抹茶
「何で?何でやねん?!」
花は、蛍の言葉を無視した。
「キスだけはないまっしゃろ?」
蛍の興奮は、冷めやらない。
「股間も触られた」
あまりに蛍がうるさいので、花はそう言った。
「股間?!!」
蛍がそう言ったので、花はプッと吹き出した。
「辻利の抹茶、飲んで行かない?」
谷田裕次郎が後ろから言った。
ちょうど黒澤が、トイレから戻って来る。
京都タワーがきれいだった。
「清水寺には、登らない方がいいじゃけん」
抹茶パフェに興奮した後、蛍が言った。
「俺は七味が欲しかった」と言う谷田に、「お土産かぇ?」と蛍が言った。
花と黒澤の目が合う。
花は、抹茶ミルクを一口飲んだ。
「蛍さんは、リメイクが得意だとか?」
そう言った後、谷田は、「今度頼みたい」と、蛍に言った。
「そうじゃ!サンダルを買わないと」
花が言うと、「地下街はまだ開いてるやろ」と黒澤が言った。
「靴は、足に合うかじゃないけぇ」
蛍と黒澤がそれぞれに靴を選び出すと、谷田が花に言った。
花は、谷田の正体を危ぶんでいたが、好奇心から耳を澄ました。
「花・・・と呼び捨てていいじゃろか?」
京都駅の地下街は、閑散としていた。
ふと、花は唐突に黒澤を受け入れなかったことを後悔した。
「チャンスはあるじゃけぇ」
しゃがんでいた谷田が立ち上がった時、「黒澤様が買うてくれた」と、蛍がサンダルを持ってきた。
重たい湿度が京都の名物だった。
そして、この後悔こそが、黒澤の狙いだと気づくには、花はまだ幼かったのである。




