表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕暮れの冒険者たち ~世界が終わるこの瞬間~  作者: hikakiso


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/4

夕暮れ

太陽が夕闇に呑まれかける頃――山並みが赤々と燃えていた。

その空を、巨大な影がいくつも横切る。

黒竜たちだ。腹の底から絞り出すように黒い炎を吐き散らし、山肌を焦がしていく。


酒場の前で地べたに座り込んでいた男は、酒瓶をぶら下げたままゆっくりと立ち上がった。


「……またか」


腰をトントンと叩き、男は酒をひと口。

顔をしかめ、吐き捨てる。


「やっぱりクソみたいな酒だ。こんな腐った連中助けたところで、何が変わる」


そのぼやきと同時に、男の足元に魔法陣が浮かび上がり、白い光が弾ける。


「はいはい。こんなもんだろ」


光が収束した瞬間、男は炎の只中――黒竜の頭上にいた。

彼は酒瓶を軽く振りかぶり、竜の頭蓋を小突く。


コン。


乾いた軽い音。しかし次の瞬間、黒竜は山肌を割って地面へ叩きつけられていた。


男は空中でニヤリと口角を上げる。

無数の半透明の糸が彼の指先から伸び、他の竜たちの首を結びつけていた。

空へ引き上げられた竜は凧のように足をばたつかせ、火を吐いて糸を焼こうとするが――焼き切れない。


「酒のツケだ。代価はお前らだ。」


糸が震え、山並みの遥か上空に巨大な魔法陣が展開する。

そこから、山を三つ呑み込むほどの巨大な白い手がゆっくりと現れ、竜たちを包み込んだ。


その指の間から、真っ赤な鮮血が滝のようにこぼれ落ちる。

一瞬後――白い拳が山の地底へ突き立ち、轟音が大地を揺るがした。


眩い光と共に巨大な手は陣の彼方へ消え、静寂だけが残る。


男は、何事もなかったようにヨタヨタと山道を下っていく。


それを遠くから見ていた老山人は、膝をつき、震える声で呟いた。


「あっとだい……あっとだい……」


古の時代にしか使われなかった、魔法の言葉。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ