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あいしてるの

あなたは一途ですか?股をかけますか?

とある恋愛ゲームで、先輩キャラのルートがバッドルートに入ってしまい、急いで幼馴染キャラ2人と日常を過ごしていたのですが、1人の幼馴染と好感度アップシーンをもう1人の幼馴染に見られまして血の気が引きました。

ここまでの提供は

「1周目が納得いかないなら、もう一度1周目をやるendigo」と

「股を裂くことに抵抗ないお姉様方」の提供でお送りしました

深夜零時です

名前は?

乙津真理恵よ。年齢なんか答える気はないわよ?女性に聞く話じゃないのは分かってるわよね?

…願いは?

愛よ!私には愛が足りないの!

愛…?

あら分からないの?愛よ愛!LikeじゃなくてLoveよ!私は愛されたいの!お金じゃ買えないのよ愛は…理解できる?

うーん…俺からの愛じゃ足りないんだろ?

勿論じゃない!!!私こそ愛!愛こそ私!全ての愛は私に贈られるべきなのよ!

はぁ…叶った後のことは、俺は関係していないからな?

ふふん、貴方にできるかしら?私は厳しいわよ?簡単には納得しないわ。満足するまで貴方に付き纏うわよ?訴えるなんて言わないわよね?私には………




あー、なんで抽象的な願いをするかねー…最近多くない?形無い物を望むなんて、何の意味があるん?俺が知った事ではないかー…奴隷の管理で大変なのに無駄に税金かけやがって、滅ぼすかこの国?辞めよう。正常な判断が出来てないな。働きすぎってやつか?

「おーい…ドロクちゃん?呑んでマッカ…?ヒック」

馴染みのBARで飲んでる。死神ちゃんとハシゴ7軒目。

「呑んでるよー。死神ちゃんは?」

「ぜんっ………ぜん!足りてない!!!おい、雄豚!はよう、ボトル持ってこんかい!!!ヒック」

「はいはい、ただいま…」

カウンターテーブルと一体化しながらも、一応撃沈していない死神ちゃん…神様にも酒で酔い潰れてやらかすのは当たり前やぞオマエラ。

「ドロクちゃあん。今日も〜、仕事疲れたね〜」

「そうだね死神ちゃん。もう少し飲んだら帰ろうか」

「りょ〜か〜い…ヒック」

「お待たせしました、ウイスキーです。ストレートで宜しいでしょうか?」

「んなもん、トワイスアップに決まってんだろ?スカポンターン!」

何故か俺の肩を殴る。

「失礼しました。ご用意します…」

「おい、雄豚ぁ!テメェ〜も呑みやがれえ…ヒック」

「お待たせしました…まだ営業時間なので飲めませんね」

「んだとお?僕の酒が呑めねーのかぁあ!?」

出された酒を俺の顔面にぶっかけて、ウイスキーボトルをラッパで一気に飲み干す…真似しちゃ駄目だよ?急アルで倒れるからな?

「…ヒック。こっちは毎日毎日働いてるのによお〜、なんで目の敵にされなきゃなんだよお〜…Zzz」

問題児撃沈。

「タオルくれ、ベル」

「申し訳ございません、ドロク様。直ちに…」

しかしながら、死神ちゃんはよく働くようになった。あんだけメンドクサイで済ませていたのに、少しは成長したってことなのかね〜。

「タオルです」

「おう」

顔を拭きながら尋ねてみた。

「ベル、副業しないか?」

「…ご遠慮させてください」

「何故だ?」

「私にはこの店が有りますので…」

「人間を怠惰させるにはこんな店で充分だと?」

「少なからず、私はそう思っています…」

「ふーん」

そりゃそうか。悪魔共にとって利益を上げようとする行為はリスクがあるからな…俺にバレて全て失うのも避けたいもんな。

「サンキュー。片してくれ」

タオルをベルに渡すと同時に目の前にコップが置かれた。

「これで酔いを覚ましなさいな…」

誇張無しで言うぞ…デブ。厚化粧したデブ。ブランド物で彩られたデブ。金の臭いがプンプンする。

「すみません。ありがとうございます…ん」

おい、マジかよこの女…

「あら?どうかしたかしら?」

「…スピリタスですか。別に一気に飲んで平気ですけど」

「素晴らしいわ。スタイルだけじゃなくて、お酒も強いなんて!あんな枯れた女なんかより、私と飲まない?」

「そのつもりで、わざわざ隣に座ったんですよね?構いませんよ。夜は長いので…」

「話が早くて助かるわ。マスター、シャンパンを」

「かしこまりました、マダム…」

「出会いに乾杯って訳じゃなさそうですね」

「当たり前じゃない…」

サングラスを取られる。

「やっぱり顔面も強いわ…1番は眼ね。女を吸い込むようなイジワルな眼」

「…お褒めの言葉、ありがとうございます」

「お待たせしました。シャンパンでございます…」

「ありがと…乾杯する前にやるかやらないか決めて頂戴?」

「何をですか?」

「アイドル」

「…やりません」

「あら?何故かしら?」

「おやおや、決めたら乾杯するのでは?」

「生意気で狡賢いわね。いいわ、乾杯」

「乾杯」

アーメンドクサーイ。コレナラ、ヘンタイトシャベッテルホウガラクチン。【自主規制】【自主規制】ちあーず。

「一応聞かせてくれても良いわよね?アイドルやりたくないの?」

「目立つことを控えたい…では理由になりませんか?」

「駄目。納得できない」

「…では、仮に俺がその舞台に立った時、俺は何をすると思います?」

「なにかしら?」

「ルールを全部ぶっ壊して、俺だけがアイドルであり続ける」

「ふふっ…はははは!」

女は爆笑した。

「久しぶりに大笑いさせてもらったわ…それなら、アイドルなんかにさせる訳にはいかないわね」

「ご理解頂けて何よりです」

「でも本当に勿体ないわ。100点満点の男なんて、そうそう居ないわ」

「…それが運命ってやつですよ」

「運命なんか信じないわ!私はなるべくしてこの姿になって、今の地位に立っている」

女は席を立った。

「また会いましょう?今度は貴方に相応しい仕事、持ってくるわね」

「…楽しみに待ってますよ」

「マスター?この場の会計は私持ちよ?良いわね?」

「はい、分かりましたマダム…」

「それじゃあね、麗しのボーイ…」

色気もない口説き文句を吐いて帰って行った。

「ベル、あれが乙津真理恵か?」

「はい、乙津真理恵本人でございます」

「あれの情報を知ってるだけ話せ」

「はい、乙津財閥の奥様。亡き夫今、全ての権限を持っているお方。ひとり息子は居りますが、能力の高さで旦那様ご兄弟の甥に継がせるご様子。男遊びが大変ご興味があるようです…」

「ふん、なるほど。いけしゃあしゃあとマウント取りやがって…ベル」

「はい」

「やはり副業しろ。今回の依頼はあまりにも面倒だ。案ずるな、天使共に邪魔なんぞさせん」

「承りました…報酬はなんでしょう?」

「俺の奴隷を分けてやる。なんなら、ついでにお仲間の分まで恵んでやってもいい」

「それは…少しの間だけ保留にさせて頂けないでしょうか?」

「構わん。だが、早めに決断しろ」

オマエラ、上級国民だ。オマエラならどうする?どうやって上級を外す?…言い忘れていたが、今回は裁判無しだ。だってそうだろう?アイツらにとって、裁判なんぞ大したダメージじゃないからな。むしろ示談で終わらせた方が楽だからな。

その後の情報?そんなのゴミ共の餌だ。情報が完結していないのに、余計な物を出して混乱させる…この国の悪い所だよな?他人の不倫なんぞ勝手にやってろって思わないのか?ひと時の甘い蜜を啜って「私、酷いことされたんです!」馬鹿じゃねーの?騙す・騙されるの問題じゃない。望む・望まないの話だ。男女の壁なんざ無い。極めて曖昧だが平等。理解に苦しむか?それとも理解したくないのか?

どうした?喚けよ。喚いて批判しろよ?そうじゃないって言いきれよ。そんなことする同胞はいないって否定しろよ?できないのか?嘘吐きめ。何年嘘を吐いた?認められないと思ったのか?世渡りって知ってるか?必要な嘘だ。必要以上だよな?そんなんだから落ちた時のダメージがデカいんだ。悲劇だと考えるな。そうなる前に死ねば助かるんだよ。

何でまだ生きてるんだよ?いつ死ぬんだよ?臆病者め。オマエは生きたいんじゃない。殺されたいんだ。納得する死を選びたいんだ。どこまでも強情な奴め。何もかも諦めた癖に足掻きやがって。何が目的だ?俺に何を求めている………???

「ドロクちゃん?」

眠り姫がお目覚めだ。

「だいぶ呑んだね死神ちゃん。具合悪くない?」

「ん。寝たから大丈夫。それよりドロクちゃん、怖い顔してたけど何かあったの?」

「…気に食わない女が現れただけだよ」

「そうなの?」

「…お待たせしました、ドロク様。私たち全員、お手伝いさせて頂きます」

「よし…」

呑みかけのシャンパンを床に捨てる。

「全てが決まり次第、日取りを伝える。いいな?」

「御意に」

「えっ?何するの?働くのヤダよ…?」

「大丈夫。死神ちゃんは大トリだから安心して?」

「うん?…やったぁー!大トリだあ!…騙してないよね?」

「騙してないから。最後に少しだけ出番あるだけよ」

「なら許す。よきにはからえ」

BAR魔界から出て行く。

さて、ゲームが始まる。今回はどうなると思う?いったい誰の依頼だと思う?予想通りになるか?それとも予想外か?依頼内容だけネタバレしてやるよ。


もうこの舞台から居なくなってくれ


答え合わせしたか?外れてた?言っておくが、俺が殺すことはしない。俺を殺そうとしても、殺そうとした奴が死ぬだけ…前に1回だけ見せたかな?物理的に殺さない。精神的に殺す。俺のルールだ。

依頼主は明確な殺意を持っているな。旦那か?息子か?まさか甥が?どうなることやら…チャンネルはそのままだぞ。後で見ようだなんて、どうせ忘れて最初から見直すんだ。その度に「この話クソだわー」なんて愚痴溢すんだろ?知ってるぞ。オマエラを分かってるからな。ラストシーンまでノンストップ。乙津真理恵の愛の行方…愛の形…愛の答え…そして愛故の死。お楽しみくださいませ………




つまらない男のせいで遅くなってしまった。今日はあのチンケな店におきにいりが来る。今度こそ手に入れなければ、私の欲は収まらない。

「…マスター居るの?」

店に入ると見窄らしい店内が更に悪く見える。

「マダム?すみません、まだ開店時間ではないのですが…」

「そんなことより、今日は貸切よ。分かってるでしょ?」

「はい、承知しました。彼はもうしばらくしましたら、こちらへ伺うと聞いておりましたのでお待ち頂けますか?」

「…まあ、いいわ」

スマホが鳴る。つまらない男からの電話。

「…何?」

「母さん!?いったいどこ行ってるんだよ!」

「別にアンタには関係ないでしょう?」

「関係ないって…どうして僕じゃなくて、アイツに任せたのさ!」

「アンタの名前は何だったかしら?」

「え…?く、黒だけど…」

「なら分かるわよね?アンタはお先真っ暗なの。産まれてきて可哀想、その程度の存在なの。悔しかったらもっとマシになんなさいな」

「ちょっと!?かあ…」

はぁ…無駄な会話だったわ。

「マダム、少々宜しいでしょうか?」

「何?機嫌が悪いのだけど…」

「お楽しみ前の食前酒は、いかがでしょうか?」

「食前酒?」

「滅多に入らない白ワインが、丁度良く手に入れまして…」

ボトルを見せられる…確かに私の記憶通り、手に入りにくい白ワインだった。

「上出来だわマスター。早く注いで頂戴?」

「かしこまりました…」

透明なグラスが煌びやかな液体で満たされる。

「…ご賞味ください」

「…」

まあ、いいわ。せっかく見つけた逸材ですもの。待たされるのも一興として楽しもうかしら…?


「…ん?」

寝てしまったの?この私が…?

「お目覚めですか?マダム」

「マスター?貴方まさか何か盛って…?」

「お楽しみいただいて何よりです」

「へ?」

マスターの目線の先には、待ち望んでいた彼が倒れるように寝ていた。

「随分と激しく楽しんだみたいで…」

「あら、そうだったかしら…?全く覚えてないのだけど…」

「マダム、こちらのカメラに収めております」

「何ですって!?」

カメラをぶん取り、中身を確認する。

「マダムからの命令で撮影したのですよ?」

「私が…?」

動画が再生され、私の喘ぎ声が響く。彼の声は聴こえない。

「…!!?」

嘘よ!そんなはずない!彼はちゃんとそこに居るじゃない!!!

恐る恐る彼に近づく…

「マダム…まさか感極まって殺してしまうだなんて、わたくしも少々驚きました」

動かない眼光。閉まってくれない舌。鼓動を感じることができない。

「違う…私は、そんなこと…」

「ご安心くださいマダム。後処理はわたくしのペットにお任せください」

「な、何を言ってるの…?」

「全てマダムが望まれたこと…何もご心配はありません」

マスターの眼が淀む。

「!?あ、貴方!いったい誰なの!?」

「わたくしはワタクシであります。そもそもマダム?貴女様は顔をちゃんと認識していまして?」

マスターと思わしき足元から獣の鳴き声が聞こえてくる。

「わたくしの豚はお残しはしません。骨だろうが服だろうが全て平らげます…頭が悪いので…」

ニヤリと笑った顔で、足が竦んでしまう。

(誰か助けて!)

思いが通じたのか、はたまた奇跡か。入り口の扉が開かれる。

「奥様!ご無事ですか!?」

乙津財閥お抱えの付き人のひとりが私を助けに来てくれた。

「何か事件に巻き込まれたのですね?自分がお護りします!」

「は、早く逃げ…」

指を差した先にはマスターの姿は居なかった。

「奥様、歩けますか?自分の肩をお使いください」

「え?えぇ…」

生きた心地が無い足取りで店を出る。

どういうこと!?間違いなく彼はそこに居て、マスターと思わしき人物も居た。ならアレはなんだったの?身体の震えが止まらない…私が本当に彼を殺したの?気を失った時間で?

「車に乗ってください。安全な場所に移動します」

助手席に私は座った。

「貴方、最近入ってきた子だったかしら?」

「その通りです奥様。もし、時間内に連絡がなかったら突入して構わないと連絡がありました」

「誰がそんなことを…?」

「?奥様が送ったのではないのですか?」

スマホを確認すると、確かに付き人向けにメールを送信していた。

「とりあえず周辺を回って、尾行してくる車がいないか確認できたら、遠くに離れます。宜しいですか?」

「わ、わかったわ…」

落ち着くのよ乙津真理恵!全て私を騙す為の小賢しい演技の可能性があるわ!彼とマスターが結託して………待ちなさい、彼ってあんな顔だったかしら?

「…奥様、着きました」

悩んでいる間に付き人の目的地に着いたみたいだ。

「ここは?」

「自分の家…であります奥様。カッコつけましたが、上手くいかないもんですね…」

「貴方…顔をよく見せなさい?」

「えっ…」

顔に触れて、首元の匂いを嗅ぐ。

「い、いけません奥様…」

「なかなか可愛い顔だわ…自宅を選んだのは無意識?でも私は、家に入るまで我慢できないの…こんなに震えているのよ?責任取りなさいな」

「奥様…そんな…」

今私を安心させてくれるのはこの男しかいない。身体の震えが治るまで、味見をしても…

「こんなに上手くいくなんて笑っちゃうぜ!」

腹部に衝撃が走った。スタンガン?

「あー気持ち悪かった。さっさと眠りなよドブス!」

何度も何度も電撃を喰らい、私はまた意識を失う。


ドタドタと鳴る音で目を覚ます。

「ここは…?」

無地の部屋。ここから更に何かを付け足す予定の部屋。見ているだけで不安が過ぎる部屋。

少し開いている扉の向こうから、声と何かが跳ねているモノが見える。

「よくもっ!オレのっ!女にっ!近づきっ!やがって!身の程をっ!知れっ!ドブスがぁ!!!」

跳ねていたモノが倒れる。先程の付き人だった。

「ひっ…!!?」

条件反射で身体を動かそうとした際、腕だけが動かなかった。後ろで縛られた腕は、鎖の音を鳴らすだけ。

その音に気づいたのか、声の主が扉を開けた。

「マダム!!!最愛の人よ!お目覚めになられたか!?」

血塗れの人物は興奮しながら私に近づいた。

「覚えておられますか?あの時、どうしようもない会社オレを救って頂いたんですよ!」

答えなければまずい。

「えっと…山上製紙の…?」

「さっすがマダム!!!こんな若輩を覚えているだなんて!感激でございます…」

「わ、私を助けに来てくれたの…?」

「もち!ろん!でございます。若輩はマダムをストーカーすることしか出来ませんから!!!」

ストーカー?

「悪い虫は、この若輩にお任せあれ!この四肢が存在する限り、マダムを絶対お護りします!!!」

「ど、どうして、拘束しているのかしら?」

「これ以上マダムが余計なモノに手を出さないようにしてるだけです。若輩の愛!受け取って頂きます!!!」

私の肩を掠めて、カランと背後で落ちた。視線を向けると医療に使うメスが落ちていた。

「わ、私を殺すの!!?」

「あー、違います違います。マダムを殺すなんて勿体無い。若輩の愛をすこーしずつ、すこーしずつ刻むだけですから…楽しみに待っていてくださいね…」

鼻歌交じりで意気揚々と唯一の出口から消え…

ガチャリ。

閉じ込められてしまった。

冗談じゃない!何で私がこんな目に遭わなきゃいけないの!?私は努力してきたじゃない!!!どんな過去が有っても、容姿が汚くても頑張ってきたじゃない!!!徹底的に追い込んで手に入れたのよ!?何を間違ったと言うの!?私は間違ってない!当然の権利じゃないの!?

スプリンクラーが作動し、何もない部屋に水面ができる。

どうして作動したの?まさか火事…?嫌っ!火事なんて絶対に嫌っ!!!どうして外れないの!?私は財閥のトップなのよ!?

スプリンクラーは蛇口を捻った水と同じように勢いを増す。

なんなのよ…なんなのよ!?何で水位が30cmまで来てるのよ!?溺死にさせるつもり!?

文句を言っても水は停まらない。

鎖で繋がられてるせいで浮かぼうにも浮かべない。既に部屋の高さ半分まで来ているというのに、鎖は外れてくれない。

みっともない死。みっともない私。恥ずかしい死。恥ずかしい私。可哀想な死。可哀想な私。

諦めかけたその時、勢いよく水が排出される。その流れに引き摺られて、何処かへ連れて行かれる。腕を縛っていた鎖は無くなっていた。

「…ゴホッ、ゴホッ」

狭い廊下。その道の先には登るのが嫌になりそうな階段。そして外の光。

死に物狂いで階段を上がる。脚が動かないなら腕で、腕が動かないなら顎で階段を登る。

外の光に導かれて私はこの場所から出た。

外は太陽が照らす昼間。長い12時間だった。腕時計がそれを物語る。

「た、助けて…ください…」

その時の私はどのような姿だったのか…道歩く人々は私を除け者にする。

「は…犯罪、者が…あの………」

「触ってくんなババァ!」

押し倒される。嗚呼やはり愛される顔でなければ、誰も助けてくれないのか?

「あの、大丈夫ですか?」

顔を上げると金髪の美青年がそこに居た。

「ちょっと待っててください。お店からタオル持ってくるんで」

そう言って店の中へ消える青年。

いつぶりだろうか。優しくされたのは…確か息子から感謝の手紙を…

「お姉さん?ごめんね、自分の力でこっち来れる?」

「えっ?えぇ…」

青年に促されて、私は店の中に入った。

「そこのテーブルにタオル置いてあるから。ごめんねー、ちょっと手が離せなくって…」

「いえ、ありがとう…」

椅子に座り、置かれていたタオルを使って身体を拭く。

「寒くない?もし良かったら飲んでね」

紅茶が入ってるティーカップを渡された。温もりを感じて一気に飲み干す。

「美味しい?」

「えぇ、とっても。身体の芯から暖まるわ…」

「よかったぁ〜」

「ねぇ、貴方1人なの?」

「違うよ」

「私みたいな人がお店に居たら、駄目なんじゃない?」

「そうだよ」

「えっ」

即答だった。

「そのお茶ね、アスくんから借りたんだ。どうなるか見てみたくて…」

胃の中がモゾモゾする。

「アス…くん?」

「オマエ、ボクのこと枯れた女って言ったな?絶対に許さない。だからね、苗床になってもらうの」

皮膚の下に何かが動いている。

「安心して?オマエはただのペットの餌。悪い人間はぜーんぶペットが貪り尽くす。楽でイイね」

「な、何を…飲ませた、のよ?」

「サソリが産まれる水」

皮膚を切り裂いて蠍たちが産声を上げる。私は身体に潜む蠍らを潰すように椅子から落ちた。床に這いつくばった時、昨晩見た豚がこちらを見ていた。豚だけではない。ずっと待っていたのだ。餌はまだかと私が転がり落ちるまで、息を潜めていたのだ…どうしてこんな時に息子の顔を思い出しているのだろう?もう私は助からないのに………




「よっ!お嬢さん」

「あら?誰かしら?」

「誰って…ご依頼いただいた件で、馳せ参じました」

「そうだったかしら?」

「覚えていませんか?こんなイケメン顔?」

「そうねぇ…眼が悪くて、よく見えないわ」

「仕方ないなぁ…特別ですからね?手を貸してください」

「…!あらまぁ、貴方だったのね?」

「長い時間、待たせてしまいましたか?」

「そんなことないわ。貴方にとって短い出来事なんでしょうけど、早急に終わらせたかったの」

「…大事な息子さんの子供の為にですか?」

「黒はね…あの人に似ているの。息子も似ていたんだけどね?私が歳を取る度に、段々と黒もあの人に似てきて…だからあの人に隠れて我儘したくなったの。私がまだ生きている内に、あの人と同じ顔をした甥の未来を救いたかった…」

「満足、ですか?」

「どうでしょう…あの人のことを裏切ったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。死ぬまで分からないわ」

「…」

「困らせてしまったかしら?」

「そんなことないです。では、2度と会わないようにお気をつけください…」

「意地悪なのね、イケメンさんは」

「…不器用なだけです」




あれ?これ撮れてるのかなぁ?ドロクちゃんに使い方教えて貰えばよかったなぁ〜。ま、いっか。

「皆んな、お疲れ〜」

『お疲れ様でした〜』

「死神様、お疲れ様でした」

「うむ、ベルちゃんもお疲れ」

『その呼び方、辞めましょうよ』

「ん…どっちがどっちだっけ?」

「わたくしがベルフェゴールです」

「ワタクシがベルゼブブです」

「ベルちゃんでいいじゃん」

『良くないですよ!全く違うのに一緒にされては困ります!』

「なら、今度から同じ名前の飲食店なんざ出さないでよね」

『うっ…』

はい次。

「呑んでる?マモちゃんにサタちゃん」

「うぃ〜す。飲んでますよ、死神さま〜」

「…うっす」

「サタくん、どしたん?なんかあったの?」

「よくぞ聞いてくれました死神さま!サタンのやつ、実は…」

「黙れマモン!!!…あ、すみません。空気読めなくて…」

「んー?死神ちゃん、別に気にしてないよ?ってかさ、サタちゃんの演技すごかったよ。チビったかもしれん」

「!?ぅ…ぁ…え………」

「死神さま〜、それは刺激が強いっすよ〜」

何言ってんだこいつ?次。

「ちょっと〜、死神ちゃんアタシの出番少なすぎぃ〜」

「レヴィくんは…やっぱ場所が限定されるから…」

「そーそー、ウチだって死体の役だったんだぜ?マジ最悪だったわー」

「アスモデウス、さっき言ってたことと違うじゃん!『ドロク様コスできるなんてサイコー!』って言ってたじゃん!」

「そうなんアスくん?」

「エー、ソンナコトイッタカナー。オボエテナイナー」

「ペロッ!これは嘘ついてる味ですぜ、死神ちゃん」

「覚悟の準備をするんだなアスモデウス!詐称罪で、レヴィくんの水槽監禁地獄を味わえ!」

「いやぁー!?水責めは好きだけど、レヴィアタンの水槽はやだー!」

「なんだとコラぁ?アタシの水槽に文句あんのか?」

「文句ありまくりよ!臭い通り越して、辛いのよあんたの水槽!どんな管理をしたら辛くなるのよ!?」

「うげー。レヴィくん、しばらくの間近づかないで」

「そんな!?」

ドロクちゃん、まだ来ないなー。そういえば…

「ねぇねぇ、ルシちゃん来てないけど、誰か知らない?」

「あー、確か娘と娘の部下と旅行してくるって言ってたな…何処行ってんだ?」

「知りませんね…ヨーロッパ方面だと思われます。それがどうかしましたか死神様?」

「えっとねー、せっかく奴隷達を分け合うことになったのに、顔を見せないのはどーなのかなーって」

『…』

「別に良くない?死神ちゃん」

「ドロクちゃん!遅いよ、遅刻!何してたの?」

「何って…依頼主に報告しに行ってただけだけど…皆んなお疲れ様」

『お疲れ様です。ドロク様』

「なにそれー?如何にも仕事出来る人アピール?流行らないよそんなの【自主規制】の方が流行るよ」

「ははは。流行るのかなぁ、それ」

ドロクちゃん、ボク怖いよ。ドロクちゃんが時々見せる顔が、どう表現したらいいか分からないくらい、ただただ怖いよ。ドロクちゃんは変わらないよね?勝手に居なくならないよね?怖いよ…ドロクちゃんって、あの人のことどうしたいの?何を望んでいるの?そんなことしたって………

わかんない…わかんないよ…本当にドロクちゃんはドロクちゃんなの?怖いよ…ボクをひとりにしないで…離れないで…ずっとそばにいてよ…

最後までご愛読いただきありがとうございます。

TCGやってますか?endigoは環境デッキより主人公たちが愛用していたカードテーマで遊ばせていただいてます。布陣を整えたら強いんですよ。決して弱いわけじゃないんですよ?他のカードがインチキすぎるんです。カードゲームのインフレって、ある意味新作RPGの期待感と似てる気がします。修正?そりゃもう大歓迎ですよ!

ではまた次回

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