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第70話 ギース達の戦い方

「くそっ! おいっ! 何してんだ、クソA級パーティども! ちゃんと援護しろ!」


「くっ! ギース! こいつらまた妙に強いぞ! 全然隙が生まれない!」


 ギース達はA級パーティを引き連れて、先頭に立って敵陣に突っ込んでいた。


 魔物の巣の分隊はオーガやゴブリン、ウルフ系の魔物の集団という強さよりも量と勢いのある魔物たちだった。


 そして、その軍勢に勇敢に突っ込んでいったギースとエルドはその勢いに押されていた。少し魔物が連携を取っただけで二人はすぐに攻めあぐねてしまい、自分達の失態を他のパーティに押しつける言動。


「……嘘だろ、なんだこいつら」


「ここまでとは、思いませんでしたね」


 そして、そんなギース達の態度を見て、他のパーティのメンバー達は呆れて言葉を失ってしまっていた。

 

 決して強いわけではないのに、無理やり相手に突っ込んでドタバタとしている。連携という言葉の意味を知らないような戦闘スタイル。


 何がしたいのか分からない。本気でふざけているのかと思ってしまうほど、その戦い方は稚拙過ぎた。


「おい、ルード。こりゃダメだろ」


「……仕方がない。フェーズ2に移行しよう」


 ギリンスが呆れたようにルードにそっと耳打ちをすると、ルードもギース達の戦い方を見て諦めたのか、静かに息を吐いてギリンスとレオンにそんな言葉を呟いた。


 そして、その言葉を聞いたと同時に、それぞれのパーティの剣士などの前衛職がギース達よりも前に出た。


「おい! お前ら! なんで俺達よりも先に出てきてんだ!」


「やめておくんだ! こいつらまた魔法で強化されているーー」


 そんなギース達の言葉を無視して突っ込んでいった他のパーティの前衛職たちは、そのまま当たり前のように魔物を切りつけていった。


 隙ができるまでじっと待つような戦い方ではなく、相手の隙を生まれさせるような剣使いによって、魔物を次々に倒していく。


 前衛が入れ替わっただけで戦局は一気に変わり、魔物たちが次々になぎ倒されていった。


そして、何もできなくなったギース達に、ギリンスは微かに睨むように睨みつけるような視線を向けた。


「もう下がっていてくれ、正直お前ら邪魔でしかない!」


「お、お前っ! 誰に向かって口きいてんだ!!」


「いや、これは本当に言うとおりにしてください。死人を出したくないので」


 さらっとギースを追い抜きながら前衛にでたレオンは、そんなことをぼそっと呟きながら援護射撃となる魔法を放って、魔物の大軍を一気に片付けていた。


 そんな実力差を見せつけられても、自分の実力を理解できていないギースは噛みつくように声を荒らげていた。


「おまらっ、いい加減にーー」


「ギース君。どうやら、僕達の方が前衛は向いているみたいだから、少しだけ俺達に任せてくれないか?」


 馬鹿にする二人とは違い、純粋にギース達を心配するようなルードの言葉。しかし、その言葉はギースを逆撫でるだけだった。


「ふざけんな! 俺らはS級パーティだぞ!」


 ギースは歯ぎしりをして三人の言葉を否定するように大声を出した。しかし、そんなギースの声はただ宙を舞うだけで、誰の言葉にも届かなくなっていた。


 そんな駄々をこねる子供のようなギースを説得させようと、ルードが戦局から目を離しなしたときだった。


「マズいっ、数体外に逃げたぞ!」


 ギリンスの声が届いた時には、数体の魔物がギース達の横から洞窟の外に向かって飛び出していった。


 少し油断した隙に隣を走り去っていくハイウルフが数体、洞窟の出口に向かって走り去っていくのが分かった。


 今回の依頼は魔物の巣の分隊の殲滅。ここで数匹を取り逃がすわけにはいかなかった。


「ギース君、君たちはあの逃げた魔物をお願いしたーー」


「ふざけるな! 俺達がそんな残飯処理するわけがないだろ!」


「……分かった。俺が行くからもういい。ギリンス、レオン、俺たちのパーティを頼んだぞ!」


 これ以上取り合うのは時間的に無駄だと諦めたギリンスは、二人にそんな言葉を叫んでその場を後にした。


「ふざけるなよ……指揮をとるのは俺だぞっ」


 ギースが歯ぎしりをしながらそんなことを言っても、その言葉は誰に届くこともなかった。



「くそっ、マズいぞ。よりによって足の速い魔物か」


 ルードは一人で逃げていく魔物を追いかけていた。


 正直、ルードなら対面すればすぐに倒すことができるレベルの魔物ではある。しかし、足の速い魔物がトップスピードで逃げる脚に追いつくことができず、洞窟の出口まで来てしまっていた。


「よりによって馬車が……くそっ」


 ハイウルフはそのまま洞窟の外に出てしまい、トップスピードのまま下り道を下っていき、運悪く走っている馬車に突っ込む勢いで走っていた。


 この距離は間に合わない。そう思った時、走る馬車の中から人が飛び降りてきた。


 何か影が下りてきたと思った次の瞬間には、ハイウルフが馬車に突っ込むよりも先に勢いをそのままに倒れていった。


「え?」


 シンプル過ぎるシャツとパンツというスタイルに、短剣というラフすぎる服装。その後ろには、黒色の短いスカートを履いている華奢な女の子がいた。


 あまり冒険者らしくない格好なのに、二人とも短剣を腰から下げている。


「……君達、冒険者なのか?」


 一瞬でハイウルフを数体なぎ倒した二人を前に、ルードはそんな言葉を漏らしていた。


本来A級パーティ4組で行うクエストだったのだが、ギース達の強さがそれに見合わないことを知った。


 これからはギース達を守りながらの戦いをするとなると、少しでも戦力が欲しいと思った所だった。


「頼みがある。少しだけ力を貸して欲しい」


 当然、一瞬でハイウルフを倒したその二人だけのパーティ『道化師の集い』が、D級パーティだなんて思うはずがなかったのだった。



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