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6.幽閉中は行動が制限されるぞ(1)

 うん、期待できなさそう!


 誘拐三日目、朝。隣領の関所にて。

 私は昨日から延々と考えていた思考に、『駄目だこりゃ』と結論付けた。


 だってあの村人たちだしね。

 村が追い詰められて、自分たちの身が危うくなるどころか、大量の死者が出てようやく蜂起したくらい及び腰だからね。


 たぶんヘレナは頑張って説得してくれているだろうけど、村人たち相手には失敗に終わるだろう。

 彼らには、危険を冒してまでわざわざ私を助けに隣領へ来る度胸はない。よしんば度胸があったとしても、それをするだけの理由がない。


 なにせ、もう危険な冬は越えた。これからしばらくの間、村は私がいなくとも生存していけることだろう。直接的な脅威であった前領主の排除とは、今回は根本的に話が違うのである。


 ――まあ、このままじゃ次の冬を越せる気はしないけど。


 それでも、おそらく今すぐどうこうなるわけではないだろう。

 一方、私を助けるとなると話は別。

 隣領領主ジョナスはそれなりに話が通じる相手ではあるけれど、今は前領主の言いなりだ。村人たちが正攻法で訴えても聞きはしないだろう。それどころか、逆賊として始末されるまであり得る話である。


 となれば、村人にとって私の救出は、わざわざ命の危険を冒すのと同じこと。

 今すぐ死ぬか、冬になってから死ぬかと言われたら、そりゃあ少しでも長生きできる方を選ぶもの。積極的に目の前の死を選べるほど勇敢なら、そもそも前領主をあれほど増長させていないだろうからね。


 で、それじゃあ護衛たちはどうかというと、こっちはこっちで期待薄。

 彼らの方は、むしろ自分たちの立場をよく理解しているからこそ、村人たちの味方をすることはできないだろう。


 だって彼らは、もともとは国を守る騎士。本来なら、村人たちを鎮圧する側の人間だ。

 今回の村人たちとの共同戦線は、あくまでも非常事態であればこそ。村人たちに同情すべき点があろうとも、武力を持って秩序を乱した時点で罪を咎めらる立場になってしまうのだ。


 まっとうな騎士であれば、村人たちを投降させたうえで助命嘆願という形を取るだろう。

 前領主が信頼ならなければ、次は国に訴え出ることになる。どっちにしろ、私を助けて村に戻るよりも、隣領領主と交渉してそのままノートリオ領を出る方が得策である。


 ――そもそも、ノートリオ開拓が破綻している時点で、私が村に戻る案が出るわけがないのよね。


 このままだと、いずれにしても開拓は続けられない。開拓村は解散。村人たちは罰を受けるにしても恩赦を受けるにしても、ノートリオに戻ることはないだろう。


 さて、こうなるともう残る結末は一つしかない。

 すなわち――――。


 ざんねん! わたしのぼうけんはこれでおわってしまった!


 ……である。



「…………………………」



 自然と導かれる結論に、私は「うむ」と頷いた。

 うむ。



 嫌だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 シンプルに嫌。すっごい嫌。やだやだやだやだ!

 ちゃんと宣言通り全員生かして冬を越したのに、エンディングがこんな中途半端なんてあり!? クリアできないゲームなんてサイテー! 真相はダウンロードコンテンツなんてサイテー!! 完全版商法許すまじ!!!!


 でもな~~~~自力で脱出はさすがに無理なんだよな~~~~!!

 よしんば強引に脱出しても、ノートリオ領に入る前に捕まってしまう。万が一捕まらずに領内に逃げ込めても、そこから村まで一人でたどり着くのはほぼ不可能。さらに、奇跡的に私が脱出して村まで戻れたとしても、前領主が隣領を掌握している限りはどうにもならない。

 あるいは前領主が完全にノートリオ領を諦めて、国に報告をされてもおしまいだ。開拓失敗を受け国が介入、どっちにしろ開拓終了は確実である。


 ――たぶん、国は積極的には介入しないとは思うのよね。前領主が余計なことを言わなければ……。


 領内で起きた揉め事は、基本的には領内で解決するものだ。

 国への報告は、自分で事態を治められなくなった場合の非常手段。もちろん、国全体に影響するとなったら領主の意向など無視して介入するものだけど、こんな辺境の未開の地なんて、ぶっちゃけ国にとっては捨て置いても問題ない。

 つまり、訴えられたら対処せざるを得ないけど、訴えられなければ見て見ぬふり。どこぞの公式と二次創作の関係みたいなものである。


 となれば、望ましいのは膠着状態だ。

 前領主が余計なことをせず、これまで通り橋の向こうから、こちらのやることを静観してさえくれればいいのである。


 もっとも、あの男が大人しく黙っているわけもなく――――。




 トントン、と神経質なノックの音がする。

 同時に聞こえた猫なで声に、私は知らず眉をひそめた。


「――――殿下、よろしいでしょうか。どうかこのマーカスめと、しばしお話をしても?」


 よろしくない。


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― 新着の感想 ―
さて、OHANASHIの時間です。 多分、王女相手に暴力に訴える事はないとは思うけど、あのアダルトチルドレンなマーカスだもんなぁ… 今後の方針としてはジョナスといかに会話して支援を引き出せるかがキー…
服脱いだ状態で悲鳴の一つでも上げたら社会的に殺せないかな(゜ω゜)
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