さいかい
レ点を知ってますか?
漢文に用いるモノですが、なかなか面白い使い方ですよね?
今の時代に用いても「何書いてんだコイツ?」ってなるのが関の山ですね。
相撲?誰もスモウ・ファイティングの話をしてませんよ?あれも興味深いモノですが、格闘技の話はまた後ほど。
ここまでの提供は
「小学生の頃、同じクラスの子に『お相撲さんになれば?』と言っただけで制裁を喰らったendigo」と
「純血の日本人じゃないだけで虐められても、何とも思わない当時の先生方」の提供でお送りしました
深夜零時です
貴様がドロクだな?
「なんだ?どちら様ですか?」
名はアミターバという。
「んー?知り合いにそんな名前の方いたっけか?すみません、何処かで会いました?」
否、今回が初めてだ。
「じゃあ知らねーよ。突然語りかけてきやがって…びっくりするわ!何の用だよ?」
貴様を処罰することにした。
「悪いことしちゃいました?おかしいなー、ちゃんと規制は入っていた筈なんだけどなー」
?規制だと…何を規制したのだ?
「規制ってそりゃ【自主規制】とか」
な、何を急に言っているのだ!
「だから規制してるやろがい!俺の発言じゃなくて、俺の字幕を見ろってんだ!」
字幕だと?何のことだ?
「おいおい、仮にも神様語ってるんだろ?この程度、ちょっと勉強すりゃあ分かることだぞ?」
…勉学は苦手だ。
「苦手云々の話じゃねーよ!はぁ…何処住みなんです?」
極楽浄土だ。
「げっ…ってことは、かなりお偉いお方ですね?」
左様。ドロク、貴様何か思い当たる物があるな?
「和名で自己紹介しろよ!!!こっちは謙遜してんのに、何でそんなドヤ顔してんの?それともそっちは、お偉いお方は名乗ることすらめんどくさがってんのか!?」
…違う。阿弥陀如来と申す。
「阿弥陀如来様かよ!誰がふっかけたか知らないが、適当すぎんだろ!?」
何をそんなに怒っているのだ?
「怒るよ普通!閻魔様があんだけ苦労してんのに、格差が酷すぎるだろうが!!!」
それは…そう、だな…
「ふう…で?阿弥陀如来様が…いや、アミターバ様が直々に処罰するって事でしたっけ?」
えっ?罰を受けるのか?
「そりゃあ内心受けたくないですけど、極楽浄土の皆様は納得しないでしょ?甘んじて受けますよ」
そうか…すまない。
「謝罪するならさぁ!!?…ごめんなさい。アミターバ様に言うことではないです」
ドロク、貴様にとって辛い罰だ。もし如実を変えるのであれば、神格を失うのは確実だ。覚悟されよ。
「簡単に意思を変えることなんざ、絶対しませんよ。ってか、何が起きるか楽しみなんですよねー」
おっ…真っ暗。極楽にも暗い部屋なんかあるんだなー。マジでなんも見えねぇ…サングラス外しておくか…
胸ポケットにサングラスをしまう。
しっかし、どうすりゃいいんだ?これが罰って訳じゃないし…急に床が抜けてスカイダイビング?お堅いイメージの奴らが思いつくアイデアじゃないか…そもそもなんの処罰なんだ?如来・菩薩の方々が気を悪くすることなんてやってないし、明王と関わりを持ってない…となると、天に成り立ての奴なのか?嫉妬されるのはいつもの事だけど、わざわざ阿弥陀如来様に頼む事なのか?
「誰か、そこに居るのか…?」
掠れた声で話しかけられる。
「わりぃ、暗すぎて何も見えん」
「そこから動くんじゃねーぞ。俺は寒くて布団に丸まってるんだ。猫踏んじゃったみたいになりたくねぇ…」
寒い?そんなの気にもしなかったな。
「あー寒い寒い。あんた、火を点ける物とか持ってないか?」
「一応、ライターは持っているが…」
「おう、なら俺を燃やしてくれ」
「出来るかあ!そんなこと!!!」
「ははは…冗談だよ…うっ!?ゲホッ、ゲホッ………」
酷い咳をしている。
「…大丈夫か?」
「…はぁ…はぁ…い、いつものことだ。心配すんな…あんた優しいんだな」
「別に…お互い見えないのに、急に咳とかされたらビビるだろ…」
「そりゃそうか…寒い寒い…なぁ?昔話を聞いてくれねーか?」
「なんだよ改まって?」
「なーに、俺の時間はまだあるんだ…別に答えが欲しいって訳でもねー…いいだろ?」
男は息を整えて話し始める。
「俺には姉と妹が居た。妹は動物が好きでな、小さい頃から何かしらのペットと一緒だった。勿論、ペットとの別れはめちゃくちゃ泣いていたさ。妹的に動物を飼育するより、手助けをしたいって考えるようになって、会社を立ち上げた…立派なもんだよ…」
「姉は?」
「想像つくだろ?大層なことを言うが、自分が間違っていることを気づこうとしない。最悪な女だよ…面倒見れないなら、最初からそんなことするなよって言いたいが、プライドが許さないんだろうな…縁を切りたかったが、親は認めてくれないんだろうな…」
「アンタはどうなんだよ?」
「ん?俺か?ふっ…俺なんて生きてたって仕方ない…ずっと同じ場所で暮らしていたからな…そりゃ、大変なことが起ころうとも、どうにも出来なかったからなぁ…遺産とかどうでもいい」
「…」
「もし、普通だったらって考えたことがあるよ…でも想像できねぇ!自分の顔を見て嫌気が差すし、学びが無いから太刀打ちできねぇ…俺の価値なんざ、他人に決められてその通りなんだからよ…」
「だとしても、何とかなった筈だ」
「どうした?もう関係ない話なんだよ…今は寒くて、寒くて…?」
急に黙り込んだ。
「あったけぇ…こっちに来て一度も感じることが出来なかったのに…そうか、あんたのおかげなんだな?悪くない…心地良い…天に昇る気持ちだ…」
瞬間、辺りは白く光る。唐突に変わったので目がチカチカする。
なんだ?胸騒ぎがする…こんなこと一度も…
「久しぶりだな…」
!?聞くな!騙されているぞ!!!
「今はドロクって名乗っているそうだな?」
呼吸を整えろ!そこに居るのは偽物で、本物は違う場所に居る!惑わされるな!!!
「顔をよく見せてくれドロク」
「秋野庵…さん?」
あの頃と同じ顔だった。同じ神様なんだから、変わることなんてないよな…
「なんだ?今の娘はこういう身だしなみが流行っているのか?」
純白のスーツに空色のワイシャツ、映える黒のアイテムたち。
「…大きくなったな」
「そんなことない」
「何言ってんだ。俺の背、越してるじゃないか」
「デカい女なんて、流行んないよ…」
「そうなのか?俺は気にしないけどな」
「私は気にするの!」
「怒るなって…ほら、テーブル席があるから座らないか?首を上げていたら痛くなってしまって…」
「おっさんかよ…」
2人はテーブルを挟むように座った。
「メニューとかは…無いか」
「こんな場所に店員居ないでしょ。場所が場所だし」
「それもそうだが、せっかくだしお前と何か食べたかったんだよな…」
「会いに来るなら、お土産持ってこない方が悪いんじゃない?」
胸が痛い。罪悪感?
「うっ…それはそうだな…」
「でしょ?他の皆んなは何も言わなかったの?」
当たり前の様に喋るな。理解しているのか?
「特に言われなかったな…天野川め、こんな時に気が利かねえとは…最近甘やかしすぎたかな」
「人のせいにしちゃダメだよ?私の教育に悪いんじゃない?」
嘘を吐くな。正直に話せよ!何を言いたいのか、はっきり話せ!
「言う様になったな…歳かなぁ、頭が回らなくなってきたな…新しい刺激が欲しいな」
「それならさ…」
言え
言えよ
言うべきだ
言わない理由はない
言うことで楽になれる
楽になりたいのか?
どうしたいんだ?
目的ってなんだった?
「どうして、会いに来たの…?」
涙がポロポロと溢れ出す。
「泣くことはないだろ?」
「泣かない訳ないでしょ!?私は…貴方に誇れる私になる為に、私は…」
涙を拭っても止まらない。止まる筈ない。
「言うな、こうなったのは俺の失態だ。お前は悪くない。全ての因果は俺が起こした。お前のせいじゃない…」
「あの時の私は…私であって私じゃないから、私のせいなの…秋野さんのせいじゃないよ」
「よせ!俺に対して罪悪感を抱くな!…俺は最後の最後に捨てたんだ。お前を当然の様に捨てた…護ることを辞めたんだ…」
「仕方ないじゃない!!!何回もやり直して今の私が居る…無駄じゃなかったのよ!それとも無駄だったって言うの!!?」
「違う」
「私を宥めるのを辞めてよ!貴方を困らせたのは私自身なんだから!」
「落ち着け、ドロク」
「私を肯定しないで!否定しないで!…私なんか、放っておいてよ…」
「いいから、何も言うな。俺に触れろ。少しは楽になれる」
「無理なのよ!そんなこともう出来ない!」
「…俺は此処に居るだろ?」
「居るよ…居るから辛いのよ…」
見えない壁を叩く。邪魔な壁。2人の運命を裂いた壁。
「貴方の温もりを忘れたりしない…だからもう、私の目の前から消えてよ…」
「ドロク…」
テーブルに顔をうずめる。早く居なくなって欲しい。でも嫌だ。もっとこの時間が欲しい。
「ドロク、俺の名前を言ってくれないか?」
「嫌」
「…じゃあ、タバコ。タバコ持ってるか?」
「えっ…?」
顔を上げた私はどんな表情をしていたのだろう。
「持ってないのか?」
「持ってるけど…」
「なら、出せ」
お尻のポケットからタバコを出す。
「おっ、同じ銘柄じゃないか。嬉しいな…」
「別に」
「タバコ咥えろよ。俺も咥えるからさ」
タバコを咥えて火を点けようとする。
「何やってんだ?」
「何って火を点けんの」
「あるだろここに」
「え?」
「ほら、ここ」
秋野庵は咥えたタバコの先を指差した。
「タバコ…吸えないよ?」
「やってみなきゃ、わかんねーだろ?」
「でも…」
「いいから、早く」
シガーキス。見えない壁のせいで、お互いのタバコはくしゃくしゃになってしまったが、お互い何も言わずしばらく黙った。
「…悪くない一本だったろ?」
「馬鹿」
「そんなこと言うな…俺はなドロク、お前が望むんじゃないかって内心ヒヤヒヤしてたよ」
「…分かってるよ」
「良い娘だ。流石は俺の…」
言いかけて、苦い顔をして後ろを向いた。
「じゃあな。いつかまた、会えるだろ?」
手を振りながら去って行く…
「行かないでよ!!!」
悔し涙を堪える。
「いつも隣に居るからって…言ってよ…」
あの時と同じ我儘、駄々。記憶が蘇る。
「言わないとどうするんだ?」
「絶対に結婚出来ないように女難をかけてやる」
「ははっ、そいつは困ったな…」
振り返った顔は、変わらない優しい笑顔。
「いつもじゃねえ…永遠にお前の隣は俺のもんだ。分かりきったこと言わすな、馬鹿」
「庵さん…」
「やっと呼んでくれたな、昔みたいに」
消える。此処から消える。あの娘は必死に壁を叩く。仕方ない事だ。俺は、俺という神は、ゲームの中でしか存在できない。本当に最悪な悪戯だ。
2024年、あの娘を救えなかった。それが始まり。
運命を変えるのは簡単じゃない。そもそも馬鹿げている。同じ2024年を繰り返す内に、どうでもよくなった。この娘が神に選ばれたのであれば、こんな辛い思いをしなくて済むのにと願った。願ってしまった。結果、運命は変わった。意図も容易く変わってしまった。
俺はどうなったかだって?知ってるだろ?あのゲームのキャラクターに転生したんだ。絶対相容れないと思ってたのにな…まさか、あの娘があんな事してるだなんて思いもよらなかったよ…願いを叶える神様か…皮肉だよな?嫌がらせだよな、神様って奴は。
なぁ、オマエラはどう思ってる?簡単に人の運命を変えても良いと思ってるか?もしそう思っているのなら、俺が殺す。感情で殺すんじゃない。義務で殺す。命乞いなんてするな、哀れだぞ?テメェが望んだ結果じゃねーか。責任取れないなら無駄は辞めろ。謝罪なんて無価値、行動で示せ。
その場に座り込んでワンワン泣いた。
涙が枯れるくらい泣いた。
約束・目的、終わっていないのに出会ってしまった。もう会えないんじゃないかと悲しんだ。
「…大丈夫か、ドロク?」
「…アミターバ様か?」
直接脳内に語りかけてきた。
「処罰はこれにて終了。何か言いたいことはあるか?」
「無い。現世に帰らせてくれ」
「承知…」
「なんだ?何か言って欲しかったのかよ」
「できれば、申して欲しい」
「だから無いって!早く帰らせてくれよ。其方様はどうか知らないけど、仕事が溜まってるの!」
「…」
「だぁー!?もうっ!そこまで気にするか普通!?仏様だろ?後はアミターバ様次第ですって」
「…そうか、そうだな。すまなんだドロク。今帰してやろう」
「わかりゃあ良いんですよ。急に床が抜けて落ちるとか無くても気にしませんって」
「その方が良いのか?」
「ん?冗談に決まって…うわああぁぁぁ!!?」
「今後に役立つ意見、感謝するドロク」
あの生意気なガキ、どうなったんだ?
恐れ多くも我らの領土を仇なす危険物め…さっさと消えろ。
いや?むしろ消えたらあのガキ、どちらかに来るのだ?
そんなことなんぞ、どうでもよいか。重要なのは私のこと。
アチャラナータに呼ばれるなんて滅多にない。きっと昇進に違いない!
「…です。宜しいでしょうか?」
「うむ、入れ」
「失礼します…あら?貴方様は?」
「ヤマラージャと申す…よ、これから宜しくな」
「えぇ、宜しくどうぞ…アチャラナータ様、どういうことですか?」
「説明する。汝はこれより地獄に左遷。しばらくの間、極楽浄土へ赴くことを禁じる」
「!?何故ですか!!!」
「案ずるな、教育の一環だ。それに我も居る…苦労はさせまい」
「それとも問題があるのか…よ?」
「いえ…何も…」
「暗い顔をするな。貴殿に合いそうな死神と名乗る者を紹介しよう」
「あの馬鹿ですか!?」
「今なんと言った?我が同胞ヤマラージャの友、死神を愚弄したか?」
「ち、違います!それは咄嗟に出てきた…」
「更には、現世に使命を帯びたドロクを陥れようとアミターバへ根回ししたのも貴殿だな?」
「な、何を仰ってるのか、私めにはさっぱり…」
「その様な俗物は極楽浄土に不用。鬼に蹴られて死ね」
「そんな!アチャラナータ様、お聞き…わぁ!!?」
俗は天から堕ち、小鬼に突かれている。
「すまないヤマラージャ、悩みを増やしてしまったな…」
「気にするなアチャラナータ、お互い苦労する側だ。この事象は起こるべく起きた」
「そうか…そう言ってもらうと助かる」
「我も極楽に偏見を持っていた…この輩を切り捨てるのも辛い仕事だな…」
「あぁ、我らは悟りを求める最中、この様に俗物になることもある。我らの仲を疑いたくないが…隠し続ける奴もいる。困ったもんだ」
「協力を促すのも難しい話だな」
「全て我の勤めだ。しかし、何故ドロクが狙われた?」
「分からなんだ。聞いた話だが、あの空間には2名しか居なかった筈と言っていたな?」
「否、アミターバ様が知らぬ人物が其処に居た。意味が分かるかヤマラージャ?」
「謎の第三者が居た訳か…問題だが、解決できそうにないのだろう?」
「悔しいがその通りだ。あの場に誰が居たか解らぬ」
「…アチャラナータ、考え過ぎることは毒だ。息抜きも大切だぞ?」
「息抜き?例えばどんなのだ?」
「我盟友、死神を…」
「勘弁してくれ」
「わっはっは。冗談だ」
「してやられたわ…」
最後までご愛読いただきありがとうございます。
過去に苦い思い出というより、真っ黒な思い出しかないendigoです。
碌な人生じゃないんです、多分。人によって悲劇で喜劇なんです。でも、差別は良くないですよね?本人気づかない事が多いから、天然って思われるかもじゃないですか。
両手に物持たせちゃアカンのですよ。持った状態で何か考えさせたら、片方失くすんですから。片手に持たせても失くしますよ、はい。
作品書くことは忘れないので心配なさらないで?
ではまた次回