち、アシュリーは懐中電灯を持ってリサ・コールドの眠る墓の前に向かった。
「本当にいいのか?」
「えぇ・・・覚悟はできてるわ」
クリスの持ったスコップが地面に突き刺さる。
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
しばらく掘っていると空から雨が降ってくる。
「雨か・・・まずいな~急がないと」
アシュリーは天を見て言った。
「いいえ、これは雨なんかじゃない・・・これは、ここに眠る人達の涙よ」
レオンはその言葉で少し動揺する。
「なぁ~やっぱりやめないか?」
レオンとは真逆にクリスは一心で掘り続ける。
「もう後には戻れねーよ」
そして、スコップの先端が何か硬いものに当たった。
手で土をかき分けると黒い棺桶を発見した。
それを見た瞬間、アシュリーは両手で口を抑えうずくまった。
「レオン!アシュリーを連れて先に車に戻ってろ」
「あぁ・・・分かった」
クリスは棺桶を開けた。
雨はさらに激しく降り、近場の海は荒々しい波をたて、まるで死者が怒っているようにも感じとれる。
クリスは目を大きく見開いた。
中には人間の形をした骨と胸元に一枚の封筒が置いてあった。
クリスは恐る恐る封筒を手にした。
その瞬間、クリスの腕を骨の手が掴んだ。
「うわっ!!!」
まばたきしてもう一度見ると、骨はビクとも動いていなかった。
「幻覚か・・・」
クリスは骸骨の顔の部分を見つめて言った。
「リサ・コールドさん・・・あなたは死んだ後も何を望んでいますか?復讐ですか?俺達の行為は正しいのでしょうか?教えてください」
雨粒が骸骨の目のくぼみ部分に当たり下へと垂れ流れる。
クリスはアシュリーの言葉を思い出した。
「死者のナミダか・・・死んだ後も涙を流すなんて、人間は死んでも真の幸せにたどり着かないのか・・・」




