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終話 二人の戦いは今はじまったばかり

 玉座の間には光が降り注いでいた。

 大理石の床は冷たく長い赤の絨毯が玉座へと続いている。


 王都にてーーマルクスとアシュリーは国王アルザスの元に急ぎ事の顛末を報告しに来ていた。


 アルザスは、沈黙し二人を見据えていた。

 その眼差しには安堵、厳しさ、心配…様々な想いが垣間見えた。


 やがて、アルザスの声が広間に重く響いた。


「……マルクス・ヴァルトリア辺境伯。

 そしてその妻、アシュリー」


 二人が同時に深く頭を垂れる。


「夫婦揃ってよくぞ戻った。だが――国の闇はまだ払われてはおらぬ」


 厳かな言葉が落ちる。


「我が国は聖女の名を冠しながらその力を悪意持って利用し、民にまで行使する者を野放しにはしない。聖女ルーチェはすでに人の理を踏み越えた。

 この国の威信を持って、国の安寧を脅かす存在を……討たねばならぬ」


 広間の空気が一段と張り詰める。

 王は玉座の上から勅命を告げた。


「王命を以て命ず。

 マルクス・ヴァルトリア王太子兼辺境伯、アシュリー王太子妃――聖女ルーチェの討伐を」


 アシュリーは一瞬だけ瞳を閉じ、震える呼吸を整えた。


 ――血を分けた妹。同じ前世を知る転生者。


 似ている立場の二人。けれども一方は今、もはや国を滅ぼしかねない脅威となってしまった。


 彼女は静かにはっきりと答えた。


「……御身御心のままに。私の命を賭してお受けします」


 マルクスもまた玉座を仰いだ。

「ヴァルトリアの剣と私の命を賭して、勅命謹んで承りました」


 二人は強く前を見据え、宣誓した。



 アルザスは深く眉間に皺を寄せ、しばし沈黙した。やがて、わずかに笑みを浮かべる。


「……マルクス。心配したぞ」


 その声には、兄としての慈愛が滲んでいた。


「忘れるな。お前たちは決して孤独ではない。

 辺境の地も、王都の民も、そして私も……常にその背に立っているのだから」


 光が大理石に反射し玉座を照らした。

 その輝きは、二人を導く灯火のようだった。


 ――こうして、国王の勅命の下。


 マルクスとアシュリーの次なる戦いが幕を開けた。

二章でした。お読みいただきありがとうございます。これから(もしかしたら外伝を挟みつつ)三章を書こうと思っています。

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