5/13 根性系イタチに敗北
目の前で段ボール箱のバリケードが突破された。
しっかり固定してあったのに、根性の力の前に敗北した。鼻をぐいぐい押し込んで、鼻が通ったら頭を入れ、頭が通ったら身体を入れ……
一番太さのあるお尻が通る頃には、固定してあったはずの段ボールが動いていた。それはまるでイタズラ小僧が、山を動かしたようだった。
部屋で一番高い家具の上に登らないように作ってあったそのバリケードを突き破って、イタチはエベレストの山頂から下界を眺めるように、得意顔でこちらを見下ろした。
ハァ……と溜め息をつくと、私は考え方を変えた。
このイタチはどれだけ無理だろうと思うことでも『根性』でやり遂げて来た。
頭が悪いぶん、その根性はあまりに秀でている。
コイツに勝とうと思った私が間違いだったのだ。
障害があればあるほど燃えるタイプなのなら、むしろ障害を取り去って、やる気をなくさせてやればいい!
バリアフリーにしてあげた。部屋で一番高い家具の上に簡単に登れるように、家具の高さを組み替えて、階段状にしてあげた。
するする、するると登って行ったイタチは、山頂からこちらを見下ろし、なんだか寂しそうな顔をすると、またするすると階段を歩いて降りて来た。
それ以来、まったく登ろうとしなくなった。
あっという間に飽きてくれたようだ。
ナッくんを御するには根性とか反骨精神とかみたいなものを刺激しないことだと改めて知った。