表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2話 帰り道

平日は7時から10時まで私は働く。この季節は夜風が冷たい。マフラーを顔にまで巻いて、空を見上げる綺麗な三日月が、その日は見えた。

ニャーと可愛らしく足元から聞こえて足を止める。

茶色のめつきが鋭い猫が、私を見上げていた。

首もとの鈴が、チリン、チリンと揺れてる。

飼い猫らしい・・・

腰を落として、頭をなでると、可愛らしく泣いてくれた。フフッと思わず笑ってしまう。

「誠!」

突然の大声。驚き顔を上げる。にゃんこは、足早に逃げて行った。

あーあー・・・・

ため息混じりに立ち上がる

「何よ。何かあった?」

少しふてくされて私が言うと、相変わらずの無表情な顔が近付いて来た。

近藤はやって来ると、後ろを振り返る。

見ると木村君が笑って手を振っていた。

「今日は遅かったから、送ってやれって、うるさくてさ、あいつ」

思わずペコっとお辞儀をしてしまう。

木村君は、そういう人なんだ。

「俺は、大丈夫だって言ったんだけどな」

近藤は、こういう奴・・・

「行こうぜ。寒いし」

足早に歩いて行く。木村君に手を振る。

彼が私のものになりますように・・。なんて思わないから、誰のものにもなりませんように・・

笑顔を見る度、そう思ってた。

近藤は私にかまうことなくスタスタ歩いてた。

同じバイトの子は、格好いいと話してたけど、木村君に比べたら、どこがいいのかと、後ろ姿を見ながら思った。

「お前さ」

突然立ち止まると、近藤は振り返った。

「お前、涙のこと好きだろ?」

恋愛話なんて絶対興味ないだろう人間が、そう言うと驚くというより、何故そんなことを訊くのかと、疑問を抱く。のは、私だけだろうか??

キョトンとしたままいた私を近藤は、じっと見てた。

「突然、何よ」

「いや、確認」

「はぁ?」

声が上がる。

「お前は、幸せそうでいいよな」

近藤はそう言うと、またスタスタ歩いて行った。

何だろう。

「確認って何よ!」

追い付いて横に並ぶと、近藤はいつもの顔で言った。

「涙なら諦めろよ。好きな奴いるから」

「え!」

驚いた私に、近藤は指をさして顔を近付けた。

「ほらな。お前、好きなんだろ」

ハハッと馬鹿にしたように近藤は笑い、歩いてく。

バイト以外でこうして話すことはなかった。

どうして突然そんな話をしたのか分からなかったし、それが冗談かどうか何故か聞けなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ