クラッカー
今日は、ゆうくんの誕生日。小学校に入学して早一ヶ月、友達も少しずつできてきた。人見知りの激しいゆうくん、学校に馴染めるのか不安だったけど、心配はいらなかった。誕生日パーティには5人も友達が来てくれる予定だ。
君は誰?って。僕は去年のゆうくんの誕生日パーティで余ったクラッカーだよ。田舎からおばあちゃんが来てくれる予定だったんだけど、来れなくなり、その分さ。おかげでこの一年、ゆうくんと一緒にいれた。
幼稚園の運動会の駆けっこで一位になったゆうくん。興奮冷めやらぬまま、家でも走り回ってたね。神社で捕まえた蝉が抜け出し、家中がパニック、笑えたなぁ。クリスマスには、サンタさんから、くまのぬいぐるみをもらって、毎晩一緒に寝ているね。他にも楽しい思い出がいっぱいあるよ。
さぁ、お客さんもやってきて、パーティの始まりだ。それは、ゆうくんとの別れを意味する。寂しいが仕方がない。俺はクラッカー。華々しく散るのが仕事だ。ケーキが置かれたテーブル近くの棚の上で、その時が来るのを待つだけ。
運命なのか、宿命なのか、それを決めるのは自分自身。クラッカーとして生まれたが、クラッカーとして生きる必要があるのか。誰かに紐を引っ張られるのを待つだけでいいのか。俺はゆうくんと一緒にいたい。次の夏も、その先も、ずっとずっと一緒にいたい。
蝋燭に火がついた。まずい、時間がない。言おう。ゆうくんに言おう。俺の想いを、俺がゆうくんが好きだということを。
勢いよく飛び出すが、紐を踏んでしまい「パンッ!」
一瞬の沈黙はあったものの、「ハッピーバースデー」の歌が歌われ始め、部屋の隅まで響いたのであった。




