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ギブ・マネー・バック  作者: yiyi
12/30

死者のナミダ

クリスとレオンは発する言葉に詰まった。

そんな二人を余所にアシュリーはゆっくりと話し始めた。

「私の母・・・リサ・コールドは元々体が弱く、いつも家にはいなかった。病室で一人悲しく重い病気と闘ってた。もちろん私は毎日、母の所へ行ってたわ・・・あの人もね」

「君のお母さんは病気で死んだのか?」

「えぇ、いつものように病院に行って、私が帰った後しばらくして病室で静かに眠るように死んだそうよ」

「その時、レオナルドは?」

「あの男は自分の仕事が上手くいけばいくほど、金に目が眩み家族の事なんか後回しだった」

「なんてヒドイ奴だ・・・」


アシュリーの顔は一変した。

「私から大切で身近な者を奪ったのなら、私もあいつから一番大切なモノ物を奪ってやりたいの」

口を閉ざしていたクリスは「わかった。やろう」と言った。


三人はミゼルシ市から車で約2時間かかるサンガモン塔へと向かった。

ここサンガモン塔は天に一番近い墓地と言われており、ここで眠る者達は皆天国へ行ける言い伝えがある。

クリスとレオンは来る途中で買ったスコップを持ち、アシュリーは懐中電灯を持ってリサ・コールドの眠る墓の前に向かった。

「本当にいいのか?」

「えぇ・・・覚悟はできてるわ」

クリスの持ったスコップが地面に突き刺さる。

ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ

しばらく掘っていると空から雨が降ってくる。

「雨か・・・まずいな~急がないと」

アシュリーは天を見て言った。

「いいえ、これは雨なんかじゃない・・・これは、ここに眠る人達の涙よ」

レオンはその言葉で少し動揺する。

「なぁ~やっぱりやめないか?」

レオンとは真逆にクリスは一心で掘り続ける。

「もう後には戻れねーよ」


そして、スコップの先端が何か硬いものに当たった。

手で土をかき分けると黒い棺桶を発見した。

それを見た瞬間、アシュリーは両手で口を抑えうずくまった。

「レオン!アシュリーを連れて先に車に戻ってろ」

「あぁ・・・分かった」


クリスは棺桶を開けた。

雨はさらに激しく降り、近場の海は荒々しい波をたて、まるで死者が怒っているようにも感じとれる。

クリスは目を大きく見開いた。

中には人間の形をした骨と胸元に一枚の封筒が置いてあった。

クリスは恐る恐る封筒を手にした。

その瞬間、クリスの腕を骨の手が掴んだ。

「うわっ!!!」

まばたきしてもう一度見ると、骨はビクとも動いていなかった。

「幻覚か・・・」

クリスは骸骨の顔の部分を見つめて言った。

「リサ・コールドさん・・・あなたは死んだ後も何を望んでいますか?復讐ですか?俺達の行為は正しいのでしょうか?教えてください」


雨粒が骸骨の目のくぼみ部分に当たり下へと垂れ流れる。

クリスはアシュリーの言葉を思い出した。

「死者のナミダか・・・死んだ後も涙を流すなんて、人間は死んでも真の幸せにたどり着かないのか・・・」

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