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第160話 モンドル王国

 ミノラルから南に下って、一つの国を跨いだ先にあるモンドル王国。


 そこは学術の街と言われており、多くの優秀な学生が集まると言われている。その裏では、非道徳的な事件が行われているという噂もあったりするわけなのだが。


 その首都、モンドルはミノラルと引けを取らないくらいに栄えていた。


 栄えてはいる。そして、学生が多いということもあってか、街自体に活気があるものだと思っていたのだが……。


「どうですか? 何かおかしなところはありましたか?」


 モンドル王国に到着した俺たちは、モルンとノアンに街の案内をしてもらっていた。


 とりあえず、ワイバーンを倒したときに俺たちの強さを見せつけることには成功したらしく、街に入るなり憲兵に切りかかられるような事態はなかった。


 まぁ、元々そんなことを計画していなかったかのかもしれないな。結構丁寧に街の中を案内してもらったし。


 実験施設などを見せてもらうことはできなかったが、それでも学校で学ぶ生徒たちを遠くから見ることなどはできた。


「おかしなところはありませんでした。まぁ、一点を除いては」


「エリアAのことですか?」


「まぁ、そうですね」


 夕食を飯屋で食べながら、モルンは街のすべてを案内したような口ぶりで感想を聞いてきたが、まだ案内されていない場所があった。


そして、そこが一番怪しい場所であることは明確だった。


俺のジトっとした視線を受けて、モルンは平然とした様子で言葉を続けた。


「エリアA。王に命を受けた者か、許可を得た研究者や、学生以外は入ることを許されない国家機密エリアです。一般の人は立ち入ることを許されないんですよ」


「いや、説明してもらったので、分かってはいますけど」


 この街はエリアAとエリアBに分かれている。分かれていると言っても、ただ区画を分けているだけではない。


 エリアAとエリアBの間には、大きな門が存在していて、エリアAを囲う形でぐるっと大きな壁が反り立っているのだ。


 同じ国、同じ都市とは思えないほど、そのエリア間は分けられている。


 俺達がいるのはエリアB。当然。エリアBなんてどこを見てもおかしいとこなんてあるわけがない。


 それでも、違和感を覚えることがないわけではない。


この街、栄えてはいるのだが、あまり活気がないのだ。


 街にいる人たちはどこか目の奥に闇があるような、何かに縛られているようで、街の栄え具合いと活気が合っていない。


 そんな少しの不気味さを感じずにはいられなかった。


 そんな考えが顔に出ていたのか、モルンは悪戯をする子供のような笑みを浮かべると、小さな声で言葉を続けた。


「安心してください。ちゃんとエリアAの方も案内させてもらうので」


「あれ? 私達が入って問題ないんですか?」


 リリが小首を傾げながら訪ねると、ノアンが小さな胸を反らしながら、自慢げな笑みを浮かべた。


「安心して下さい! そのために、お呼びしたんですからっ」


 国家機密を隠すための実験を行っているエリアに、俺たちを入れてくれるのか?


 ノアンの自慢げな様子から嘘を言っているようには思えないが、どこか引っかかる部分がある。


 ちらりとモルンの方に視線を向けると、モルンが引き継ぐように説明を続けた。


「施設見学ということで、特別に許可を得たんですよ。でも、夜しかダメだと言われてしまって。あと数時間後になるんですけど、ぜひ見ていってください」


「……そういうことなら、ぜひ」


 今が夕食時だから、数時間後となると結構夜遅くになるよな?


全ての実験が終了したら、その施設くらいなら見せてあげてもいいということだろうか?


 いや、そんな施設見せられても、俺たち専門知識ないから分からんぞ。


 そんなことを考えながらそんな提案を断るわけにもいかず、俺たちは夕食を食べ終えて少し経った後、エリアAへと向かうことになったのだった。



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