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第4話 再びの再会

「生きていたんだな。アリア・アテリアル」

「ええ、ずっと宇宙旅行をしていました」

「そうか……」


 正直、彼女はあまり関わり合いになりたくない。

 フォーチュン星の植民地にされた地球とはいえ、現状平和に暮らせている。今の生活に何の不満もないと言ったら噓になるが、リスクを払ってまで捨てるほどのものでもない。

 もしもアリアと会っているところを目撃されて、なんかかしらの関係者だと思われれば、職を失うかもしれない。


「じゃあ、俺は家に帰るから。それじゃあ」

「———世界中の軍隊が明日解体されるそうですね?」


 そうなのだ。

 第二銀河帝国に統治された地球はもはや反抗する全ての装備や拠点が無意味、予算の無駄とされ、二十六年前から徐々に解体されていった。それと同時に地球上に第二銀河帝国の軍事基地が次々と建てられ、万が一のレジスタンスやテロリストが出現してもそこから直ぐに鎮圧部隊が派遣されて、平和は維持される。

 もはや地球人で治安維持というのが必要なくなり……いや、小規模の殺人や強盗とかでは必要なので警察組織は残っているが、それにしても大規模な集団的な騒乱(そうらん)というのはなくなっていった。

 そんなことをしようものなら、宇宙戦艦からビームが発射され、何か成し遂げることもできずに地上から蒸発する。

 故にこの二十六年間、国家同士の衝突はなかった。

 それは人類史で初めての出来事で、第二銀河帝国シンパの政治家たちは「第二銀河帝国によってもたらされた調和のとれた平和の時代がやってきた! まさに銀河帝国による平和パックス・ギャラクティックや!」と過去のローマ帝国の帝政による成功の恩恵を受けた繁栄の時代の用語をもじって、真の平和が全人類に訪れたと豪語した。

 宇宙人のおかげで、遂に人は武器を手にしなくていい時代が、殺し合う必要がなくなる時代が来たのだ。

 それは、良い事だ。


「ああ……沖縄アメリカ軍基地。エドワーズ空軍基地。レニングラード海軍基地。その三つが明日閉鎖されて、鉄製の武器は総て工場に持って行って溶かされることになる。そして———、」


 俺は空を指さす。


「———現在建設中の星間扉(スターゲート)の材料に使われる」


 丁度、真上にチカチカと輝く光が小さな四角を作って空を流れていた。

 動く星座のようなそれは星間扉(スターゲート)という宇宙の衛星軌道上に建設されている巨大な鉄の窓枠———地球とフォーチュン星を繋ぐ亜空間ゲートだ。

 あれが完成すれば、亜空ドライブ搭載の宇宙船だけではなく、コンテナのような単純な物資も気軽にフォーチュン星と交換できるようになる。それになにより亜空間ワープに使う宇宙の抜け穴(ワームホール)を開くために大量の高次元物質エキゾチックマテリアルが必要になる。それがグッと抑えられる。エキゾチックマテリアルを生成するためには物質と反物質の対消滅現象を起こして、本来は丸まっている五次元以上の物質つまりはエキゾチックマテリアルをこの三次元空間に無理やり持って来なければならない。顕現させなければならない。だが、星間扉(スターゲート)ができれば、その必要エキゾチックマテリアルは宇宙船に搭載されている亜空ドライブエンジンの10分の1に減らすことができる。何でも座標が常に固定化されていて、次元のほころびをあらかじめ作って置けるから、という仕組みらしい。


 まぁ、要は星間扉(スターゲート)が完成すれば、地球とフォーチュン星との行き来が低コストで楽になり、交易も旅行も庶民でも気安くできるようになるということだ。


「……ハル様。星間扉(スターゲート)なんて完成すれば、とんでもないことになるのはわかりますよね? あちら側から、フォーチュン星からどんどん気軽に兵器や燃料が送られてくるということですよ? 人も大量に来れるという事ですよ? それがどういう結果を生み出すのか———大人になったハル様ならわかりますよね? 昔とは違って」

「……お前、今このタイミングで現れたのはまさか」


 どうして今になって二十六年前に勧誘を断った天使とロボットがいるのか、どうしてまた俺に声をかけてきたのか。それがだんだんわかりかけてきた。


「はい! あの時はハル様は十歳の子供でした。だから戦わなければならないというのがわからなかったんでしょう! ですから私は待ちました! 今、大人になったハル様なら、第二銀河帝国と戦わなければいけないと理解ができるはずです!」


 アリアは俺に向かって笑顔を浮かべ、手を伸ばしてきた。


「———さぁ、今度こそ! 地球をこの〈ガンフィスト〉で救いましょう! 選ばれし勇者・浅井(あざい)ハル様!」


 ……勇者……かぁ……俺が……?

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