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第51話 屋敷を持つということ

「バングさん、おはようございます」


「おっ、アイクじゃないかよ。なんだ、もう帰ってきたのか?」


 俺たちはガルドの依頼を達成した後、鉱山で倒した魔物の素材を売りに冒険者ギルド裏の倉庫に来ていた。


 倉庫を少し覗いてみると、バングの姿が見えたので俺たちは挨拶がてら倉庫の中に入っていった。


「はい、思ったよりも早く依頼が終わったので。それで、そのときの魔物の素材を売りにきたんですけど」


「そいつはよかった。もしかして、またすごい数倒してきたんじゃないだろうな?」


 バングは俺をからかうようにそんなこと言いながら笑みを浮かべていた。最近、俺だけで結構な量を解体してもらっているし、そんなこと言われてしまうのも仕方がないことだろう。


 俺はバングの冗談に釣られるように笑みを浮かべながら、言葉を続けた。


「ははっ、実は結構な量を持ってきました。まず、ダイヤモンドリザードが71体と、ダイヤモンドディアが32体です」


「え、合計100体以上いるじゃないか」


 おどけるような顔をしていたバングはすぐにその表情を引いて、その表情を引きつらせていた。


「……い、一週間、どこに行ってたんだ?」


「えっと、鉱石の街と知られる街のラエドに」


「ラエドか。……いや、ラエドってそんなに魔物いる場所だったか?」


「ちょっと依頼で鉱山に入ってまして、そこで魔物の群れを討伐したら、このくらいの数になりました」


「いや、一人で100体の魔物の解体依頼出しておいて、ちょっとって」


 バングは常識を疑うような目で俺をじっと見て、それから途方もない魔物の数に少しだけ遠い目をした。


 さすがに、一気に持ってき過ぎてしまったろうか。なんだか、少しだけ悪い気もする。


「ここに並べますか?」


「……できれば、半分ずつでお願いしたい。依頼はそれで全部ってことでいいか?」


「あ、あと、クリスタルダイナソーっていう魔物がいるんですけどーー」


「お、クリスタルダイナソーか。随分珍しいのに出会ったな。あいつは中に鉱石を溜め込むからな、鉱石売れば結構な値段になるんじゃないか?」


 バングは何か金の匂いを期待するような笑みを浮かべて、そんなことを口にした。


 やっぱり、普通のクリスタルダイナソーに対する考えはそんな感じだよな。俺が半身くらいの大きさの鉱石の集合体を【スティール】で奪ったとは思わないだろうな。


「おはようございます。あ、ちょうどいい所にアイクさんいますね」


 バングとそんな話をしていると、そこにちょうどミリアが現れた。何かの用事があって来たみたいだったが、言葉的に俺にも用事があったのだろう。ミリアはそのまま俺達の方に合流するように会話に加わった。


「あれ? 取り込み中でしたか?」


「アイクがクリスタルダイナソーを倒したんだってよ。だから、その鉱石を売れば良い値段になるんじゃないかって話だ」


「お、クリスタルダイナソーに出会たんですか。それは確かに気になりますね。いくらくらいになるんでしょう」


 そこまで言うと、二人は何か期待をするような視線をこちらに向けてきた。まるで、その値段を言うまでは帰さないとでも言いたげな視線。


 そんな視線に促されて、俺はついぽろっと言葉を漏らしてしまった。


「えっと、依頼主にもう鉱石は売っちゃったんですけど、数千万ダウくらいだろうって話になってーー」


「「数千万ダウ?!」」


「あっ、でも、その代わりに屋敷と短剣をもらったので、そんなには手元に残らないですよ?」


「「屋敷?!」」


 俺が言葉を繕うとすればするほど、二人は驚きの感情を露にしていた。


 そういえば、冒険者で屋敷を持っている人って聞いたことなかったな。


 ……変に目立ったりしなければいいけど。


「屋敷って、王都の近くか?」


「まぁ、近くというか王都にある感じですね」


「お、王都に屋敷ですか」


 俺が質問に答えれば答えるほど、二人は現実離れした物を見るような目で俺を見てきた。そして、しばらく黙り込むと、ミリアが何かに気づいたように小さく言葉を漏らした。


「あっ……もしかして、リリさんとお二人で?」


「もちろんです! 私、助手ですから!」


 ミリアから視線をちらりと向けられたリリは、胸を張りながらそんな言葉を口にした。誇っているのは屋敷に住んでいることではなく、俺の助手であることを自慢しているような口調だった。


「助手って言うか、それはもう……なぁ?」


「そう、ですよね?」


 ミリアとバングが目を見合わせて何かをやり取りしいているみたいだった。


何か言いたいことでもあったのだろうか?


俺とリリは二人の考えていることがまるで分らないでいた。



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