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第41話 道化師による鉱石の採掘方法

「よいしょっと」


「えいっ」


「それっ」


「てやっ」


「そりゃっ……だめだ、まるでらちが明かないぞ」


 俺たちはガルドにつるはしを貸してもらって、山の頂上付近にある鉱山に足を踏み入れていた。ダンジョンのような洞窟のような場所で、俺とリリはつるはしでとんかんと鉱石を掘り進めていた。


【鑑定】のスキルを用いれば、そこに目的の鉱石があるかどうかはすぐに分かる。だから、【鑑定】を使って目的の鉱石を掘り当てることはできていた。


「このままじゃ、一週間で終わらすことなんて無理だろ」


 それでも、一回の採掘で出てくる鉱石は多くはない。つまり、あの倉庫の中を山盛りにするためにはその回数を増やさなければならない。


 完全な肉体労働。ここまで大変なら、ミノラルの近くで魔物でも討伐してそれを売って金に換えた方が早い。


 そんなことを本気で考えていた。


「……リリ。場所を移動しよう。ガルドさんが言っていた魔物が出るって方に行こう」


「え? あっちにですか?」


 この採掘場の入り口は入ってすぐに二手に分かれていた。


 一般的な鍛冶師が鉱石を掘り当てるための整備をされた道と、整備をされていないどんな魔物が出てくるのかも分からない『不明な道』があった。


 『不明な道』と言ってもあくまで鉱山なので、ダンジョンとは異なる。そのため、冒険者がその道を開拓することもなかったらしく、どんな魔物が出るかも分かりきっていないらしい。


 ただ人の手が入っていないということもあり、やはり鉱石が多く手に入るらしく、鉱石を追い求めた鍛冶師が何度も入っていくらしい。


 当然、入った人数に対して帰ってくる人数は大幅に少ないとのこと。


 ガルドからは俺たちは安全な整備されている道の方で作業しろと言っていたが、よく考えるとおかしい所があった。


 ガルドは俺に【鑑定】があることとステータスの高さを評価していた。安全な整備された方で作業をするならステータスの高さは必要ない。


つまり、初めから俺たちには『不明な道』で作業をして欲しかったのだろう。


 それでも、危険な方に行けとは言えずにあんな言い方をしたのだ。


 普通に考えて、こちらの安全な道の方で作業をしていたのでは、あの倉庫を山盛りにするのは不可能だ。


「気づくのが遅れたな……くそっ」


「え? どういうことですか?」


「ガルドは初めから俺たちには『不明な道』の方で作業をして欲しかったんだ。そうじゃなきゃ、俺のステータスなんて気にしないだろ」


「あっ……そういうことだったんですね」


 俺の言葉を聞いて、リリも合点がいったように小さく頷いた。やはり、リリもどこでおかしいと思っていたのだろう。


 俺たちはガルドの言葉の本当の意味に気づいて道を引き返した。



 そして、不明な道に入ってすぐに俺たちは魔物と遭遇することになった。


「ギヤァァァ!!」


 俺たちに襲い掛かってきたのは二足歩行のトカゲのような魔物だった。鱗がやけに硬そうで、鋭い爪で俺に切りかかってきた。


俺が【剣技】のスキルを使用してその魔物を切りつけたとき、短剣に少し引っかかるような物を感じた。ガリッとしたような硬さを感じながらも、俺はそのまま魔物に切りつけた短剣を引き抜いた。


「ギャァァ」


 そして、その魔物はその場に倒れ込んだが、まだ息を引き取ってはいなかった。きっと、刃の入り方が甘かったのだろう。


「【ファイアボール】」


俺はその魔物に手のひらを向けて、片腕ほどの炎の球をその魔物に投げつけた。着弾した瞬間にその魔物を焼き払い、トカゲのような魔物は動かなくなった。


「見たことのない魔物だな」


俺は初めて見るような魔物だったので、何気なしに【鑑定】を使用してみることにした。すると、次のような鑑定の結果が脳内に流れてきた。


【鑑定結果 ダイヤモンドリザード……トカゲ型の魔物。鉱石を食べることで、鱗を硬化な物に変える魔物。鱗は武器などの素材として使われる。また、鉱石を体内に溜め込む性質がある】


「ん? 鉱石を溜め込む?」


「アイクさん、どうかしたんですか?」


「いや、この魔物が鉱石を溜め込んでるらしい。……何とかして、取り出せないかな?」


「【道化師】のスキルを使えば、【スティール】とか使えるんじゃないですか?」


「え? うーん、まぁ、確かに道化師なら手品とかしそうだしな」


 俺はそんなリリの何気ない一言をきっかけに、【道化師】のスキルを発動させることにした。イメージをするのはこの魔物が持っている鉱石を奪って手のひらに移動させるイメージ。アイテムを奪う【スティール】をイメージして【道化師】のスキルを使った。


 すると、すぐに手のひらにずしんとした重みを感じた。


 手のひらの方に視線を向けてみると、そこには手のひらで何とか掴むことができるくらいの大きさの鉱石の結晶の塊があった。


【鑑定】をかけるまでもなく、その紫色に光る輝きはアメシスト鉱石の塊だった。


「あ、アイクさん!」


「……リリ、作戦変更だ」


 つるはしで採掘をするなんて回りくどいことなんてする必要なかったのだ。そうだ、俺は鍛冶師の見習いなんかじゃない。


 俺は道化師なのだから。


「ここにいる魔物を狩って、狩りつくして、【スティール】で鉱石を引き抜くぞ」


 つるはしで鉱石を掘り当てる作業を嘲笑うように、俺たちは魔物から鉱石を引き抜くという方法で鉱石の採取を始めたのだった。


 もしかしたら、ガルドはここまで見越していたのかもしれない。


 そんなことを微かに考えながら、俺たちは『不明な道』を突き進んでいった。


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